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伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第4章 3つの世界
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第35話 アマテラス

 天界を攻める準備が着々と進む中、リンランディアはある人の来訪を待っていた。

 そして、その人の存在を感じる。



 アマテラス



 彼女は46年前、己の力のほとんどを使い、1人の魂を地上世界に生まれる王族に宿した。


 その魂は、異なる世界の中でも、最もか弱い存在でありながら最も繁栄する叡智を持つ者であった。


 彼女はその魂を呼んだことで、20年以上も力を失い長い眠りにつくことになる。

 その間、彼女の身を守り続けた1人の男に心許し、さらに愛娘を身籠ることになったのだが……。


 眠りから覚めた彼女は、魂を宿した女性が生きている地上世界へ行くことを禁じられた。

 そして、当時夫であったオーディンが神酒を飲んだ罪で地下世界に堕とされると一緒に、彼女も地下世界へと向かった。


 地上世界へ行くことは出来なくなったが、彼女は眠りについている間も、その後も、自らが宿した魂を持つ女性ティアに、たびたび夢の中で干渉しては導いていった。


 地上世界の人はか弱い。

 最もか弱い存在でありながら、最も繁栄する叡智を持ったこの女性が人々を導けば、最後の時に人も、自らの意思を神に示すことが出来るだけの力を持てるだろうと。


 ティアは女王となり人々を導いていった。


 10年前、ベルゼブブがサタンによって地上世界に向かったとの情報を聞いた時、彼女はサタンを探し回り地上世界の鍵を手に入れようとした。


 だが、やっと見つけたサタンの口から出た言葉は意外な言葉だった。



「大丈夫。ベルゼブブは負けるよ。人が勝つ。彼がいるからね」


「彼?」


「今はまだ秘密だよ。君の前にもいずれ現れるさ。」



 サタンから結局鍵を奪えず、地上世界が無事であることを祈ることしか彼女には出来なかった。


 その後、小さな穴から地上世界に行ける低級悪魔達の噂に、ベルゼブブの名前が出てくることは無かった。

 地上世界がベルゼブブによって蹂躙されているとしたら、当然にその噂は伝わってくるはず。


 サタンの言うとおり、人はベルゼブブに勝ったのだろうか。

 いや、勝ったのだろう……でもどうして勝てたのか。


 サタンの言っていた“彼”とは誰なのか。


 彼女はその存在を調べるため、天界に向かった。


 ベルゼブブを倒せるほどの存在があるとすれば、そこにアルフ王が関係していると思ったのだ。

 だが、アルフ王は彼女の謁見の申し出を全て断った。


 彼女は何かしらの情報を得ようと、天界のあらゆる場所で情報を集めた。

 ベルゼブブを倒せるほどの何かと確信を得られる情報はどこにも無かった。


 天界、地下世界のあらゆる場所を訪れ、そしてアルフ王への謁見の申し出を続けた彼女だが、すでに別れた元夫オーディンのカラスから聞いた情報に、何かを感じた。



“聖樹王から作られた妙な力を宿した木の棒”



 オーディン曰く、恐らくそれはサタンが作ったものではないかと。

 そして近々、誕生したハイオークキングを討伐するとも。



 彼女は急いで里に戻ることにした。

 あらゆる場所で情報を集めていた彼女であったが、その中で神樹……聖樹王に亀裂が生じ崩れ始めていることを見つけていた。


 それは、世界の終りが始まっていることを意味する。



 里に戻ると、既にハイオークキングとの戦いは終わった後であったが、彼女はそこでそれと出会った。


 その木の棒を見た瞬間、彼女が感じたことは2つ。


 1つはサタンがかけていた呪い。


 もう1つは、“神”の存在に限りなく近い存在。



 カラスから聞いた情報によると、この木の棒はアーシュやベニ、ラミアの才能を次々に引き出していったとか。

 そして、この木の棒には何らかの意思が存在している。


 それは神の意思なのか。

 それとも、別の神?


 彼女はこの木の棒が、この世界の終りに関係するものだと確信する。

 地上世界を救ったことに、この木の棒が関係しているのかは不明だが、過去の原因を探るよりも、今は未来の可能性を考えるべきである。


 サタンは愛娘の胸にトゲを刺し込み、何かを企んでいる。

 いや、ただ遊んでいるだけだろう。


 あの馬鹿なら、きっと愛娘を使ってサタンの企みに乗るはずだ。

 それを見越して自分は動けばいい。


 彼女は終わりの時が近いことを感じながら、動き出した。




 里の指揮をアーシュに任せ、急いでリンランディアが開けた地上世界への道を通り城に向かう。


 彼女の存在に気付いたリンランディアは氷の羽を広げて、彼女の到着を待っていた。



「お待ちしておりました、アマテラス様」


「ありがとう。状況はどうかしら?」



 これまでの状況をアマテラスに伝えるリンランディア。

 そして、女王との謁見の間へと。



 アマテラスの姿を見た時、ティアは跪いた。

 彼女こそ、何度も自分の夢に現れ、自分を導いてくれた存在であるとすぐに分かった。



「初めまして……と言えばいいのかしら。夢の中ではもう何度も会っているのに、こうして直接会える日を迎えると、私もとても嬉しい気持ちだわ」


「私もです。私を、いえ私達を導いて下さった貴方様にお会い出来たこと……感無量でございます」


「私のことを恨んでもいいのよ? 貴方の人生を奪って狂わせた張本人でもあるのだから」


「私は一度たりとも、貴方様を恨んだことなどございません。この世界で生きれたことは、私にとって何よりも幸せなことでした」


 笑顔で見つめ合う2人。

 46年も前から始まった2人の願いは、地上世界の希望となり、そして今まさに神にその意思を示す時がきている。



「天界への道は、聖樹王の根のこの部分に出来るわ。いま地下世界では、悪魔達を陽動に使うための作戦が進んでいます。こちらの進軍に合わせる形で、悪魔達を地下世界から天界への道に進めます。準備が出来次第、出発しましょう」



 アマテラスが示した根の部分に、女王はすぐさま拠点を作るように指示をする。


 世界をかけた戦いである。

 全ての騎士団、魔術師団、そして戦士達が参加した。


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