第1話 「俺は母にも妹にも好かれてない」
というわけでここから本編です。
さぁみんな!このシチュエーションを思い浮かべながら見るんだ!
そうすると俺の憎悪(妹がいないという)が分かるから!
4月―――。
世の中では進級だの就職だの何やら騒がれる月だ。
そんな例に漏れず、俺も大学2年生に進級した。まぁ個人的には、だからなんだと言った感じなのだが。
そんな月のとある土曜日。
今日は大学が休みの日だ。
こんな休みの日には健全な少年なら外で元気よくサッカーでもして遊んで健やかに過ごすんだろうな。
そしてここにいるこの20歳大学生も、今日ばかりは家で健全なオ〇ニーライフを……と考えてティッシュ片手に自分の部屋を目指す。としようとしたその時、
「待てえぇぇぇぇぇい!!」
いきなり近くから叫び声が聞こえた。まったく実にうるさい。誰だ。こんな大声で吠えている奴は。
「なんだよ葵」
「せっかくの休みの日に何を考えてんだ、バカ兄貴!」
「やかましい、俺は賢者を目指してるんだ。邪魔をするな」
一応紹介しておくと、このうるさい奴は俺の妹「源 葵」。
中学2年生ながら、なぜか俺と一緒に親と別居中である。
中学ではソフトテニス部に所属しており、活発な性格で俺に当たり障り厳しいやつだ。
こんなにうるさい奴が妹だとは、兄ながら泣けてくる。顔が良ければいいってもんじゃないぞ。
「お前、処女のくせに俺に口出しするな」
「兄貴だって童貞だろ!」
ちなみにコイツの身長は148cmぐらいなので、完全に俺を見上げながら怒っている。体重も確か40数㎏じゃなかったか。そして中学生の女子が童貞とかいう言葉を普通に言うのはどうなんだろうか。
「まったくうるさいな。そんなうるさい性格だからモテないんじゃないのか」
というか処女というのはホントだったのか。
「な!?そういう兄貴だって彼女いないじゃんかよ…」
ははははは、まったく愚かな妹はこれだから……ッ、
「俺の彼女は3次元などには存在しない。2次元のみに存在するのだ。2次元が…、真実だっ!!」
3次元とかのフラグはほぼ捨て去っている俺にはそんなものは必要ないのだ。
「くっ…!ダメ兄貴が……!」
ダメとは失敬な。俺は人とコミュニケーションとか普通に取れるぞ。学業もそれなりだしな。
決してダメではないが、うん、体系は認める。不摂生だね。
「ははは、諦めたか葵。というかお前休日なのになんで普通に家にいるんだ?俺じゃあるまいし、友達の一人ぐらいいるだろ?」
「うっ、そ、それは…。いいだろ、別に…」
なんでそこで回答につまるか分からんがまぁいいや。あんまり女性のプライベートに迫るのもよくないかな。
「まぁいいや。引きこもり過ぎるなよ。俺みたいになってもしらんぞ」
「わ、分かってるよ。誰が兄貴みたいなキモオタになるかっつーの!」
そこまで言わんでも。しかも俺は自分でキモオタとか言ってねーぞ。
しょうがなく俺は葵と別れて自分の部屋に向かった。
とまぁ俺たちの日常はいつもこんな感じだ。
どこかのギャルゲーとか2ちゃんねるのSSとかみたいに兄と妹との恋愛フラグなんて立つことないわけだ。くそ、これだから3次元は…!
だが―――。
プルルルルル―――。
電話が鳴っている。家はリビングに電話があるので、電話を取る際はわざわざ動く必要がある。
とか思ってる間にも電話は鳴り続けている。
しょうがないので、俺はこれから漁ろうとしていた2次エロ画像フォルダを閉じて電話を取りに向かった。
リビングに行くと、葵がリビングのソファの上で寝転がりながらポテチをほおばりながら携帯をいじっていて、動く素振りもしない。
遠まわしに「お前が行け」と合図をしているのか、コイツめ。
はいはい今出ますよ、と受話器を取る。
「もしもし、源ですが」
受話器の向こう側から聞こえたのは俺が面倒くさく思う人の声。母さんだ。
『あ、もしもし光司。久しぶりね。2年ぶりぐらいかしら?』
げ、と思いつつもとりあえず用件を聞く。
「なんだよ、何か用?母さん」
『そうそう、用事用事。あなたに用があるのよ。あのね……』
相変わらず母親ながら麗しい声だ。アニメでよく見るキャリアウーマン、という感じの声だ。
井上喜久子さんとかに似てるんじゃなかろうか。
と、そんなくだらないことを考えていると母さんは俺がまったく予想できない、というか誰が予想できるかという言葉を言い放った。
『あなたの家に妹一人増えるから』
へ?い、いきなり何を言い出すんだ母さん。もうとっくにエイプリルフールは過ぎてるぜ、マイマザー。確かにまだ4月だけどなぁ…、それにしても冗談が過ぎるぜ。
『あら、どうしたの急に黙っちゃって』
いや、普通黙るだろ。なんだよ急に妹が増えるって、しかもなんで俺の住んでる所なんだ?
母さんたちと一緒に住めばいいだろ。と俺は心の中で念じる。
『あ、もしかして私たちがまた子供産んだと思ってる?』
そういう話じゃないんだが。
『安心しなさい。私と今のお父さんの子じゃないから。心配しないでいいわ。前付き合ってた外国人との子よ?あんたから見たら義理の妹ね。ちなみに10歳よ。兄としては育てがいがあるんじゃないかしら?』
母さん、それを聞いて俺が安心すると思うあなたの方が心配です。
いやいやいや、何一つ安心できる情報がないぞ。
今の父さんとの子じゃない?外国人との子ってことはハーフ?10歳?ということは小学4年生?
「いや、訳がわからないよ」
とりあえず誰もが思う事を言った。
『分かるでしょ?私とお父さん両方夜まで仕事で面倒見れないからあんたに頼んでるのよ』
「じいちゃんは?」
『今年中はハワイの別荘にいるらしいわ』
あの道楽じいさん…。
ちなみに俺のじいさんとやらは大企業の元社長だ。
正月ぐらいにしか会わないが。
『とにかく細かいことはいいから面倒見るの頼んだわよ。あ、そうそう。その子が入る小学校とかはもう手続き済ましてあるから』
まぁ確かにその子が本当に来ると決まっていれば今ここで話してても意味がないな。しかも学校の手続きまでされては…、逃げ場もないしな。
「はいはい、分かったよ。で、いつ来るのその子」
『今日よ』
「え?」
『今日の正午過ぎぐらいにそこに着くって』
また俺は唖然としてしまった。何を言ってるんだ母さん…。そんな大事なことを当日報告とかおかしいだろ常考。
少しぐらい準備とかの時間をくれてもいいんじゃないか?
「へいへい…。でもまた人が増えるなら仕送り増やしてくれよ?俺のバイト料じゃ限度がある」
『そこは任せなさい。これまでの倍以上送ってあげるわ』
「マジで?どうやってそんなに稼いでるんだよ」
「お父さんと私の会社での今の立場…、舐めない方がいいわよ?」
なるほど、そういうことか。今まで以上にえらくなったならしょうがないな。
詳しくは聞かないことにしよう。
「分かったよ、じゃあな母さん」
『はいはい。その子、大事に育ててあげるのよ。あ、ちなみに何かわかない事あっても聞かないでね。今私あんまり時間ないから』
ブツッ―――。
最後の言葉は相変わらずひどいな。まぁいつもそうなんだけど。
それにしてもまさか俺に義妹がいたとは。どうしたものか。
あぁ、そうだ。葵のヤツにも報告しないと。あいつのことだからどうでもいいと思うだろうけどな。
「おーい、葵」
「なんだよ、クソ兄貴」
チッ!相変わらず口の悪い妹だ。どうにかならんのか。そんな口調じゃ友達とコミュニケーション取れないだろ。
…それはさておき。
「ウチに妹が一人増えることになった」
「ハッ…?」
この言葉を聞いてさすがの葵もこちらに振り向きかえる。
うわぁ、完全に「何言ってんのコイツ、妄想は2次元だけにしろよ」って顔してるわ…。
「ちなみにホントの話な。義理の妹だ。外国人とのハーフだとよ。ちなみに10歳らしい。お前より年下だな」
「なにこと細かく話してんだよ、ロリコンか」
誰がロリコンだ誰が。俺は幼女に興味はない。純潔を貫く紳士だよ!信じてよ!
どちらかというと俺は若干胸が膨らんでて美人な子の方が好み…って違う!
「とりあえずその子正午過ぎにここに来るらしいから。少しぐらいきれいにしとかないといけないから、そこどいとけ」
チッと舌打ちして葵は自分の部屋に向かった。まったく可愛くない。少しぐらい兄を手伝おうという子は起きないのか。慣れたことだとはいえ、辛い。
「まぁいいや。えっととりあえず掃除機かけて……」
はぁ…、妹二人でそのうち一人は義妹とか…。どこのギャルゲーだよ…。覚めるなら早く冷めろ俺の夢!
そんなことを思いながらも俺はその義妹とやらに期待を抱かずにはいられないのだった。
次回遂に義妹登場。お楽しみに。でわでわ