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伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第5章 世界樹
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第40話 天界へ!

 その日の朝、異変に人々は恐怖した。


 聖樹王の幹に巨大な亀裂が入り、大地そのものが崩れ落ちるような地響きが鳴る。

 そして、今まで聞いたことのない巨大な何かの鳴き声が聞こえた。




 ウオオオオォォォォォン!!!!!!!!!!!!




(バハムート……)


 アマテラスだけがその鳴き声の正体を知っていた。

 不安がる人々をなだめ、鼓舞する。



「みなさん! 今まさに審判の時が訪れようとしています! 私達は滅びを待つことはしません! たとえ神が滅びを選ぼうとも、私達は生きる意思を神に示しましょう! さぁ、いざ天界へ!!」


「おおおおお!!!!!」



 一斉に動き出す人々。

 女王ティアは、みんなが天界に向かうのを最後まで見届ける。



「ニニ、これを持っていきなさい。天界に聖樹様がおられるなら、きっと何かあるはずです」



 女王ティアはニニに聖樹の木の棒を託す。



「はい。神に私達の意思を示して参ります」


「よろしくね。ラインハルトのことも」


「くす。もう私がお守りするような方ではございません。主人は世界最強の剣士なのですから♪」


「そうだったわね♪」



 ニニは女王と抱き合い、天界へ向かう。



「ミリア?!」



 シュバルツが驚きの声をあげる。

 そこには、引退し子供達と一緒に夫の帰りを待つはずだったミリアが龍王剣「真・白雪姫」を手に持ち、騎士の姿でいたからだ。



「どうしてここに?!」


「あなた……私も行くわ。世界を救う戦いなのでしょ? 私も世界を救いたい。子供達の笑顔を守りたい。そしてあなたと共に天命が尽きるまで愛し合いたいから」


「だが……」


「大丈夫よシュバルツ。ミリアの身体を見れば鍛えていたことはすぐに分かるわ」



 マリアが笑顔でミリアを迎える。



「わかった。でも無理はするなよ? 俺のフォローに回ってくれ」


「はい!」




「女王陛下。行って参ります」


「うむ。世界をよろしく頼む」


「はい……世界を、そして……お母様を救ってみせます」


「ありがとう。貴方は本当に自慢の息子だわ……愛してるわラインハルト」



 母と子として抱き合い、手を握りしめ、そしてラインハルトは人々の先頭に立つ。

 龍王剣「エクスカリバー」を天にかざし、大声で時の声をあげる。



「行くぞ!!! 向かうは天界!!! 示すのは我らの意思である!!!」


「おおおおお!!!!!」



 先行して地上世界から天界への門に到着していたのはアーシュ達だ。

 門に到着してみれば、そこにはハールとリンランディアの姿があった。



「お父様! もう着いていらしたんですね」


「ああ、あの馬鹿共を相手にして疲れたわ。」


「何を言うか。結局最後は卿も雷を落として、一緒に騒いでいたではないか」


「お、おい! それは秘密だ!……ア、アーシュ……ごほん、いいか、大人はな、時に聞いたことを聞かなかったことにすることも大事だぞ。今の話はお母さんには内緒な」


「お父様がしっかりと戦って下さったら、忘れてあげることも考えますね」


「お、おい!」


「アーシュはアマテラス様に本当に似てきたな」


「くそっ! 父親はなんて損な役回りなんだ!」


「それはお父様だけでしょ。リンランディア様は奥様とも、娘のニニさんとも、とても良い仲ですよ~」


「うむ」



 リンランディアは満足な笑みをハールに向ける。



「けっ! どうせ俺はダメな父親ですよ~だ」


「はいはい。お父様も素敵な父親だって、ちゃんと愛娘は分かっていますからね。だから拗ねないでくださいね」



 アーシュに背中を叩かれるハールを見て、みんな大いに笑った。


 そして、後方からラインハルト率いる人々が見えた時、この世界をかけた最後の戦いが始まる。


 サタンが置いていった天界への鍵。

 地上世界から天界へと繋がる門に鍵を押し込めると、その先には大きな円形の空間が広がっていた。



「な、なんだここは……」



 騎士達はこの異様な広い空間に戸惑う。

 天界に行くために率いてきた全ての人々が収まるほどの、広い空間だ。


 すると、急に大地が動き出し、それは上に向かって上昇し始めた。



「な、なんだ?! 罠か?!」



 ラインハルトも驚きを隠せない。



「みなさん大丈夫です。落ち着いてください。いま私達は天界に向かっています。この大地が上昇することによって、聖樹王の頂上付近につきます。そこから、前方に穴が現れますので、一気にアルフ王と神にいる神殿に向かいます。天界はすでに戦闘状態です。地下世界からやってきている悪魔達との戦いが始まっています。悪魔達との戦闘は無用です」



 アマテラスの説明で落ち着く人々。

 約1時間ほどこのまま上昇する。


 1時間後に戦いが始まる。

 気を引き締める人々であったが、戦闘はもっと早くに始まった。


 気付いたのはハール。



「はぁぁぁ!!!!」



 このとてつもなく広い円形の空間の上空に雷の幕を張る。

 その幕に光の弾丸が降ってくる。



「きたぞ! 向こうから、わざわざおでましだぞ!」



 瞬時に戦闘態勢へと移行する。

 雷の幕が光の弾丸を全て弾き消えた後、上空に見えたのは、光輝く翼を持った妖精の戦闘兵達だ。


 この世界に「天使」という言葉が存在したとしたら、その姿はまさに天使そのものだろう。

 天使達は、上昇する大地にいる者達に迷いなく、攻撃を始まる。



「おっしゃあああ! 始めるぞ!!!!」



 ハールの楽しそうな声と共に、世界をかけた最後の戦いが始まった。


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