第50話「承・この世界の考察」
GM姫と桃花先生が、この世界の考察を初めた。
「そういえば意図してないものが動いてるなあ~、送信・受信・自信、爪切り・ヒゲ剃り・ゴミ捨て場の決戦……仕舞いには概念系の、セミの抜け殻まで来た……」
確かにGM姫が意図していない物まで動いているのは気になる。ここらへんは推理パートなのでうみねこ見た方が思考しやすいかもしれない。
「切ったものも使える、ってのが重要なキーワード何じゃろうな。シュレッダーにかけた絵も紙も使えるって事じゃろうし……」
「ただまあ、概念系……例え話のセミの1週間の寿命を考えると、その前は終齢幼虫で、セミにサナギは無い。不完全変態らしいよ?」
確かにセミの抜け殻の方が、成虫になったセミ本体よりも寿命は長いかもしれない。そもそも命がない。
ここは爪を切った後の爪の扱いと似ている。ただこの場合、概念系の爪を切った痕みたいな感じなので、全く痕跡が残らない。
「内線電話、部屋が内側からしか開かない。ここらへんでしょうね」
そこまで視て、GM姫は現在の状況の確認をする、主に場所の確認のためだ。
「とりあえずさ、最果ての軍勢が保管してる、エレメンタルワールド1個、VR機テンジョウ2個、ミラーサーバー1個は、なんか気分的にアルテマ島、1970年代のアメリカ大陸に有る気分だけどさ……概念や気分が有効なら、それは内側か外側か……そこは決めておいたほうが良いんじゃないか?」
……そこまで桃花は聞いてから、深く考察する。
「別に普通のバックアップなら内側で良いけど、この場合のミラーサーバーに関しては、内側のバックアップが不可能だった場合のセルフイメージのバックアップってことでしょ? ……メインサーバー、プラス、バックアップデバイスは内側……。ならこのミラーサーバーは外側のはずだ」
GM姫も思考する。
「ふーん……、でもドアの世界って基本内側だし……。外側ってことはドアの世界の外側って事になるのか?」
「まあそうしなきゃセルフイメージのバックアップの意味ないしね……」
これは法則というより、確定した真実のプラス保証に近い。
「切ったものはまだちょっと解ってないけど……じゃあこうだな。プラス保証、+最果ての軍勢のアルテマ島の博物館、そこで保管しているエレメンタルワールド1個、VR機テンジョウ2個、ミラーサーバー1個は、ドアの世界の外側にある+ こうじゃな」
「つまり手放した物も、思考の残骸も使える……ってことかー」
「ん~たぶんそこら辺は内界では言語化してないけど、外界で言語化説明を求められたときに困って固定概念が言語化したんじゃ無いかな? 感染呪術のど真ん中だってAIが言ってるぞ?」
感染呪術について。
かつて一つの塊だったもの、あるいは一度でも接触したものは、物理的に離れ離れになっても永遠に影響し合い続ける。
〈一度でもペアリングしたBluetooth機器のようなもの〉です。物理的に遠く離れても見えない電波〈魔力〉で繋がり続けていて、片方のスイッチ〈抜け殻〉を押せばもう片方〈本体〉も勝手に起動してしまう。
桃花が感染呪術のルールを聞いて、言語化出来ないモヤモヤを理解出来た。
「あーなるほど。この場合、魂や肉体が触れた物……それこそ思考の最小単位の想子なども本体から切り離された場合。それも互いに影響し合う……だけどそんなルールは書いてないから、外界がルールで固定化したわけか……」
「内界にとってはたぶんそう。あと感染呪術と全く同じ現象が、量子力学の量子のもつれの科学にあり。片方の状態を「観測」して確定させた瞬間、もう片方の状態もタイムラグ・ゼロで一瞬にして確定するらしい、光速すら超えるらしい……が、アインシュタインはオカルトだ! と言ってたらしい」
「あ……あちゃーじゃあこの〈抜け殻〉の言語化も量子力学が基準にして勝手に話が進んでるのか……」
元の言語化が極端に少ないのは仕方ないにしても、世界樹クロニクルの枝葉がよく伸びていることだけは解った。
「……〈驕り〉の枝葉か……。辞書では驕りって何て書いてあるの?」
〇〇だから驕りである、と言う文言が別の外界で何度か目撃された、それが偶然じゃ無く意図的なのだとしたら、解けるように、理解して欲しいように驕りという漢字を使ったことになる。未来を変えるのは驕り、若い頃のよくある驕り、恋愛に関する驕り、外界の重要な部分で3箇所も重なっていると流石に察する事が出来る。
「驕りとは、得意になってたかぶること。思い上がり。ぜいたくをすること。人にごちそうすること。ふるまい。……だな」
こういう持論を展開されるときは不純物の無い辞書が一番正確に意図をくみ取れる。他人の力説が、帰ってノイズになるからだ。
桃花先生は国語は不得意なのでこれからも学ばなければならない、別に咲が言語化が得意になったと言っても知らない漢字はやはり勉強して習熟しなければならない。
「……なるほど、選んだ動機が〈誰でもよかった〉だとルーレット、つまり無差別や気まぐれ、模写した対象が何となく良いと思ったからで〈選ばれる〉とマイナスの感情……負の連鎖だと〈驕り〉に繋がるって訳か……」
「で、〈誰でもない〉だと唯一無二……この人じゃ無いと出来ないと思ったから……と。〈選ばれる〉訳じゃな」
そう、たぶんそうなのだ。何となく、気分で無差別に模写対象を選ぶと〈誰でもよかった〉になる。今回はそこから一歩抜け出さなければならない。
「えーっと……今第1章の絵コンテあがってるよね? その場合で話を断られた時ってどういう感情になればいいの?」
と、桃花は行き場の無い感情に包まれた。
「ん~、誰でも良いわけでは無い、状態で選ばれた人には責任が伴う訳だから、たぶん中途半端な人を選ぶと最終的に廻り巡って困るのは上じゃなくて下の自分になる……んだと思う」
「……ふーんじゃあ誰でも皆がOK出す訳じゃ無いんだ~……なんか複雑」
「相手側の状況や状態もあるんじゃないかな?」
「ふむ、……わかった、まあできる範囲でやるしかないか」
で、周りを見渡して姫は桃花に助言をする、そう、この場合珍しくも、この世界を統べる神として。
「ん~……お前の心情を読み取ると。自分の手で片付けたくて、むしろ責任を全部自分で背負おうとしてるけど、それだとそれこそ周りに居る人達の意味が無くなる。だから連帯責任とかリスク分散とも微妙に違うが、もっと周りに頼って良いと思うぞ。もちろん良い意味で他人に任せるという意味じゃ、それの責任を全部お前が背負い込むことは無い。お前の場合はもっと分散した方が良い、むしろもっとしろ。〈手放したモノも使える・勝手に動く〉を利用した方が良い。たぶんお前が思っている以上に、皆お前の手助けをしたがっているぞ」
「……その根拠は?」
「感だ、根拠などない、が、……見てたら解る」
自称、自由の悪神はそう言った。




