第69話「起・VS試験官」
「カニカニカニー!!!!」
「ウシウシウシー!!!!」
その号砲と共に衝撃波が轟いた。
近衛遊歩、桜愛蒼葉、流水寺導、アセンブラ、シャンフロ、と天上院咲の合計6名で挑むこととなる。
遊歩と蒼葉と導がそれぞれ口にする。
「波動色だ! 蟹は黄色! 牛は赤! 性質は何か中二病っぽい!?」
「流石にただの斧を持ってる訳じゃ無いか!」
「このモンスター、動きのテンポが良いな……! 動きが生きてるように動作がスムーズだ!」
それぞれがそれぞれの感想を言う。流石に今までのゲームの劣化版では無いらしい。
テイルズの秘奥義で言うなら、新しいアライズよりも古いグレイセスの秘奥義の方が優秀という意味で質量が伴っている、体重が重いという意味では無く、テンポが最適化されている、個人の能力と言うより、チームでのコミュニケーションが優秀である。観た目のグラフィックに騙されたら痛い目にあう。
アセンブラが分析し、シャンフロが感想を言う。
「カッコつけてるだけかもしれませんね」
「いや、こいつらは高度な技術力でかっこつけてる。最高の技術でカッコつけてる中二病は魅力が倍増する。カッコつけて〈失笑を売る〉それをネタにするようじゃ三流だぜ、何せ料理を冷ましてるんだからな! 偉い人にはそれがわかんねーんだよ!」
そのアセンブラとシャンフロの感想を聞いて、マスターⅡ天上院咲も同意する。
「そうだね、テンポは紙面には書いてないから。上っ面だけ読み上げてる猿真似じゃマネ出来ない、マネしたところで失笑になるのはそのテンポを理解してないからだよ」
新しいゲームが何故かつまらないと感じるのはこれが原因だったらしい。単純に言うと情熱、つまり熱量だ。
「気合いとかその場のノリって大事なんだな」
遊歩はそのように分析する、その状況を咲が優しく教える。
「魂の熱量が冷めてたらそれは伝達する、つまり魂込めて演じてないってことだね、アライズは、観た目という形はマグマでも、その熱量を表現し切れてない、つまりアライズは画力は勝ってるけど演出で負けてる、雰囲気やテンポ感が失笑に繋がってる、だからアレはゲームとしてダメ」
あくまで魂込めて演じていない、〈ストーリーやグラフィックではなくテンポ感、時間感覚である、生きていない〉というのは秘奥義の話では無く、ゲーム内本編、プレイヤーが操作出来る範囲のテンポ感に情熱が入っていない、または熱量が足りず、プレイヤーがマグマキャラ使ってるのに冷めてしまう、という矛盾がある。
熱いキャラなら熱い操作感や熱量が伝わるようにモーション〈演技〉を組まなければならなかった。その積み重ねである。ちなみにロードの遅さもテンポ感である。
簡単に言うと、演出やテンポ感・モーションのせいで高画質グラフィックや声優の実力が殺されてしまっている。
極端に言うと秘奥義レベルテンポ感を普通のプレイヤー操作感で表現するのが運営ゲーマーの仕事だった。求められてるハードルが過去の秘奥義レベルなのだ。あくまで理想だが。
いくらグラフィック容量が上がろうが、フレームレートが30、60、120と上がろうが、ハードの処理速度が上がろうが、金をかけようが、演出の空気感は人によるデザインだ。次回作は是非とも演出に作画カロリーという予算を割いて欲しい所である。
ゲームマスター姫と桃花は遠目からその戦闘シーンを見ている。
「まあ政治家はリアルタイム制しか〈できない〉から、それが解らねーんだろうな。桃花なら解るだろ?」
桃花は動画を作ったことがある、プロの音楽に自分の絵が負けている、という感覚も経験したこともあるし。今回の場合は〈時間操作〉だ、という現実改変が出来ないとテンポ感は操作出来ない。
「そうだね、政治家は真実や目を背けたいような事実を述べ、記録を残す能力はあっても。その場の空気感全体を支配する事は出来ない。これは体質が〈時空〉じゃないと出来ない。同じ文章でも熱量を上げ下げするだけなら出来るかもしれないけど。魂を込めるような声の声優レベルは出来ない。魅入る発声はたぶん政治家は練習してない。やり過ごす、場を流す技術しか上げてない。無関心の人の心を掴む声質じゃ無い。だって公務員だからそんな努力しなくてもお金は自然と入ってくるから、魂を込める意味すら無く、生きられる、声優はそれが出来ないと食えないんだよ。演出もしかり」
長々と解説したが、これが豊穣のミノタウロスと、凶荒のカルキノスの波動色の性質である。
元滅種の分類ではあるが、中々粋な種族である、流石試験官。つまり三流以上の〈魅力〉がある。一声でコレである。
……と。本格的な戦闘の前に、放課後クラブ、咲以外の5名の装備武器くらいは確認しておきたいところである。




