給料 2003年3月3日
無事初めての接客が終わり給料をもらいに行くと
ハルキが待機室にいた。
戸山VIPでの接客を終えて
掃除を終えるとそのまま事務所に帰った。
よくよく考えると
これが人生初めてのアルバイトなんだと思ったら
なんだか不思議な気持ちになったが
まずは指名されて少し安心した。
「戻りました。」
「おかえりなさい!大丈夫だった?」
「はい、なんていうかいい人でした。」
「あー確かにお客さんの性格って結構大事かもね。
強引な人だと気を遣うと言うか、心身ともに我慢しなきゃいけない部分が出てくるし」
「そうなんですね(汗)頑張ります。」
マネージャーさんにとっては
他愛のない話のようだが
僕にとっては
かなり真の喰った助言に思えた。
「はい、今回の手取り分ね、お疲れ様!」
「ありがとうございました。」
当時僕が勤めてたお店の手取り分は
60分7000円
90分9000円
120分12000円
泊まりコース(PM10時〜AM10時)20000円
1日貸し切り(指定時間から24時間)40000円
となっていた。
他にも3Pコースや
スワップコースというものがあったが
友達となったり…と考えるとなんだか
恥ずかしいなと思い
その2つは受けないことにしていた。
9000円を手に入れたとはいえ
僕みたいなイケメンでもない
若いだけの男にすぐに指名が入るわけでもない
そう考えて僕はこのお金を大事に使うことにした。
待機室に戻ると同い年の「タカキ」が座っていた。
「お疲れー仕事終わったんですか?」
今気づいたのだが東北のようななまりで
話してることに気づいた
「はい、初めての指名だったけど
何とか終わってよかったよ…てか、東北の人?」
「んだっきゃ、
青森から来てて友達と
ウィークリーで住んでるんだよね」
「そうなんだ、僕は群馬からきてて
青森の人と初めて話したけど「んだっきゃ」?
ていうのは…どういう意味?笑」
「あーんだっきゃは、「そうそう」とか
「そうなんだよねー」みたいなニュアンスかな?
今度使ってみて笑」
「なんか新鮮だね笑 使ってみるよ笑」
同い年の友達でしかも同じゲイの子と
話す機会がなかったので本当に嬉しくて
無邪気に他愛もない話をずっとしていた。
「ハルキ」くんと話してたり
周りのスタッフの人を見てて
あまり外見を気にするタイプでは
なかったのだが
みんな自分が良く見えるように
綺麗にしてるので
自分の美意識の低さに恥ずかしさを覚えた僕は
とりあえず髪の毛を茶色に染めることに決めた。
「あのー、このあと美容室に
行ってきてもいいでしょうか?
少しでも自分を変えてみたくて。」
「あー…それもいいかもね、
プロフィールの更新は
そんな大変じゃないし行ってきな、
また新人の子も入るみたいだから
一緒に撮影するいいタイミングだし」
「ありがとうございます」
僕は駅の近くにあるチェーン店の
美容室に急いで入り
髪の毛を茶色に染めてもらった。
根暗な僕の印象は
少しは変われたかと思う。
当時
声楽をおそわっていて
先生から太るように徹底されていた僕は
色々抵抗をしながらも
60kgという体重まで落としていたが
163cmという小柄な身長のため
それなりにムチっとした体型である。
周りにはスラッとした人ばかりのため
自分がこの待機室にいることに
少し恥ずかしい気持ちになっていた。
今の自分で少しでもよく見えるように
指名が一本でももらえるように頑張ろうと
そう考える僕、
事務所に帰るまで少し時間もあったので
ご飯を食べようかと考える。
(お金も無駄に使えないしコンビニも少し割高だしな、、)
そんな事を考えながら高田馬場をうろついていると
1軒の個人経営の立ち食いそば屋を見つけた
(他人丼290円)
中に入るとフィリピン系の女の人と
50代くらいの男の人が2人で経営してるようだ
「すみません、他人丼を一つ」
垢抜けない僕なりに
なれた雰囲気で言おうと必死の注文だ。
「あいよ」
今思うと50代のおじさんは
全部見透かしてたと思う。
「はい、他人丼ね。290円…どうも」
この時の他人丼の味は今でも忘れない。
お店はもう潰れてしまったが僕にとっての
第二のおふくろの味。
こま切れの豚肉と
薄く切った玉ねぎに
甘辛くしたたれに
親子丼の要領で
卵をとじて丼物にしたというシンプルなものだが
手作りであったかい食べ物を食べれる喜び
そして
シンプルなワカメのみのみそ汁だが
一人で生きてくと家出をして
誰にも頼らないと強く心に決めていた中で
人の温もりを感じる食べものを食べた僕は
涙が止まらなかった。
泣きながら食べてる姿を見ても
親父さんとフィリピン風の女の人な
色々察してくれて何も言わずに
背中を向けてくれてたのを今でも覚えてる。
胸が苦しくて
全部食べきれなくなりそうだったけど
なんとか食べきった僕は
「ごちそうさまでした」と
泣きながら言うと
「兄ちゃんまた来いよ」と
力強く声をかけてくれた。
都会の人はみんな冷たいのかと勝手に思い込んでいたが江戸前ないきな人もいるんだなと
なんだか胸が熱くなり
30分くらいは公園で泣いていた。
泣きつかれた僕は
事務所に戻ると
その日は特に指名もなく
1日が終わった。
なんだか濃い一日だったが
いろんなことを経験できた一日に胸がいっぱいで
肩ひじ張っていた
思いなどは自然となくなっていた。
そして昨日と同じく
ノンケ三人組が桃鉄をしてる
葉タバコのニオイがする中で眠る。
長かった1日が終わり、
新しいプロフィール用の写真を撮りに行くことに
今日から入った新人「たつや」という同い年と
一緒に撮影しに行くことになった。




