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伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第4章 3つの世界
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第36話 楽園

 大蛇との戦いの最中、突然何かに引っ張られるように意識を掴まれた俺は、目覚めると真っ白な木の棒に宿っていた。


 そして、どうやら俺の持ち主は“神”らしい。



ステータス

神樹の木の棒

状態:神の神樹の木の棒



 これ以上の情報は出てこない。

 レベルは消えて、取得可能スキル一覧も見えない。

 そもそもスキル一覧が見えなくなっている。



 俺の持ち主となった神と思われる青年だが、俺を引っ張ってきてから一度も俺に触れてこない。

 

 俺が目覚めた時に最初に目にした天使のような男が、この神と思われる青年の世話をしている。

 この天使のような男は、大ちゃんが言っていたアルフ王ではないのかと推測している。


 ここがどのような場所なのか分からないが、神が座っている玉座の間には、アルフ以外誰も入ってこない。


 玉座の後ろにある扉から外に出れば、そこはまさに楽園だ。


 緑と光が溢れて、小鳥達の優しい鳴き声が聞こえる。

 綺麗な噴水には虹がかかっている。

 そして犬や猫達が遊んでいる。


 犬や猫……現代日本にいるまさにそのものがいた。

 地下世界ではもちろん、地上世界でも見ることがなかった犬と猫、それに小鳥達もどこかで見たことがあるような小鳥達。


 神が楽園を散歩する時、俺はアルフ王に持たれて一緒についていく。


 さて、この楽園だが……毎日変わるのだ。


 扉を開けて入る度に、中はまったく違う楽園になっている。


 昨日は美味しそうな果実が実った木々達の中に、綺麗な小川が流れるような場所だった。

 今日は、綺麗な噴水に虹がかかり、小鳥、犬、猫が遊んでいる。


 明日もこの扉を開けば、また違った素晴らしい楽園になっているのだろう。


 どういう原理なのか分からないが、神の力なのか……それとも別の何かなのか。



 散歩が終わると、俺は神が座る玉座の前にある台座に置かれる。


 アルフ王は玉座の間から去っていくので、俺と神の2人きりになる。


 神はず~~~~~っと俺を見ている。


 いや、そんなに見ても何も出てこないぞ?

 一度いいから俺を持ってくれよ。

 そしたら、何か力を使えるかもしれない。


 ま~そんなことを思っても、神が俺に触れることない。

 はぁ~~……アーシュは無事かな。

 あの天女が一緒だから大丈夫だと思うけど。


 アーシュに逢いたいな。


 俺がそんなことを想うと、アーシュとまったく同じ姿をした存在が神の隣に現れる。



 ああ……それはもういいよ。



 最初はびっくりした。


 アーシュを“召喚”したのかと思ったからだ。


 でもこのアーシュは本物じゃない。

 偽物だ。


 いや、“偽物”の定義にもよるな。


 この神が創ったアーシュは、本物のアーシュと同じ力を持っている。

 姿形はもちろん、声や話し方までまったく同じだ。


 そして、記憶も持っていると思われる。

 恐らくだが、俺と一緒に過ごした地下世界のアーシュの記憶そのものを持っているのだ。



 最初に偽アーシュが出てきたとき、俺を抱きしめて嬉しそうに笑ってくれた。

 俺はアーシュが召喚されたと思って喜んでいたのだが、目の前のアーシュはただただ俺を抱きしめて嬉しがるだけ。


 目の前にいる神や、この場所のことを何も気にしなかった。


 俺は魔力を流してアーシュに危険であることを伝えようとした。


 魔力を流したアーシュの心には……何もなかった。


 何もなかったと言うより、“心”が存在していなかった。



 心がないことを除けば、目の前にいるのは間違いなくアーシュだ。

 俺が望めば、何でもしてくれるのかもしれない。



 1度ニニ、マリア、ベニちゃん、ラミアを想って神に創らせてみた。

 全員出てきた。


 そして、全員が俺を見て嬉しがり抱きしめてくれた。


 でも、全員心がなかった。



 この神はいったい何がしたいんだ?

 俺の心の中にいる人を創りだして遊んでいるのか?


 いや、神が創りだしているのか?

 美しい青年だが表情がなく、深淵を覗くような瞳だけが動くこの神が、何か力を使っているようには見えない。


 いや、この神という存在そのものが、何なのか。

 普通に考えたら、この世界を創った存在だよな。


 でもいまやってることは、楽園の散歩と、玉座に置かれた木の棒をずっと見ているだけ。


 神様の仕事ってそんなに楽なのかよ!っと突っ込みたくなる。



 俺が想うとアーシュが創られる。

 それは神が創っているのではなく、俺の心に何かが反応して創られているのか?


 う~~~ん、さすがにここに来てから、ちょっとの散歩と、神にずっと見つめられるという生活で、俺も何だか哲学者のような答えのない思考を巡らすことしかやることがなくなってきたな。


 神や世界の理を考えるのも、たまには面白いけど、今はそれより“心”を持ったアーシュ達が無事であることの方が大切だ。


 何か情報を得る手段がないかな……ないよな……ないな。


 動けないただの木の棒であることに変わりはないのだから。






 どれくらい時間が経っただろうか。

 またアルフ王がやってきた。


 そして散歩の時間だ。


 ふと思った。

 偽アーシュが俺の想いで創られてるとしたら、もしかしてこの扉を開けた先にある楽園も、俺の心が反映してるとか?


 だから犬や猫がいるんじゃないのか?



 俺は扉を開ける前に、自分で思える最大限の煩悩をイメージした!!!!





 そこはまさに楽園でした♡


 いや、だってこれぐらいしか楽しみないんだもん!



 神に見つめられる生活飽きたよ!

 何かイベントプリーズ!!!!!


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