ジャガイモ警察より注意喚起
余ったジャガイモをレンチンしてバターつけて食ってたらふと「ジャガイモ警察」という言葉が頭をよぎったので妄想を膨らませてみました。
2026/4/18/20:17 ジャンル間違えてハイファンにしてたんでコメディーに変更
ナレーション「ジャガイモ警察よりお知らせです。もしもナーロッパ世界に転移してジャガイモっぽい植物を見つけたら……? 安易に食用にしようとする転移者は実に多いのですが、実はこれ、大変危険な行為です。まずは実際に起きた例を見てみましょう」
場面:豪華な応接室。席に着く中年の威厳のある貴族と思しき男性。背後に控える老境の執事。対面する冒険者姿の黒目黒髪の青年。
貴族「よくぞ北の村々を壊滅させ街道沿いに居座っていたオークキングが率いる群れを討伐してくれた。見事なものだ。やはり転移者が神から与えられたスキルは強力だな。セバス、彼に報酬を」
執事「はっ。約束の金貨300枚でございます」
転移者「確かに」
貴族「やれやれ、しかし北の村々が壊滅してしまった以上、食糧生産に問題が出るな。君の討伐したオークの肉のおかげでしばらく肉にだけは困らないが……」
転移者「北の村々は麦と野菜の生産地でしたか? このあたりは花の栽培を行っているとか」
貴族「うむ。この辺りは土地が痩せている上に冷たい風の通り道で麦がまともに育たんのだ。北の村々は我が領地では例外的に豊かな土壌で風の道からも外れていたのだがな。
花はこの土地でも育つものを王都に輸出して外貨を稼ぐ為のものだが食糧にはならん。頭の痛い事だ……」
ため息をついて窓際にある鉢植えの花を見る貴族。つられてそちらを見る転移者。その瞬間、何かに気づいて立ち上がる。
転移者「それは……ジャガイモ!? 栽培してる花ってそれなんですか!?」
貴族「う、うむ。近年高山帯で発見された植物で、有毒ではあるが寒冷な土地にも根付き、小さいながらも可憐な花を咲かせる。もともと高山帯の植物で物珍しさもあり薔薇ほど高価でないにしてもそれなりに王都では人気なのだよ」
転移者「それ食べられますよ! 上手くすれば食糧問題が解決します!」
貴族「む? 有毒だと言ったはずだが? 実際、実を食べたものが中毒症状を起こしている」
転移者「実じゃありません! 地中にできる芋を食べるんですよ!」
貴族「確かそれも中毒になった例があったと思うが」
転移者「あー、芽が出てたり日が当たって緑色に変色したりすると中毒になりますね」
貴族「そうなのかね? とても信じがたいが……」
転移者「騙されたと思って食べてみて下さい! 美味しいですよ! 調理法は……」
貴族「ふむ、君がそこまで言うのならば……」
執事「お待ち下さい旦那様。いくら何でも危険すぎます」
転移者「いやいや大丈夫ですって。保証します」
執事「ですが……」
貴族「うーむ。ではこうしよう。もし嘘だったら拘束して補償してもらう。真実であれば食糧問題の解決の一助になったとして報酬を支払う。これで契約を結ぶというのは? 仮に嘘だったとしても神のスキル持ちが補償してくれるのならば損はないだろう?」
転移者「構いませんよ! 任せて下さい!」
場面転換:食堂にて。テーブルの上に並ぶフライドポテトやジャガバター、ハッシュドポテトなどのジャガイモ料理。
執事「旦那様、せめて毒味を……」
貴族「くどいぞセバス。彼があそこまで言うのだ。信頼するのが筋というものだろう」
そう言ってジャガイモ料理を口にする貴族。その瞬間、クワッと目が見開かれる。
貴族「これは……なかなかのものではないか!」
転移者「でしょう?」
そのまま上品に、しかしかなりの速度で料理を平らげていく貴族。だがしばらくすると顔色が変わり腹を抑え始める。
貴族「う……腹が……これは……」
執事「旦那様!? おのれやはり毒ではないか! 魔法契約執行! 拘束する!」
転移者「そんな!?」
場面転換:地下牢。中に入れられ首輪をはめられた転移者。鉄格子の向こうで冷たい視線を向ける執事。
執事「魔法契約に基づき貴殿を拘束する。言うまでもなく貴族へと毒を盛る事は重罪、ましてや信頼を裏切った上での事です。とは言え旦那様は命までは取りたくないとの事です。奴隷落ちとしてせいぜい領地の為に働いていただきます」
転移者「どうして……どうしてこんな事に……」
画像が静止。流れ始めるナレーション。
ナレーション「どうしてこんな事になったのか。そもそも異世界で似た植物があったからと言ってそれが地球と同じ性質とは限りません。
仮に地球と同じ植物だったとしても、そもそもジャガイモは地球においても野生種は芋にも毒があります。今日我々が食べているのは南米の先住民が食糧として品種改良したものだったりします。「近年発見された」とあるように今回の例では野生種である可能性は極めて高いでしょう。
異世界に来たというのに自分の持つ地球の常識で判断し、安易に行動した結果、このような結果になってしまったのです。
皆さんは異世界に転移、転生してもこのような事にならないようにくれぐれも気をつけて行動して下さい。
以上、ジャガイモ警察からのお知らせでした」
画面が暗転し真っ黒になる。
だがそのまま10秒ほど経過すると再び画面が明るくなり、貴族が執務室で執事の報告する場面が映しだされる。
執事「旦那様、奴隷落ちの処理が終わりました」
貴族「ふむ。神のスキル持ちの転移者となれば戦力としてもかなりのモノだ。本音で言えばこのまま保有しておきたいが今は金か食糧が必要だ。王家に献上し代わりに食糧支援を引き出そう」
執事「ではそのように……」
退室する執事。それを見送ると机の上に置かれたジャガイモ(仮)の鉢植えを愛おしそうに撫でる貴族。
貴族「クククッ、しかし転移者と言うのはどいつもこいつもこの花を見ると同じ反応をする。毎回腹を下すのは苦しいがポーションで治る程度の毒をくらいさえすれば神のスキル持ちの奴隷が手に入るのだ。笑いが止まらんな。クックックッ、ハッハッハッ、ハーッハッハッ!」
邪悪な笑みを浮かべて哄笑する貴族。画像が停止。再び流れるナレーション。
ナレーション「いやホント気をつけて下さいね?
異 世 界 舐 め ん な 」




