第48話「結・桃花先生の特別授業」
ドアの世界、桃花先生の教室。
今回は約12年前の再現というか、ほとんど〈応用編〉のような動きが求められるので。知っている古参にとっては既に知っていてもどかしい授業になるかもしれないが。
実際に12年前に居なかった新人国会議員とか、本当に12歳になったピッチピチの学生の作家志望者も対象になっているので完全に吸血鬼大戦後の新参向けの授業になる。
ゲーム進行ということでゲームマスター天上院姫とその戦場を実際に経験した歴史教師、湘南桃花先生が。
最果ての軍勢の超能力者第1位、バイタル、ラフティーヌ、チェン、バレッサ、バハムートも授業に呼ぶ。桃花からしたら彼等5人も能力こそ凄いが実戦経験の少ない新参なのだ。
そして、ついでに。この波の流れに乗り遅れないように本当の新参。
天上院中学校の生徒。
ウオヤ、カナイ、カミムシ、タネドリ、イヌゾウ、アセンブラ、シャンフロ、桜愛蒼葉、に今回の局面での乗り切り方を桃花自らが言語化して伝授するというのが本当の目的である。
「さて、何から話そうかね~……もっとも、何話しても上級者には物足りない授業になりそうだけど……」
最近、言語化が主流になって意識高い系に合わせるのが当たり前な環境になってしまっているが。本当は少年誌向けに理解しやすくするのが作家にとって当たり前なのだが……いかんせん桃花の対戦相手が年上とか頭の硬い国会議員になりがちなのでそっちに合わせようとしてしまうのは。完全に読者も人気も置いてきぼりにしてしまう愚行である。
「じゃあ最初は歴史教師らしく、吸血鬼大戦の時に起こった進行を歴史形式で教えれば良いんじゃないか?」
GM姫はまずはおさらいから、と言う。
「そうだね。じゃあ長話するよ」
そう桃花先生は一泊置いてから、2009年から2010年あたりの状況を教えることにした。
「いや、言うって言っても、シナリオ、ネーム、作画、動画編集っていう31ページの読み切り漫画形式で進行したってだけなんだけどね? 問題は、読み切り形式にしよう! って意識する前の段階。これは連載なんだって意識して描いちゃって全然話を進めても終わらなくて、約50ページほど漫画を描いた後に、友人に相談した結果、全ボツにした結果、読み切り形式で描き直してみよう、という結果論になったわけね。最初は我武者羅に描いたわけよ。今の状況に置き換えると、今EWⅡがプロット・絵コンテ? で、第8話まで行ってるけど、12ページかける第8話だから、96ページの絵コンテ枚数だけど、これがある日突然いきなり全ボツなる感じ。だから古参は自身の進行作品を概念作品とか、プロットの段階での進行にはかなり慎重になってるはずだよ? あなた達新参は、まずこの危険予知が、経験したことがない無知ゆえに知らないの、そこが一番危ない」
まずは最初に桃花先生が気にしているのが、先行部隊の特に小説部隊が、先走りすぎてロジックが急に破綻する事を危険視している。これはその新人作家がプロットを作らないで本編を作り慣れているか、そもそもプロットを書いたことがない経験不足からなる。
「例えるなら、マラソン。集団マラソンでコースの先頭を我一番に走って鼻を伸ばしていたら、マラソンコースが中盤から一気に書き換わるの。結果、先頭のマラソン選手はその段階から軌道修正をする羽目になる」
GM姫は桃花の話に補足する。
「ちなみに今は、桃花が優しいから軌道修正の仕方をこれから説明するが。当時は本当に当本人は知らず存ぜぬだったので、自分で何でも自己責任でやるしか無かった。つまり完全に個人技な?」
最果ての軍勢のロジックがあれば、どうとでの流れをコントロールできるかもしれないが。それは執筆による技術力があればの話だ。本当の12歳の作家志望者だったらそんな事できない。いや、出来るはずがない。
ウオヤはとりあえずわけも分からず質問する。
「とりあえずどう書けば良いんですか?」
桃花もここは、本当に進行方法を知らない初心者に教えるように言う。
「まずはコンパスかな。東西南北が書いてあるコンパスを手に入れること。あとは太陽の位置。私、湘南桃花が要る限り、私のいる方向は常に南になるから、そのコンパスの南の方角に進行すれば、とりあえず訳の判らん方向に行くことは無くなる」
「当時は湘南桃花居なかったからコンパスは南も指し示さなかったけどな~」
桃花が回答をいい、姫が当時の苦労話をする。
「ちなみにもっと昔だと、たぶん星座や四季が指針だったともう。オリオン12星座とか居たし。夜の星座しか道しるべ無かったかもね。私も知らないけど」
桃花は当然知らないし、姫は知っているが無自覚だったので他人の気苦労を知る術は持たない。
「今は天上院咲が冒険をしまくって、言語化が得意になったから、結構あちこちに数字や色彩をあちこちに散りばめていると思うぞ、最深部に近くなるほど数字と色彩の数は多くなってるはずだ、理解度が上がっているからな」
GM姫は、咲のダンジョンを冒険するなら。特に言語化の初心者だったらダンジョンとして潜るのは全然アリだと言っている。
「で、さらっと今回の冒険が〈応用編〉と言っているのが気になるところだと思うけど。まずこの無自覚漫画制作と、自覚あり言語化制作が合体している。ついでに概念系の妄想も矛盾無く拾うクセまでついている……簡単に言うと雑念まで伏線回収してるね。面白さそっちのけで」
「まあ、これは意識している状態での悪手じゃろうな……面白さ第1主義じゃないものは基本雑念じゃ」
見える化した障壁とも言えるが、本当は雑念は気持ち切り替えて切り捨てるか、忘却して忘れたほうがいい。言語化されていない概念系の話だ。
さらっと周りを見た限り、知ってる古参はそのあたりを気づいている。そして新参は気づけない。これが大きな差である。そもそも察することも出来ないし気付けないのだ。
これを普通のストーリーに落とし込む時点で、かなり無茶をしていると感じる古参も発見した、そういう感情を抱いているということだ。2009年、吸血鬼大戦の前日を知っているなら特にだ。
「まあ何にせよ、約12年前の出来事じゃからしかたないよ。語り継ぐしかない」
「そうだね、教えるしか無いよここは。あ、ついでに言うと数字はアテにならないよ?」
桃花は数字の取り扱い注意に言及する。
「とりあえずアイテムの価格の数字は全くアテにならないから! うまく言えないけどマジでアテにならないからやめたほうがいい!」
「本人がその価格だと信じてても、価格が超上昇したり超下落したり、その割には全然本編で使わない、という現象が起こるぞ、まじで思考の無駄だと思う」
これはステータスやレベルにも言える、国と国の通過が違う、ドルと円の為替関係になったらもう難易度はうなぎ上がりだ。
これで初心者が何度書くのを辞めたか想像に固くない、察するだけでもついて行けないのが目に見えているからだ。
「……まあシャンフロは解ってるだろうが……」
今回は初心者講座なので居るけどシャンフロは度外視。
バイタルが社会人としての進行方法を聞く。
「現実世界の社会人はどう動けばいいんだ? 知らないの前提で」
桃花が解説する。
「うん、さっきもいった通り急にマラソンコースが変わるんだ。まあ簡単に言うと完成原稿はコース不変動率0%、ネームはコース不変動率50%、プロットはコース不変動率80%とか覚えて注視して置けばいい、つまり、かなりの確率でコース変わるんだよ。そもそもAパターンとBパターンって書いてるし……全部変わる時もある。それが、咲ちゃんのダンジョンとは全然違う所だね」
吸血鬼大戦の時は天然大自然の猛威で済んだはずが、今度は咲のダンジョンを経て、意図的な攻撃的な変動の仕方をコースがする。と思えばいい。つまりかなり鋭い。
「咲の時は例え未来視をしたとしても、1日単位で、速攻でその未来が訪れる速さがあったが。今度は全くの逆。例えば今の第8話のプロットを今未来視して知ってキャラを動かすと、訪れる未来は現実世界で約8ヶ月後だと予測できる。もの凄く遅く、もの凄く重いと思えばいい」
GM姫はそのように解説する。幸い今回はカラー漫画なので動画編集という演出や音楽、時間、テンポ感などは気にしなくていいが。それでも先走るにしてはかなり難しいと思う。
「……まあ、初心者は無難に完成ネームまで待つのが一番賢いかもしれない……冒険するなら話は別じゃが」
「安全な冒険を望んで面白いか? というとまあ微妙なところだけどね」
で、ちょっと噛じっている、というかかなり噛じっているシャンフロが質問をしてきた。
「ペン……つうか剣の軌道技術はどう言語化するんだ?」
そこは桃花先生も無自覚で通ってきた道なので専門外だった
「……、正直ソ○ドアート・オンライの型で良いと思うよ? 絵に対して絵の変換なら解るけど、絵に対して言語化の剣の振り方は私知らないからさ、そこは先人の剣士を真似して良いとおもう」
「なるほど……GM達運営が知らなくてもアインクラッド流なら基本通る訳ね……解った」
そこは天上院咲も二刀流を目標としてるし問題ないし、たぶん軌道修正出来るだろう……。
カナイは、それでも先頭で走りたい時の立ち回りを聞く。桃花はそれに対しても丁寧に説明する。
「確かに、今までは迷わない立ち回り方の説明だったけど。先頭部隊なら迷うの前提での立ち回りになるから……基本自己責任でたぶん自由度高いんじゃないかな?」
「まあドコを好き勝手走ってもいいけど、帰り道だけは確保したほうが良いかな? この場合ドアの世界だからドアや境界線があれば簡単に帰れるようにはなってるかもしれないけど……もしくは中間拠点。長距離走は疲れるから」
とりあえず、現状のプロット、第1原稿がちょうど区切りの良い第1章まで終わった後のプロット打ち合わせと言う名の授業は一回終わった。




