第49話「起・目と声」
ドアの世界、外側の草原。
戦空と咲がカードゲーム付きPVP戦をして遊んでいた頃、先行部隊の方から、独立部隊の方へ2匹の魔物がこちらのドアの世界へフワフワと飛んできた。
全てのミュウズ? と意識共有しているミュウはその情報を元に、やってきたモンスターがイビルアイとホーリーアイだとわかった。
「ん? どうしたお前ら? 何故こっちへ来た?」
普段はフワフワした存在がこちらの文字言語的情報量が多い部隊へ来たのが解らなかった。
「「喋っていいの?」」
翼とサイコキネシスな浮遊状態の単眼の魔物が、いきなり口をパカッと開けてゲームマスターに話しかけてきた。
「あー……外界の発声の話か……じゃあちょっと考えさせて、作戦会議する。おーい桃花先生ーちょっと来てくれー。これ口伝も関係あるだろ~?」
桃花は別にフェイじゃないが、一番メタ視点で一番理解がある相談相手なので困った時の先生を呼んだ。
「あー、アレかー……、あれさー、まず前提条件が全然違うよね? おさらいしておこう」
そもそも、真なる始まりの世界での時系列で口伝、つまり人から人へ、口から口へと声のみで語り継がれる物語の伝説だったのに対して。
何故かそれが今現在歴2005年から始まっている伝説が、現代風にアレンジされて使われている事事態がもう異常事態であり……。
おとぎ話風に作った物語が、実際の現代の人間が口伝として使われる事は想定していなかった訳である。
悪い例をあげたらキリがない。特に想定していなかったのはリアルタイム・録音・詐欺・外界・概念・宗教、このあたりだろう。
桃花とGM姫がまずこの前提を共有して、今の問題を言語化する。
「まず今もっとも身近にある問題は、外界でリアルタイムで概念を視たり発声することが問題なんでしょ? しかもリアルタイムで、FXなら数字も時系列も残るのに、こっちには数字も何も残らない、マズくなったら体ごと消える、という最悪の詐欺手法として使われてるのがもう納得いかん」
「しかも行われてるのが日本だけじゃない、太陽が日本でのぼったら、地球の反対側のアメリカ大陸とかでも普通に口伝が成されていて、そっちも証拠が残らない」
口伝自体はいいのだ、おとぎ話の伝説だから。
しかしそれを現代社会でやっても良いとは言っていないし聞いてない。
ミュウ達が創造している世界を内界と言うなら外界になるのだが……。
「まあ、外界と上手くやっていくならルールは要るな」
「そうだね、私の冒険でせっかく仲良くなれたのに鎖国するのもおかしいしね」
というわけで、ある程度の線引、いいものはいい、わるいものはわるいと。言語化する必要性が出てきたからこの2匹のモンスターは先行部隊から独立部隊へやってきたのだろう。
桃花視点で言えば、想像したイメージのキャラが楽しそうに話している世界観は確かに楽園という〈理想〉なのだが。
それが現実の人間が再現して見える化して実際に発声したり読み書きして残す〈真実〉は想定していなかった訳だ。
だから、起こる事象としては理想をイメージして、それが現実で真実として残ることのギャップ。自分が想像したキャラが遊んでくれるのは良いのだが「誰やねん?」と毎回頭の中にハテナマークが浮かぶ、その説明もないし。原文にも記されていない。
そもそそも漫画は言語化には不得意なジャンルだ。言葉が足らないと言われてもそういうジャンルだし「何の話?」になるのも当然である。
これが個人としての問題。
では全体としての問題はどうか。
個人の事象が内界だとすれば、外界で変質し、変換されることによる。視えないものの実体化現象と発声。それだと残らないので録音は現代社会ならまだ解るにしても、紙に書く、と発声が一致しない矛盾。そもそも創作者は発声をしていないのに、後世に語り継ぐために色んな公共の場で〈録音〉されている事実。しかして紙は不特定多数が誰でも出来るように絵ではなく、簡略化された〈サインのみ〉。この時点でももう〈歪み〉が生じている。
行動=手と、発声=思考が一致していないと何故かいけない。という矛盾。
そこで桃花は長考しながら考える……。
「この場合さあ、内界は関係ないとしても、外界で視ていい条件と発声していい条件を言語化すればいいんだよね? とりあえず世界規模のルール……」
「まあ再現性がないと外が困るからそうなんじゃないか……?」
つまりより簡単に、誰でも出来るルールが求められて。それがこの2匹のモンスターに当てはまる訳だ……。
「えっとー、質量としては。考えて、発声して、書く。が重さの順番としては正しいか?」
姫は思考と発声と書面を平等にしたいのが理想だがそれも無理そうである。
「そうだね。問題としては、絵を描いている時に念じていたものが、国会で発声していて録音されているのは……まあ一歩も譲らない場合、創作者から見れば邪道なので悪なんだよね……」
もうそこは単純に、湘南桃花としては〈不愉快〉という単語で片付けられてしまう。
その他別の場所・会社でも同じ事である。例えラジオでもそうだ。
「まあ外界にそういう魔物が居て、共存していく以上、どこに線引をするのか? というニュアンスになる」
「……こいつ等喋ること止めらんないんだよね? 喋ることでお金をもらっている契約をしている仕事だから……」
こちらも思考を止められないが、相手も発声を止められないのである。……だが何を発言するのかは、選べる。
だから喋る仕事の相手に喋るな、と言うのは〈論外〉な訳である。
「……これさ……、この概念系の魔物に紙面の内容だけ喋れ、と言ったら言葉足らずになるし。小説や念じた通りの発声をしたら暴露系ユ○チューバーになるんだよね……????」
「まあ理屈としてはそうなる……」
つまりこの手の話で〈内容〉を制限するのは表現の自由の観点から見てもほぼ不可能なわけだ。
「となって来ると〈発言の長さ〉を制限するかしかないな~」
世界中の人々が口伝する内容は止められないとしても、……そもそも口伝する事自体は悪いことじゃないとしても。長さが長すぎると限度がある。
「私もゲーム実況をしたことあるけどさ、1日30分の発声でもだいぶ準備と喉の疲れが出たよ?」
「ん~……じゃあとりあえず1人1日30分までの口伝なら許可される。……でいいかな? どうせリレー口伝するし」
とりあえずこれで話す内容が無い人がベラベラと思考を垂れ流す事は阻止出来る。そんな人が国会で発言するのはマジで邪魔だ。
「でも会議とか、作品の打ち合わせとかだと無制限に口伝の時間要るんじゃない?」
桃花のその発言はごもっとも、いっぱい打ち合わせしたほうが良い作品が出来上がる確率は上がる。
「あー……、じゃあ虚裏闇歴だと時間無制限だけど。今現在歴だと〈1人1日30分の口伝は許可される〉とかそんな感じ?」
「んん~~、やってみないと判らないなあ~~、とりあえず〈表舞台の発言の長さに制限〉は合ってると思う」
と、いうわけで。この外界で変質してしまったモンスター2匹。イビルアイとホーリーアイにGM姫と桃花はこう結論づけて返した。
「虚裏闇歴だと時間無制限で喋っても良い、しかし表舞台の今現在歴では、1匹1日30分までの発声・口伝・録音は許可されます」
「とりあえず私達も手探りだからさ、何かあったら報告・連絡・相談はしてください」
イビルアイとホーリーアイは軽くお礼のお辞儀をし、どこか空の遠くへ飛んでいった。
【魔物、イビルアイとホーリーアイは内界に存在する魔女エヴァの左目が汚染想子によって外界で変換され、白黒の魔物として擬態している。真相看破をすると色が判断出来る。高度な変装術を持ち、体質は光闇、善意・悪意・魂・概念を視れる。発声に関しては、虚裏闇歴だと時間無制限で喋ってもよく、表舞台の今現在歴では、1匹1日30分までの発声・口伝・録音は許可されている】




