表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第5章 世界樹
42/56

第41話 叫ぶもの

 聖樹王の頂上付近に着くまで1時間弱。

 上昇する大地の上で、天使達との戦いが始まった。


 翼を持ち自由に空を飛ぶ天使達は、高さの利を最大限に使った戦法を取ってきた。

 決して近づきすぎない距離から、光の弾丸を放ってくる。


 マリアが結界を展開し、天使達の光の弾丸を弾く。

 ラミアも大量の水の防御盾を作る。


 空飛ぶバイクを持ってきていないため、ほとんど人々が空を飛ぶ天使達に攻撃出来ない。

 その状況を変えたのはニニとリンランディア。


 ニニは氷竜を、リンランディアは氷鳥を作りだし、それに乗って騎士団、魔術師団は上空の天使達に攻撃を始める。


 しかし、神々しい天使達を攻撃することに人々は戸惑った。

 その迷いを打ち砕いたのは、シュバルツとミリアだ。



「ぬおおおおお!!!」

「はあああああ!!!」



 一閃のもと、天使達を斬り捨てる2人。



「相手が誰であろうと、我らは進む! 騎士団前へ!!!」

「おお!!」



 シュバルツの号令のもと、一気に動き出す騎士団達。

 騎士団に合わせるように魔術師団も動き出す。

 この日のために、大いなる意思の導きより鍛えられた人の力が発揮される。



 天使達は倒しても倒しても、空から次々とやってくる。

 終わりの見えない戦いが30分以上続いた。


 さすがに疲れの色が見え始める。


 頼りのハールとアマテラスは人々の戦いをフォローしているだけ。

 その力を振るうことはない。

 何かに備えて力を温存しているかのように。



「ちょっと押されてるんじゃないか?」


「そうね。上空から狙われ続けるこの状況は、天界側が常に有利。持久戦では敵わないでしょうね」


「数が多すぎるな。リンランディア1人では対応しれきないか」



 氷の羽で自由に空を飛ぶリンランディアは、まさに獅子奮迅の活躍を見せている。

 だが、相手も1人1人が雑魚ではない。

 中にはリンランディアが手こずる相手も混じっているのだ。


 地の利、数の利、共に相手にある中では、いずれ消耗してこちらが負けてしまう。



「地の利は仕方ないとして、数の利は……貴方がどうかしたら? フロプト(叫ぶ者)」


「都合の良い名前で呼ぶのはやめてくれ。まったく」



 ハールが詠唱を始める。



「汝ら、我がもとで永遠の命を得て叫ぶ者達よ。フロプトと共に歌え!!!」



 ハールの詠唱と共に、50近い“何か”が現れる。

 それは人型だったり、植物のような形であったり、動物のような形であったり。

 それらは空に向かって叫び始める。


 それらは、過去にハールが倒した者達の中でも、ハールが己の力として契約した者達である。

 ハールの魔力によりその姿を構成されると、与えられた魔力が尽きるまで叫び歌い続ける。

 そして“敵”としてハールが認識した者達に向かって、生前に己が持っていた能力を使い攻撃し続ける。



「カラス共よ。連れていけ!」



 現れた叫ぶ者達をカラスが乗せて飛び立つ。

 ハールが己の力として認めたほどの者達だ。

 その能力の高さは折り紙つきだ。



「な、なんだ?!」



 騎士団達は飛んでくるカラスと、その背に乗る異様な者達に最初驚くが、天使達を攻撃するそれが、自分達の味方であるとすぐに分かると、一気に攻勢に出る。



「まぁまぁね」


「へいへい。働くのは俺だけかよ」


「私も数を減らしてくるわ。スレイプニールを貸して頂戴」


(自分で跳躍すればいいだろお前は)


「なにかご不満でも?」


「いえいえ、滅相もございません。アマテラス様に乗って頂けて我が愛馬も幸せでございます」


 8本脚の軍馬にアマテラスが乗ると、スレイプニールは空を飛び駆け抜ける。


 アマテラスの参戦により、状況は一気に優勢となる。

 叫ぶ者達も、ハールから与えられた魔力はまだ尽きず、叫び歌い続ける。

 アマテラスの一振りで、天使達は次々に斬り捨てられていく。


 アーシュ、ベニ、ラインハルトも足場を上手く使い、天使達を倒していった。


 ラミア、ニニ、マリアは水盾、氷盾、結界を使い、多くの仲間達を守っていった。



 戦闘開始から1時間弱……ついに聖樹王の頂上付近へと到着する。

 天使達は戦力投下をやめ、防衛線を下げたのか姿を見せなくなった。



「被害状況を確認しろ」



 ラインハルトの指示で、新たな部隊編成が進む。

 傷ついたとしても、戻る場所などない。

 いつ天使達の襲撃があるのか分からないのだ。

 地上世界に安全に戻れる保証がない以上、前に進むしかない。

 それでも、傷ついた者は後方部隊としフォローに回す。



「さてと、いよいよ本番だな」



 ハール達の目の前には大きな穴が開いている。

 この穴を通った先が天界。


 大罪の日以降、決して人が足を踏み入ることが許されなかった天界である。



「事前の打合せ通り、アルフ王と神のいる神殿に一直線に向かいます。悪魔達との無用な戦闘は避けます。襲いくる天界の兵達に対しても深追いする必要はありません」



 アマテラスの言葉と共に、穴に向かって歩み始める人々。



「リンランディア。サタンとフェンリルが出てきたら、私とオーディンが対応します。貴方は神の神殿へみんなを案内して下さい。最悪、アーシュ達とラインハルト王子達は何があっても神殿に……」


「かしこまりました」



 穴から天界に向かって進んでいく。

 天界とはいったいどのような場所なのか。

 期待と不安を抱く人々の耳に、またあの声が聞こえる。




 ウオオオオォォォォォン!!!!!!!!!




(もうちょっと頑張れよバハムート……もうすぐ“終わり”がくるさ。どんな形であれ)



 世界を支えるその声に、ハールは何を思うのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ