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伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第3章 戦い
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第27話 誘導

 お父様から禁断の果実を、神の泉に戻してくるように頼まれた私達は、すぐに神の泉に向かった。

 ラミアの白蛇であっという間に着くと思っていたら、途中でおかしな子供に出会う。


 こんなところに子供が?


 私が子供を襲う獣に雷を落としたら、次の瞬間、子供はその獣をあっという間に倒してしまった。

 私は驚いた、あの獣はそんなに簡単に倒せるものじゃない。


 子供はひょうひょうとした調子で、自分の素性を話していたけど、私には信じられなかった。

 この子供が嘘をついていることは明白だったけど、いまは神の泉に向かうのが先決。


 さっさと行こうとすると、自分もそっちに向かうから乗せていってと言ってきた。

 私は嫌な予感しかしなかったので断りたかったのだが、ベニちゃんとラミアが子供1人では危ないからと承諾してしまった。


 あの獣を簡単に倒す子供に危険なんてないと思うけど。

 普段のベニちゃんとラミアなら、こんな怪しい子供を受け入れるとは思えない。


 何かがおかしいと、私はさらに警戒を高めていた。



 そんな私の警戒はあっけなく崩れた。


 神の泉までついてきた子供。

 私達が禁断の果実を泉に戻したあと、この泉の底から湧き出るように、禁断の果実がいくつも浮かび上がってきた。


 私達は驚いた。

 どうして禁断の果実がこんなにたくさん?


 動揺する私達を楽しむかのように、子供は泉に近づくと、禁断の果実をかじって食べてみせた。


 死んだ! 私はそう思った。

 禁断の果実とは、神のみが食べることを許された果実だ。


 この世の全ての力を授かると言われているけど、神以外が食べたら、その場で死んでしまう。

 それが禁断の果実である。


 それなのに、目の前の子供は禁断の果実を食べても、何ともないように手を広げて言った。



「この果実を食べて僕は強くなったんだ。お姉ちゃん達も食べてみたら?」



 この果実から力を得た?

 本当にそんなことが?


 私は禁断の果実を指差し、子供に訊いてしまった。



「この果実を食べたら死ぬはずよ? どうして君は死なないの?」


「そんなの嘘だよ。それはこの果実から力を手に入れないように作られた、真っ赤な嘘さ」



 嘘? 禁断の果実に関することが嘘?

 でもどうして、そんな嘘が必要だったの?


 食べるだけで強くなれる。

 私が強くなれば、ルシラの本当に持ち主に近づける。


 もうルシラを傷つけない。

 誰にもルシラを傷つけさせない。


 そんな力を得られるの?

 私の足は、泉に向かっていった。


 そんな私を止めてくれたのは、ベニちゃんとラミアだった。

 私は軽い笑顔で、2人に冗談だよと言いながらも、心の中では果実を食べたいと思っていた。


 そんな私の欲望を子供が刺激してくる。



「お姉ちゃん食べてみなよ。雷帝より強くなれるよ」



 お父様より?

 あの雷帝よりも?


 私は再び泉の果実を取りにいこうとしていた。

 身体が勝手に。


 ベニちゃんが本気の形相で怒ってきた。

 私は、はっ!っと自分を取り戻して、ベニちゃんに謝る。


 本当にどうしたんだろう。

 お父様より強くなることは私の目標だけど、禁断の果実に手を出すことは大罪だというのに。


 強くなりたいという想いが曲がった方向で動いてしまったのかな。

 私は、気持ちを落ち着かせて、早く里に戻ろうと思った。


 里に戻って、ルシラとお風呂に入って、艶々に磨いて、一緒に寝ようと思った。



 私がそう思って里に戻ることを決めた時、子供が何か呟いた。

 それと同時に、私の胸の中にある何かが、黒く光りだした。





 その黒い光はあっという間に私を包み込んだ。

 私の意識は闇に囚われた。



 一瞬で闇の中に囚われた私は、手と足を鎖で繋がれていた。


 目の前には、巨大な……あまりに巨大な蛇がいた。


 勝てないとか、殺されるとかじゃない。


 何かを感じることすら許されない。


 この存在の前では、自分という存在すら感じられない。


 蛇は私を見ている。


 見ているかどうか分からないのに、見ていると分かる。


 蛇は囁いた。


“僕の力を受け入れるんだ”


 君の力を受け入れる?


 私が? どうして?


 だって、私にはルシラがいる。


 私の力はルシラ。


“僕の力の方が強いよ?”


 君の方が強い?


 そうね、君の方が強い。


 君の方がずっと強い。


 きっと私とルシラでは、君に勝てない。


 どんなにもがいても、きっと勝てない。


“だから、僕の力が必要でしょ?”


 君の力が必要?


 どうして必要なの?


 いらないわ、君の力なんて。


 私が欲しいのはルシラとの力。


 他の力なんていらない。


 ルシラがくれる優しい力。


 ルシラがくれる温かい力。


 ルシラがくれる逞しい力。


 ルシラがくれる……ルシラがくれる……


“君を傷つけたのに?”


 ルシラは1度も私を傷つけたことないわ。


 私が彼を傷つけた。


 彼に頼って、自分を見つめなかった私が彼を傷つけた。


“彼を傷つけたのに?”


 そう、私は彼を傷つけた。


 あんなに優しい彼を。


 自分のことばかり考えて、彼を傷つけた。


“君は彼に相応しくない”


 私は彼に相応しくない。


 私は彼の側にいたらいけない。


 彼にはもっと相応しい人がいる……。


“だから僕のもとにおいで”


 彼と離れて君のもとに?


 君のもとに…


 君のもとに……


“それが彼の幸せのためだよ”


 彼の幸せのために、私は君のもとに……


 ルシラ……






 私の心が闇に落ちようとした時、天から降り注ぐ光の中から、その人の手が伸びてきた。


 愛しい貴方が、私の名前を呼びながら……



 アーシュ!!!


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