そのまま面接 2003年3月2日
事務所に着いた僕は緊張していたが
「オーシャンズレッド」の
入店の手続きをしていく
刺激などを感じるまもなく
受け入れることで必死な一日。
高田馬場 の7番出口で
「望月ハヤト」と出会ってから
なんともぎこちない会話が続き
「今日は雨が降りそうだね」と
よくある天気の話などをしてその場を濁していた。
しばらく住宅街を歩いていると
マンションの一室に通された
「ここがうちの事務所だよ」と言われたのは
2LDKのマンションで
ベットが一つ置いた部屋に通されて
簡易的な机には
書類のようなものが置いてあった。
「お店の名前はオーシャンズレッドっていうんだけどこのあたりじゃそれなりに有名な店なんだよ?」と
18歳の僕にはよくわからないマウントを取られたが
彼の言うことを信じることにした。
書類には
身長、体重、年齢
どんなプレイができて
タチやウケはどっちなのか
アナルプレイやSMプレイが可能なのか
相手の家で泊まったりはできるのか
など
履歴書というよりは
どういったプレイができるのかを
知っておくための書類のようで
この紙をもとに
ホームページのスタッフ紹介のページを作るらしい
「…ゲイでウケの子なんだね、これでよし…と」
「…あ、源氏名はどうする?」
源氏名とは簡単に言うと
芸名のようなもののようで
とりあえず「スバル」という
名前にしておいた。
噂ではスカウトマンと
プレイしなくてはならないと聞いていたが
垢抜けない僕の見た目や
緊張が伝わっていたのと
仲良くなってから聞いた話では
そもそも「望月ハヤト」の
タイプではなかったようで
プレイなどはなく
そのまま売り専で働けることとなり
面接合格で終わった。
面接の部屋から出て
リビングにあたるところには
パソコンが3台ほど置いてあり
お店のスタッフのシフト管理や
予約の手続きの管理をしているようで
マネージャーさんと
店長さんが3人ほど常駐していて
ひっきりなしにかかってくる
電話に忙しそうだ
「17時にあゆむくんで90分ですね、
かしこまりました。
出張でしょうか?
当店の個室になさいますか?」
バタバタしてる隣の部屋では
桃太郎電鉄をしてる3人くらいのグループもあれば
きれいにしててブランド物を
身に着けてる2人が話してたりと
多種多様な人がいて
6畳ほどの部屋に8人くらいは居たと思う。
葉タバコのニオイが充満して
部屋中灰皿で溢れた煙った部屋。
上京したての僕には
どうにもなれない異質な場所に
嫌悪感を抱いていたが
「生きていくためにはこのくらいは
耐えないと生きていけない」と
肌感覚で感じた。
「はい、スバルになりました。
今から池袋で撮影してきますね。」
そう言うと
そそくさと事務所を後にして
池袋に向かうことになった。
いわゆる夜の商売の方向けの
写真屋さんのようで
キャバ嬢やデリヘル嬢の撮影を専門にされてる人と
コネがあるようでそこで撮影することになったが
撮影も初めてのぽっちゃりな僕は
言われるがままぎこち無い撮影で
50枚ほどは撮ったろうか。
その中から6枚ほどを
見た目が悪いなりになんとか
厳選してもらい
ホームページ用の画像をUSBメモリーに
移してもらった。
「望月ハヤト」は用事があったようで
先に事務所に戻るよう言われた僕は
なんとか事務所に戻って
USBメモリーを渡したところ
明日の朝にはホームページに
アップロードしてもらえることになった。
指名が入るのかわからないし
どんな風にエッチを
すればいいのかもわからないままだが
生きてくために
何でも受け入れることに決めた。
そんな必死な僕の心とは関係ない店長さんが
ポロッと真実を話し出した。
「あ、言い忘れてたけど寮付きとは言っても後ろの待機室で雑魚寝で生活してもらうから今日はここで寝泊まりしていってね」
そう言うと店長は足早に帰っていった。
彼氏さんと予定があるようだ。
内心話が違うとは思ったものの
もう変えることも出来ない僕は
誰も知らない大人たちの中ですみっコの
場所を探し当てて
桃太郎電鉄を楽しんでいる三人組の声をBGMにして
ブランケットを借りて寝ることにした。
「もう帰るところがない。」
「ここが居場所なんだ。」
と20時くらいの
葉たばこくさい部屋の中で
何度も反復させて
今日のところは早めに寝ることにした。
生きていて
屋根があって
暖房があることに感謝をして。
早くに寝た僕は朝を迎えると
想像してた苦悩とは異なる
絶対に会うことのない
ゲイやバイの人との人間関係を
目の当たりにしていく。




