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伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第4章 3つの世界
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第37話 拠点到着

 馬鹿なハールを1人置いて、地上世界への門へと向かったアーシュ達。

 ちょうどその門に到着した時に、彼も到着したところだった。


 リンランディア


 彼はアーシュ達を見つけると



「ハールはどうした?」


「お父様は馬鹿みたいに悪魔の王達をいっぱい集めたので、私達ではもう近づくことすら出来ません。だから地上世界への門に先に来ました」


「なるほど……ハールらしい。わかった。後は私とハールの2人でやろう。君達は門から地上世界に向かってくれ。門を出てそのまま真っすぐ進んだところに、地上界の人々が拠点を築いている。アマテラス様もそこにいらっしゃるので合流してくれ」


「了解です」



 リンランディアは氷の羽を広げて、ハールの元に飛び立った。


 アーシュ達は門から地上世界へと。

 ほとんどの者達にとって初めての地上世界である。


 鍵によって開かれた根の穴を出た先は、地下世界とは違い、眩しいほど明るかった。

 美しい緑が溢れ、聖樹王も黒ではなく茶色い綺麗な色をしていた。


 リンランディアに言われた通り、真っすぐ進むと、すぐに築かれている拠点に到着した。


「何者だ!」


 見回りをしている騎士達がアーシュ達を見つけた。


「私は母アマテラスの娘アーシュです。地下世界より天界を攻めるべくやってまいりました」


「おお、貴方様がアーシュ様でしたか。ご無礼をお許しください。こちらへ。ご案内いたします」


「ありがとう」



 騎士達に連れられて拠点の中に入っていくと、アマテラスが1人の男と試合をしていた。



「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」



 その男は人間とは思えない動きでアマテラスを捉えようとしている。



「良い動きですね」



 だが、アマテラスはまだまだ余裕たっぷりだ。


 その人間を見た瞬間、アーシュは彼が身に纏う不思議な力に気付いた。

 その力はお母様の力に近い気がした。


 聖属性を身に纏っている?


 ただの人間が……仮に先祖に妖精の血が混じっていたとしても、聖属性を使えるなんてあり得ない。

 いったいどうやって。



「だりゃぁぁぁぁぁ!!!!」



 さらに彼は炎魔法を使ってみせた。


 炎魔法を牽制に使い、その手に持つ見事な剣と身体に聖属性を身に纏い、アマテラスに斬りかかる。



 強い……この人間は強い!


 ルシラを持たない私では、勝てないかもしれない。


 ルシラを持てば私の勝ちは間違いないだろう。

 でも、マサムネで彼と戦えば……電光石火の動きが少しでも鈍れば私の負けか。



 地上世界の人間と一緒に天界を攻めると聞いた時、正直それほど人間が戦力になるとは思っていなかった。

 お母様は度々、人間の心の強さを私に聞かせてくれたけど、心の強さと、肉体的に持つ強さが必ず比例するわけではない。


 戦闘行為以外では、心の強さが大事だということは十分に分かる。

 そして、戦闘行為においても、心の強さは大事だ。

 でも、結局は肉体的な強さがなければ、戦闘行為で勝つことは難しい。


 目の前の人間は、アーシュの人間は肉体的に弱いという誤った認識を一瞬で改めさせた。



 余裕のアマテラスが、彼の動きの悪さを指摘するような攻撃を繰り出しながら、そして最後には首元に刃を置き、勝負は決まった。



「はぁはぁ……はぁはぁ……あ、ありがとうございます」


「こちらこそ。私の想像以上だわ。貴方のような勇者が育ってくれていることを本当に嬉しく思います」



 彼を見るアマテラスの目はどこまでも優しかった。


 試合の終わったアマテラスはアーシュ達のもとへやってくる。



「ずいぶん早かったわね」


「うん、馬鹿なお父様は放っておくことにしたの」


「あらあら。アーシュもだいぶ分かってきたようね。お母さん嬉しいわ」


「あはは♪ ところでお母様、いま試合をしていた彼……人間ですよね?」


「そうよ。この世界を治める女王の息子で王子のラインハルト。この地上世界で最強と言われているわ」


「ふ~~~ん」


「気になるのね。うふふ♪ アーシュと試合したらどうなるでしょうね……ルシラ無しなら、6:4で彼の方が有利かしら」


「……悔しいけど私もそう思うわ」


「冷静な分析ね。彼も今日はもう疲れているだろうから、明日にでも試合してもらうといいわよ」


「天界にはすぐには攻めないの? お父様が悪魔の王達をなだめるのに必死だったわよ」


「悪魔達の天界への進行は、もうすぐ始まるでしょうね。私達は混乱の中、まっすぐにアルフ王のいる神殿に向かうから、少し時間をずらすわ。あの強さの者達の戦いですからね……何時間という戦いで終わらないわ。放っておけば、たぶん100年ぐらい普通に戦っているでしょうから」


「そ、そうなんだ」



 アマテラスと話していたアーシュの目にある物が映る。


 それは女王ティアがラインハルトに近づいて行っていた時に手に持っていた物。



 それは木の棒だった。



 それを見た瞬間、アーシュには分かった。


 あの木の棒は、私が持つ木の棒と同じ……ルシラだと!



「お母様……あの女性が地上世界の女王?」


「ええ、そうよ」


「女王が持っている木の棒、お母様は何か知ってる?」


「……私も話を聞いた時は驚いたわ。あの木の棒には10年前、聖樹の意思と呼ばれる特別な存在が宿っていたらしいの」


「そ、それって!」


「ええ……たぶんルシラだと思うわ。10年前、ベルゼブブが地上世界にやってきた時に、あの木の棒の力でこの地上世界は救われたらしいの。でもその時に木の棒から、その聖樹の意思は失われたらしいわ。それから10年後、意思を宿した木の棒は地下世界で見つかったというわけね」


「ルシラは10年前に地上世界にいたんだね……」



 アーシュは何も応えてくれない黒の木の棒を強く握りしめる。


 そんなアーシュをまた遠目から見る1人の女性がいた。


 ラインハルトの妻ニニであった。


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