第6話 「俺は女性と二人きりになってもフラグは立たない」
なぜいつもより短いのにいつもより書くのに要する時間が多かったんだろうか…。
反省とともに努力します。
源家の朝の光景、第6話です。
朝である。昨日という突然の波乱の日から一夜明けたわけだ。
「ふぁ~あ…」
外では小鳥がさえずっている。なるほど、これが朝チュンというやつか。何もしてないけど。
「すぅ…すぅ…」
とか言うが俺の隣では金髪の小学生がすやすやと眠っていた。この状況だけ切り取れば、エロゲーかなんかのワンシーンかと思うが、こいつは俺の義妹だ。そんな気にはならない。
「さて、行くか」
俺はそのまま若菜を起こさないように自分のベッドから起き上がる。ちなみに俺はこいつらの朝飯を作るために基本的に毎日朝5時には起きる。
たまに朝辛いこともあるがしょうがない。兄貴とはそういう生き物だと少なくとも俺は思っている。
部屋を出て、洗面所へ行って顔を洗って髪を整え歯を磨く。
ここら辺は毎日やっていることなので慣れている。
その後俺はエプロンを身に着けつつ台所へ向かう。だが大変なのはこれからだ。
なんせ葵の弁当と全員分の朝飯を作らなければいけないからな。
「えぇっと…、卵焼きは必須として…、あとはハンバーグでも作るか…」
とりあえず脳内で葵の弁当の献立を決めつつ冷蔵庫を漁る。具材が少なくなってきたな、今日中に買いに行くか。そんなことを考えながら弁当のおかずを作り始める。
「よし、できた」
弁当が出来たころには5時30分ほどになっていた。そろそろ葵も起きる時間だなと思いつつ、続いて朝飯を作る。今日の朝飯はクロックムッシュにしよう。
そうやって朝飯を作っていると、葵が起きてきた。
いつものように髪はまとまっておらず、ぼさぼさだ。どうやって寝ていたらこんな髪型になるうんだろうか。
「……」
しかもこいつ、無言で起きてきやがった。いくら兄がウザいからっておはようぐらい言えないものか。
「おい、お前おはようぐらい言えよ」
調理しながら注意してみる。結果はある程度見えているが。
「うるせ~、バカ兄貴…」
眠気を堪えながら悪態をつく葵。どんな状況でも悪態つくのな、コイツ。
少しぐらい社会の先輩の言う事を聞いてもいいと思うぞ。この後の人生的に。
はいはいそうですかと調理を続ける。
そのときチーンとトースターから音がした。どうやら完成したようだと思い、クロックムッシュを取り出す。そうしてコップに牛乳を注ぎ、葵の朝飯が完成した。
時刻は5時45分を示していた。
「ほれ、飯出来てるぞ。今日はおしゃれにクロックムッシュだ」
俺と同じように洗顔などを終えた葵が戻ってきた。髪はもうきちんと整っており、ヘアピンもいつもどうり付けてある。まぁもう何度も見慣れた光景なのだが。
「ふん、こんなのいつでも食えるし」
だからその生意気な態度と男っぽいしゃべり方はやめろと言っている。お前本当に友達いんのか。
「…まぁ食わなくもないけど」
クソが!はっきりしろよ!実の妹のツンデレとか得でもなんでもねぇんだよ!
…おっと、つい熱くなってしまった。まぁこいつにはよくあることだ。気にしないでおこう。
だがみんなわかると思う。実の妹のツンデレとか実際見ると得でもなんでもないぞ。ただ鬱陶しいだけだぞ。こいつがいい例だよ、本当に。
「分かったからとっとと食え。お前朝練あんだろ」
どうでもいいことを言われても面倒なので、早く食事をするようにそそのかす。
いや、別にこいつを嫌ってるわけじゃなくてだな。
「分かってる、いちいち言わないで」
たくこのガキャア…。早く学校でもなんでも行っちまえ。
俺は若菜と一緒にいるもんね~、へへ~んだ。
「ごちそうさま」
下らない兄妹の罵り合いをしばらくした後、葵が食事を終えた。
その程度の礼儀はあるらしいな。でもいただきますは聞いてないぞ。どうなのそれ。
「はいはい、早く学校行けよ」
きちんと制服を着て準備を整えてある生意気な妹を早く学校に行かせようとする。
「ふん!言われなくても行くわバカ兄貴!!小学生と二人きりになれて喜んでんじゃねーよ、このロリコン野郎!」
玄関のドアを開けながら葵が叫ぶ。この野郎、最後まで生意気だな。
「誰がロリコンだ誰が」
そう捨て台詞を吐いた葵は玄関のドアを思いっきり閉めて出て行ってしまった。
まぁいいや、これで清々するってもんだろ。
なんせ今日は葵と違って全然生意気じゃない妹と家でゆっくり過ごせるんだぜ!?
妹がいる時点で死ね、とか思っている人には分からないだろうが、俺は理想的な妹しか欲しくないのだよ。わがまま乙とか言われたらそこまでなのだが、妹がいる兄貴こそ更に幻想を抱いちまうもんなんだよ…。分かってくれるかなぁ…、全国の妹持ち兄貴諸君よ…。
と、そんなことを考えていると俺の部屋から若菜が眠い目をこすりながら起きてきた。
「…おはよ…」
相変わらず消えそうな小さい声だ。その右手には小さなうさぎのぬいぐるみがいる。
時刻は6時30分ぐらいになっていた。
意外に早起きなんだな、こいつ。
「お、起きたか。飯もうすぐ出来るから待ってろ」
「うん…」
声をかけてもきちんとした反応を返してくれる。これだけでもあのわがまま妹とは大違いだ。
物静かな点もグッドだ。うるさい妹を持つと、こういう妹のほうがいいね。
そして何より葵に比べて金髪で人形のような華麗さ。あんながさつな妹よりはるかにましだわ。
……と、こんなことを書いていると俺がまるでロリコンであるかのように疑われてしまうのでこれ以上は言わないが、とにかく葵より若菜の方が百倍ましだ。今のところは。
そうすると若菜はリビングのソファに腰を掛けた。料理しながらそんな若菜を見ると、葵が付けっぱなしにしたテレビを見ているのかいないのか分からないような目でボーっとしていた。
そんな顔もまた可愛い。
「ほら、出来たぞ」
俺はテーブルに若菜と自分の分のクロックムッシュを差し出した。
「ん……」
小さく返事を返してくれた若菜を見ると、料理をしたこちらとしてもうれしい。
どっかの妹さんも見習ってほしいもんだ。
「ふぅ…、じゃあ俺も飯食っちまうかな」
着ていたエプロンを外してそこらへんに置き、若菜の隣に座布団を敷いてそこに腰掛ける。
若菜はその間にももくもくと食べている。小動物みたいでこれまた可愛い。
「どうだ、美味いか?」
これを聞いてこくりと頷く若菜。よしよし、どうやら俺の料理の美味さを分かってくれたようだ。
『さぁて、今日の占いランキングは~!?』
テレビでは朝のニュースの占いコーナーがやっている。時間を見ると、もう6時50分を過ぎていた。
随分時間が過ぎるのが早いな、と思いつつクロックムッシュを口にほうばる。
うん、いい味だ。最初のころはクロックムッシュとかスイーツ(笑)しか食わねーよとか思ってたがそんなこともないようだ。
残りの分もほうばり、完食した。
「ふぅ、美味かった。…さて、問題はこの後どうするかかな…」
と若菜の方をチラッと見てみる。若菜はまだ食べ終えていなかった。
そう、本日の問題はこの若菜にある。いつも俺は休日といえばネットを見たりゲームしたり…まぁ時には外出したりもする。ゲームとかラノベとか漫画を仕入れるためにな。
だが今日はそうもいかない。
この新しい妹、若菜がいるのでそうやって一人で好きなことをするというわけにもいかないのだ。さて、どうしたものか…。
そんなことを考えて、ふと頭に思いついたことを口に出してみる。
「なぁ若菜……今日一緒に外出するか?」
そんな適当なことを言うと、若菜がクロックムッシュを口にくわえつつピクッと体を震わした。
お、この反応はどうやら当たりっぽいぞ。
「おぉなんだお前、出かけたいのか?」
「……」
ふるふると首を横に振る若菜。だがこの反応は多分ウソだろう。
こいつは自分の願いをかなえてもらおうって気を隠すやつだからな。本当はこんなことを聞かれて嬉しいんだろうな。
「隠すことねーよ、行きたいんだろ?なら準備しなくちゃな」
「……!」
首を横に振りつつも少し顔を赤らめる若菜。嬉しさが顔に出てるぞこの野郎。
分かってるって、仮にも俺はお前の兄貴なんだからな。
俺は自分の皿をキッチンへ持って行って、受け皿の中に放り込んだ。
そしてそのまま自分の部屋に向かう。
「さてと…、相手は小学生とはいえ仮にもこれは女性との外出…。やはりある程度はおしゃれに固めるべきか…」
洋服棚の前でぶつぶつ言いつつ、着ていく服を一通り決める。
「ええと、パーカーにジーパン…。うわぁ、相変わらず俺ってファッションセンスないよな…」
やはり無難にグレーのパーカーと青のジーパンになってしまった。
これならどこへ出かけても問題ないからいいとはいえ、世のリア充から見れば「うっそ~!」とか「ありえな~い!」とか「パーカーが許されるのは小学生までだよね~!キャハハ!」とか言われてしまうに違いない。
そんなことを思いながらもそれを着てからリビングへ戻るとすでに若菜と皿の姿は無かった。
「なんだあいつ、やっぱり嬉しいんじゃないか」
つい心の声を口に出す。すると、リビングの入り口から若菜が姿を現す。
「おぉ…」
またもや心の声が口に出てしまった。だが正直しょうがない。
なんせ目の前には寝起き以上に綺麗になった若菜が目の前にいるのだ。
若菜は長い金髪をツインテールに結び、袖なしワンピースの上に上着を羽織っている。
多分これを普通の小学生がしたら「け、小学生ごときがませやがって!十年早いんだよ!」とか思うんだろうが、この華麗さは凄いぜ。できればみんなに見せたいぐらいだ。賢二とか。
だが兄と妹でこんだけ差が出るって言うのは…母さんのせい…、ではないなしょうがない父さんを怨もう。
あ、でも葵も学校で人気あるんだっけ…?不平等だな、神は…。
「…………」
若菜は無言のまま恥らっている。どうやら俺の次のセリフ待ちらしい。
「すげぇ似合ってるじゃん。綺麗だと思うぜ」
「…ッ!」
心からのほめ言葉を言うと、何やら若菜はもじもじし出した。
やっぱりこういうことを言われるのには慣れていないんだろうか。しょうがない、徐々に慣らしていかないとな。
「じゃあ、行くか。俺も最近全然外でてないから不慣れだけどな。そこらへんは勘弁してくれ」
そもそもこんな田舎じゃあんまり行くところもないけどな。
あ、でも最近ショッピングモールが出来たって話だっけ。こんな田舎にショッピングモールなんかよく建てる気になったもんだと思うが、近所で出かけられるところが増えたのは少しうれしいかな。
「よし、じゃあ最近近くにショッピングモールとやらが出来たらしいからそこに行こう」
「…しょっぴんぐ…もーる…?」
「ん?あぁ、そうかお前そういうの知らないんだっけ…。えぇとショッピングモールってのは、いろんなお店が一つに固まってる所なんだよ。服屋とか、レストランとかな」
「楽しい…かな?」
「楽しいんじゃないか?よし、とりあえずまずは行ってみようぜ」
というわけで俺と若菜は家から歩いて15分ぐらいの場所にあるショッピングモールを目指すことになった。
(さて、これで若菜とある程度コミュニケーションがとれるようになるといいんだけどな…)
第7話を書く前に、とりあえず今のところのキャラと状況まとめとかを投稿したいと思っていますので7話は少し遅くなるかもしれません。
ご了承ください。