第5話「起・左右方チーム」
エレメンタルワールドⅡ、ドアの世界、第0000号室。
オーバーリミッツは真城和季を呼んだ。
「……まったく、本当に弱くなったな、桃花は、これじゃ本末転倒じゃないか」
「弱くなったんじゃない、大切な仲間が増えたのよ」
リミッツは、和季に対して強く言った。
桃花はリアルタイムで勝手に動き続ける恐怖に怯えていた、体調は良くなったが、もはや心がボロボロだった。
「だからお願い、チェンに、警告を解いてちょうだい」
「……ま、お前達との仲だ、良いだろう。命拾いしたな日本国よ……桃花が体調改善してたらこうはなっていない」
「だがVR機『テンジョウ』を返すのはナシだ。それと桃花、自分の力の使い方、ちゃんと考えろ。心が制御出来ないのなら、まず覚悟しろ、その力は生むことも出来るし、殺すことも出来るという覚悟をな……それを自覚してから使え。お前に能力なんていらない」
そう言ってから真城和季は最果ての5帝に伝令を下す。
「俺だ、チェンの能力を解除する。そして5人でバランスを保て、いいか、これは命令だ」
『了解リーダー』
こうして、湘南桃花は全体論ストレスから解放された。
集団的ネット交流より、FX為替通貨より、自分自身の力の方がよっぽどヤバく、ストレスが強かった事を、この時桃花は始めて自覚した。
仕事とを終えた真城和季はプライベートモードに切り替える。
「一部始終はみてたが、だいぶ無茶してたな、これでお前の重荷は何も無い、今日は1日中休んで手を使わないことをオススメするよ。文字数0だ」
「あぁ、……ごめん、迷惑かけたね」
桃花は和季に素直に感謝する。
「気にするな、俺はそういう存在だし、そういう仕事だ、よく我慢した、大したもんだよ、ちゃんと休め」
この状態になってから、全体論を知ってから何度目だろう、桃花は自分の力にストレスを感じ、疲れ切って眠ってしまった。
◇
今現在歴2025年11月1日〈土〉12時30分。草原。
左方チーム。拠点から左方向へ草原を歩き真っ直ぐ進んで30分の所。
不動武、不動文、アセンブラ、レジェンドマンはしばらく歩いた後、地形調査をする。天候は小雨。
「よし、ここらで空中から周りをぐるっと見渡してみる」
レジェンドマンは空を飛べるのでまずは高く、遠くを見渡すところから始める。
「頼んだ」
「援護は任せろ!」
最果ての軍勢、軍団長と副軍団長がフォローに入る。
「とりあえず、電波の行き来は出来る世界観、法則性みたいですね。良かった、ステータス画面らしき物もエレメンタルワールドⅠと同じです、が、まだ何も映りません」
放課後クラブのアセンブラはまずこの地で電波、即ち無線や電磁波は通るのかを確認していた。
レジェンドマンは上空100メートルから目視で前後左右を確認する。
目視で確認出来るのは半径35キロメートルほどである。
前方、年期の入った森、梅雨なのか雨が降っている。雷鳴が轟いている。
後方、さっきまで歩いて来た場所なので大型の武装した狸が雑草を食っているだけで敵意無し。
右方、何か空を飛ぶデカイ竜が谷の底へ威嚇しながら向かっていった。あっちは信条戦空達の自由行動組の方角だ、何かあったのか解らない。
左方、街を発見。牧場か何かか? だが何か悲鳴のような陰湿な声色の声が聞こえる、あれは市民の悲鳴だ。奴隷用の人間牧場に見える、リーダー格はドラゴンのようだ、何の竜種なのかは判別できないが二足歩行だ。
レジェンドマンは目視で見るだけ観て、下の仲間へ報告しに行く。
「どうだった?」
「ふむ、大自然の嵐もあるが、人や怪物が居ても、治安は悪い土地に拠点を設置した可能性が高い。正義の味方としては真っ先にあの人間牧場を壊滅させたい所だが……独断行動をするには皆の許可がいるな……」
ちなみにこの左方チームには、竜種に攻撃すると国家が動くことをまだ知らない。
「アセンブラ、皆に連絡出来ないか?」
「ちょっと待って、ステータスウインドウは開けるけど。ソースそのものがプログラミングされてない、カラッポなんだ。ソースそのものは作れるけど、ウインドウ内のネットが繋がっていない。作れるけど繋がらないんだ」
「ふむ、つまり掲示板的な連絡は現状取れないということか……」
レジェンドマンは困り果てる、恐らく、彼の場合ルーキーな竜種ぐらい瞬殺できるが。それでどうなるか未知数だ。
「連絡が取れない以上、まずは食料の確保が先だな。忘れてるかもしれないが、デジタル世界で腹は空かなかったが。ここでは腹も喉も渇く。およそ3時間おきに水分や食糧補給は必須だ」
ということはまず水かいる、何なら貯水施設や水筒などもだ。
不動武がまず語る。
「では前方の雨森へ向かおう。食糧を調達してからでないと何より〈腹が減っては戦は出来ない〉……だからな」
レジェンドマンは口惜しいが、まず何より仲間達の無事が第一だ。
「……そうだな、下手にヤブを突いて蛇が出てきたら、真っ先にドアの世界が攻撃される。それは最悪のシナリオだ。攻撃するにしても準備がいる」
目と鼻の先に攻撃対象があるとなると立地が悪い。
個人戦ではなく集団戦サバイバルというのが今回の難しい所だった。
◇
右方チーム、同時刻、草原。
ラフティーヌ、バハムート、桜愛蒼葉、今泉速人。食料・村の発見。
ラフティーヌとバハムートが何やら〈内輪もめ〉をしていた。
「蒼葉さん、速人くん、気にしないでちょうだい。こっちは賢術系と未覚系の第2位を動かすから」
第2位となると、ライダーとトールが繰り下がりで別件に当たるということだろう。急に今の任務を放り投げることは出来ない。
能力の詳細を記載してもいいが、ほぼ蛇足なのでここでは言及しない。
そうして拠点から右方向へ歩いていくと、第1の村を発見。村は石壁になっており、武装した人間が警戒にあたっている風だった。というか万里の長城みたいに壁が長々と続いている……。
速人は不自然な雰囲気を感じた。
「どういうことだ? まるで俺達が歩いているこの場所が国境線みたな厳重さだぞ?」
蒼葉が「そうなんじゃない?」と軽口を叩く。
「実際国境線と国境線のど真ん中の中央に拠点があったりしてw」
だとしたらドアの世界の位置関係が最初から最悪になるのですが……。
相手が人間ということもあり、まず話し合いとしてど真ん中の正門から話しかけに行くことにする。
当然、止められる。
「止まれ、お前らどこから来た? どこ所属の者だ」
選択肢としては、正直に話すか、誤魔化すか、になる。
ラフティーヌとバハムートが進行すると話が全部終わってしまうのでフォローに徹して。速人と蒼葉が進行していいよ、という風になった。
まず蒼葉から。
「こんにちは! 僕、桜愛蒼葉! 14歳! ギルド放課後クラブ所属だよ!」
「放課後クラブ? それは何だ?」
当然、話が通じない。
速人が政治家の息子らしく、まず交渉に持ち込む。最初から情報をタダ売りするようなことはしない。
「まて、こっちは情報を言った。今度はそちらの番だ。ここはどこだ? お前らはどこ所属だ?」
武装した人間の騎士団2人はお互いの顔を見合わせる。それはもう不思議そうに。
「俺達は〈自由解放軍〉だ、ソコは〈竜王国〉の〈自然保護区〉だぞ?」
蒼葉はすっとんきょうな顔で「そこって?」と聞く。
「お前らが今踏んでいるその土地、地面だ。その土地は古来より竜王国の所有物だ、そこに居るってことは、お前ら全員竜王国の〈所有物〉ってことになる」
わーお、面倒な場所に異世界召喚されている。




