第46話「承・出来レース」
「ねえ姫ちゃん、これからのゲーム進行について相談したいんだけど~」
桃花はGM姫に普通の相談を持ちかけた、別に神速とかスピード関係の重力はここでは発生していない。
「なんじゃ? 虚裏闇歴で雑談しないってことは全体ミーティングか?」
マジで言えないことは虚裏闇歴、舞台裏で話し合っているのでここで話すということは〈物語限定の進行相談〉ということがうかがえる。
「咲ちゃんも感づいてるところだけど、プロットの進行が予想以上に長いことと。それに伴いネームと完成原稿の進行が遅い現象についてなんだけど」
どれか一極集中をすればそこの力加減は落ちるし、ここはどう観たってバランスは取れない。
「このままキリの良いオチまでプロットを描ききってしまうか。描ききった場合、第1章とか〇〇編とかどうするのか? プロット=絵コンテが出来てる状態になるので、その場合〈出来レース〉が発生するのでその処理進行をどうするのか? とか……」
桃花が一番懸念しているのは〈出来レース〉だ。前もって示し合わせて、勝者を決めて形だけ行うレース。
咲が登場してからというもの、ほとんどリアルタイム制の〈その場しのぎ?〉だった、それが再び予め決められた内容をなぞるということは、約12年前の戦術に戻るということに成る。別に漫画制作という意味ではこちらが〈王道〉で、咲の道は邪道とも言えないので〈覇道〉な感じもする。
で、桃花も咲も心配しているのはこの出来レースの時の〈全体論を知らない〉のだ、何が起こるかは、ほとんど古参しか知らない。そしてGM姫もある意味最古参ではあるが無自覚だったので結局知らない。なので、少なくとも8p以上の漫画の未来が解っている〈未来予知〉出来る状況で人々が、街が、国が、世界がどう動くのかは未知なのである。
「まあ基本設計図がある状態でのゲーム進行なので、基本的に安全だと思うんじゃがな……」
GM姫はあまり心配していない、というか考えていない。なぜなら解らないで発生する事故より、解っていて発生する事故のほうが処理の仕方が簡単だからだ。
そこら辺で行くと、咲のクエストのほうが難易度は高いということになる。それこそ誰もついて行けないほど、速かった。
「で、改めて確認なんだけど。プロットはキリの良い所まで描いて良いよね?」
「そりゃあ、たたき台が無いと、何が良くて何が悪いか判らないから有りすぎて困るということはない。……あ、解った、桃花が懸念してるのは、吸血鬼大戦のボツネームが勝手に動いたように。完成して完結しても勝手に動いた〈予想外〉が起こらないか心配してるんじゃな?」
姫の予想は半分当たり、半分外れだ。
「それは妥協点だけど……、自分がOK出してないボツネームがアニメ化まで言っちゃったのはちょっと腑に落ちない所が……釈然としない所もあるけど仕方のない状況下だったのも事実だし……。じゃなくて私が気にしてるのは選挙の方、全体会議での議決・裁決のほう。アレさ……投票って形を取ってるけど、裏で打ち合わせしてたってことになって〈議員意志〉は無いよね? 民意もそう……。つまり、初めから決まってる事柄をあたかも今決めましたかのように〈誤魔化す好都合な儀式〉が気に食わない……みたいな……????」
場外乱闘前提の不安の話だった。
正直姫は「どうでもいい」と思ってつい呟いてしまう。
「いやどうでもよくないよ……国内で言えば法案で終わるけど。世界で見たら計画的に戦争を実行してるんだよ? そんなの望んでるはずがないじゃん……!」
桃花にとってまた大きすぎる〈世界〉の話になった。
ある意味、それを薄々感づいたからこそ、計画書を描かなかったフシまである。だからこそ約12年間、漫画どころかプロットもまともに描けなかった所まである。
「ふーむ……でも最果ての軍勢もちゃんと機能してるし、何とかなるんじゃないか?」
姫はこれも楽観視、それは自分がちゃんといい作品を作ってないと、皆も幸せに出来ない事を知っているからである。
つまり、上手く出来レースをするやり方を知らないのがこの場での議題だ。
「えっと、つまり桃花の不安をエンタメで消化するとコミカライズのアニメ化がいい例だ、原作好きは先の展開まで知っていてアニメを観る。そこにはフルカラーや動画枚数の動き、つまりクオリティがバージョンアップしているからこそ〈解ってても観る価値がある〉と期待して観る訳だ。それを出来レースや未来予知で落とし込むってことは。まず〈読者はもう騙されない〉って前提で、予測している期待を超える。つまり画力勝負になる」
桃花もそこまで聞いて、それなら出来るかも。と思えた。
「なるほど、もう〈子供騙しは通じない〉って前提で、プロットやネーム以上のクオリティを、えっと担保? 出来れば読者も満足させられるってことね!」
「そうじゃな、全体論でも同じ事が言えると思う。国会会議でも圧倒的な質量で挑めば納得してくれるし、戦争の結果でさえもねじ伏せられる……。それがこの世を支配する正しい王道のマスターだと今のワシは思うぞ?」
言っていることはグウの音も出ないほど正論である。
「あぁ、じゃあ結局はロキが言ってたことと同じか……もし全てを破壊したとしても、ちゃんともっと良いものを創造できれば……たぶんハッピーエンドに持って行ける……」
「まあそうすることしか出来ない生き物であるってのは、否定しないがな」
結局はそうなる、まとめると。
「じゃあもし未来を予知してそれで悪巧みをする連中が居たとしても、それをねじ伏せる、圧倒的なクオリティで作品を完成させれば。出来レースなんてどうでもいいと思えるわけね」
「まあ、そういうことじゃな。お前も経験してるはずじゃし知ってるはずじゃが。小手先の作品が、本物のクオリティに負けるはずがない」
「……、それはそうだね。身を持って知ってるわ……、じゃあ出来レースの件は要らぬ心配だったか……」
桃花は姫に論されて、普通に納得してくれたようである。
「というわけで、EWⅡの第1章のプロット完結。楽しみに待ってるわ」
「いや私が描いてるの……? まあ誰でもいいか……」
というわけで、一回この話は終わった。




