第36話「結・大サーガ時代」
ドアの世界の外側で外の空気を吸う2人、GM姫と桃花である。2人ともひとまず深呼吸をする。で、姫が一言。
「まあ吸血鬼大戦はアレだって名称付いたから解るけど。スズちゃんの件とか、咲の時代とか色々名称を付けないといけないのが後回しになってるな……」
当時の時代を生きていたからこそ、後になってどう呼ばれるのかは二の次だし。起こってからで無いと名称が付けられないのが難点だった。だが一つだけ大きな転換点がある。
桃花が空を見上げながら言う。
「世界種クールマの発見は、大海賊時代の前後を区別するみたいな感じでデカイ出来事だったよ。ちょうど元の世界の光が自分達だと解った頃とクールマが世界規模で願いを叶えていた事の発見は流石に時代名を付けた方が良いと思う」
今までは〈事件規模〉だったが、嘘つきには戻れなくなったような不可逆性があり。明確に〈願いは叶う〉や、〈元の世界はここ〉と発見された。日付は曖昧だがこの時期を呼称する名称は必要だと考える。吸血鬼大戦やスズちゃんの件や咲の時代は〈中ジャンル〉だとしても世界種クールマの発見はワンランク上の〈大ジャンル〉だと思われる。上位ファイルと下位ファイルのフォルダ分けみたいなものだ。
「それこそ〈新時代〉になるのかな~?」
「……ヒネり無さ過ぎじゃねえか? 憧れに対しても失礼だろそれ……」
姫が冗談を言うが、桃花はあまりの単純さに頭を悩ませた。
「ん~日本史で見ると土地の名前が時代になってるのが多いかなあ~江戸時代とか……」
桃花先生が歴史教師のふりをする。
「いやー、土地も時間もあてに出来ねーからなー、この世界観は……。それこそクールマの時代って事にならねーか?」
姫が土地名は良いがこの新しい土地が次々見つかり、時間軸が6個も存在するこの世界観を表現するのは難しいので。人物名や、今回で言うと動物名の方が良いと考える。
「クールマってヒンドゥーの神話だっけ?」
「別にヒンドゥー教を意識してねーだろ。どっちかというと星座だよな……」
そこで桃花は安直な名前を出す。
「大サーガ時代?」
「うわ安直!? ……、だがまあ短いし解りやすいし間違ってないしいい線は行ってるよな。別にクールマって言っても〈亀の時代?〉って感じだし……」
桃花の命名に、GM姫は安直過ぎて反射的に拒否したが、逆に覚えやすいか? と我に返った。和も令和に入ってるし、大和だと大和時代だし。そこ行くと世界種クールマを発見した時期を〈大サーガ時代〉の〈始まり〉と呼称するのは別に悪くないとも考えられる。
名前◇大サーガ時代
希少◇SSR
分類◇吸血鬼大戦_スズちゃんの件_咲の時代
解説◇厳密には〈世界種クールマ〉が発見された時期と〈元の光が自分達〉という自覚が芽生えたあたりの時間軸を〈大サーガ時代〉の〈始まり〉と定義している。なお最果ての軍勢の時系列や6線時間軸など色々あるが、フォルダの中では時系列的には一番大きなワンランク上位のフォルダとなる。ここを基点に前後が別れていて。
大サーガ時代前は、願えば世界規模で叶えてくれるクールマの存在も知らず、元の光が自分達だと知らない、という明確な区切りがある。〈ただし正確な日時がぼんやり移り変わって行ったので曖昧である〉。
大サーガ時代後は、その定義通り世界種クールマの存在が視覚化され、願いを世界規模で叶えられていると知り。元の光が自分達、つまり創世源種だと知っている時期から入る。という明確な区切りがある。
「じゃあそれで決定じゃな」
「うん、まあ良いんじゃないかな。別に悪くなければ何でも」
といわけで、覚えやすさ重視で決まった。
「ところでさ、アカウントカードの制作ってどうなったの?」
「あ~アレ結構作るのに時間かかってさ……1カード1人しか通過できないと不便……、というかアカウント制作が間に合わないから。カードを持ってる人がいれば持ってない集団さんも入れるように調整するわ。ちょっと全員分用意するのは時間的・物理的に無理だわ」
「……、まあ今までのユーザー全員集めろって無理だもんね……。ギルド単位だと4個しか要らないしセキュリティとしては味気ないもんね……」
桃花は姫の労力を察して憂いて、1人持ってればドアの世界への行き来は可能。という風に軌道修正した。
「今発行したのは何人?」
「16人じゃな、その人と一緒なら集団でもドアの世界へ入れる形」
「集団の上限は?」
「やっぱ決めたほうがいいかな……?」
GM姫はそんな上限いらんだろ、とも思うが。人数が人数なのでちょっと不安がる。
「そりゃ最果ての軍勢なんて約30人要るし、あのレベルの超能力者が1アカウントで30人はちょっとセキュリティ的に不安になるよね」
「ん~。1アカウント7人かなー……今の盤面の駒のゲームの関係上~……」
姫が今の盤面の7人を考えたが、桃花はもっと万能型を要求する。
「それは今のゲーム盤だけだろ? レイドイベント的にはどうなんだ?」
「FFのオンラインの奴だと8人でフルパーティだな、レイドはもっと上、8人✕3パーティ、24人だな」
アライアンスレイドはGM姫自身が体験したことがないから実感できない。ここで1つ制限が出てくる、つまりGM姫自身が体験したことのないゲームは実装できない、という縛りだ。
もう一つはサーバーという概念、VRゲームでは近未来的思考でパソコンスペックを考えなかったが。その世界が動いている心臓部のスペックは機械であっても、例え機械じゃなくても欲しい情報だった。今でこそ機械的サーバーは必要ないが。ではサーバーに例えて、EWⅡの心臓部はどういう構造になっているのか? は気になる所であった。
必要となる今後の未来の想定されるスペックは吸血鬼大戦……つまり頂上戦争クラスに耐えられるサーバーでないと〈話にならない〉。……例え個人の技量、テクニックやパワーは落ちたとしても。グランドレイド〈1000人とか〉を想定したEWⅡのサーバースペックを設定しておかないと、説明が出来ないというか、きっと後でボロが出る。……そう感じる。
「……じゃあ~ま~とにかく1アカウントカード、本人も含めて8人じゃな!」
「……ま、そんなもんでしょう。16人カード所持者が要るから、まともに一方通行なら128人規模まで同時移動可能……て事になるね」
GM姫と桃花先生の息抜き打ち合わせは続いた。




