第31話「転・せめて最後はヴィランらしく」
第0120番号室〈竜王の部屋〉
GM姫と桃花はその部屋を通り過ぎた。
「この竜王の部屋どうしよっか……?」
「関わらない方がいいと思うんだよなあ~」
しかしこの部屋が沈静化するまでかなりの間があるし、この事件を無視や放置をして、新しい旅路へ行くのも何だか違う。と信条戦空は思った。
考えはした。しかし、理由はいらなかった。
――戦空は竜王の部屋をこじ開けた。
ご乱心中の竜王はそこに確かに光明を得た……。
「おお、このタイミングでお前が来てくれるのか……伝説の勇者よ……」
皆が待ち望んだ者が、今確かにそこに居る。
「他の感情など知ったことか……せめて最後はヴィランらしく」
竜王は一拍置く、懇願するように。
「ヒーローに倒されたい……」
「わかった」
よく解らないが戦空はこの竜王を殴り飛ばさなきゃいけない気がした。根拠もない、直感しか無い、何となく。こいつはここで〈仕留めなければ〉ならないと思った。
一言で言えばセンスが働いたという言い方がしっくり来るが。だからこそ戦空は迷わなかった。
かと言って〈眞人の拳〉を使うのも違うと思ったから、戦空は原初の風、技名を呼ぶ。
今回は波動色も纏って……。
――ウィンド・オブザ・ヒルド――。
原初にして最初の天空を割る技が空を舞った――。
《竜王を倒しました、事態は沈静化しました》
桃花は自覚出来る範囲の最大限の視野で見つめて言う……。
「これで……良かったのかな……?」
しかし戦空は解らないまま言う。
「わかんねえ、でも、これ以上の悪化は防げた……」
ヴィランとなった竜王はヒーローとなった戦空によって討ち倒された。
これが良かったのか悪かったのかも解らない、日本人が日本政府を痛めつけただけなので、痛み分けに近いかもしれない。自分で自分の傷を広げただけかもしれない。
「む、……でも必要な〈毒〉と〈薬〉だったよ……」
宇宙種であるGM姫はそう指摘した。ゴミとご飯とも言いたかったがこの場合ゴミに失礼だった。
竜王による最大の恐怖とは、GM姫やBIG4に〈相手にもされず〉、勝手に死んでいく運命の定めを、見過ごされながら死んでいくことだった。
その時、その役割を信条戦空が勇気を出して行った。竜王、お前は立派だった。と、誰かの苦労を労うように……。長年よく頑張ったと賞賛するように。
「お前が誰だか知らねえけど、未来を願うお前の気持ちを。ウチらが見捨てていい理由にはならない。だからウチがやった」
何も解らないが、こうであるべき、だと思ってやった。というのが戦空の主張だった。
竜王は最後にこう、言ってこの世を去った。
「見てくれただけで、感謝を……――。」
◇
桜愛夜鈴は思い出したくも無い記憶を元に、言う。
「墓は作っときなさいよ。無いと心の憑代がフワフワして不安定になるから」
竜王国、南海道、ドアの世界付近、竜王ここに眠る。
領域竜種は自分達の実力を発揮出来ず、何も解らず、己達の無力さを嘆きながら、泣いた。
「結局、テイム出来なかったか……まあ寿命って事だったのかな……」
「じゃろうな……こいつの運命はここで尽き果てた、だから寿命じゃ」
天上院咲と天上院姫はそう結論づけた。
と、長い長考の後。湘南桃花と秘十席群は今後の今後の作戦会議を、お互い話し合った。
「多分さ、漫画の原稿用紙で描いたら上手く廻る気がしない? 小説だと上手く廻ってる気がしないんだけど……」
「それは山々だけど、じゃあアノ〈銃撃事件〉はどう説明するんだ? アレが説明できない限り、ちゃんと安心して原稿書けないぞ?」
それは意気揚々と連載漫画を描いていたときに起きた銃撃事件、その因果関係が〈関係ある〉と認識した結果、本編は完全に〈止められた〉という形式になっている。
「でも編集者はアナログでもデジタルでも問題ないって言ってたぞ?」
おそらく、デジタルカラー漫画を1枚でも描けば、その影響力が可視化されるかもしれないが。咲と姫のカードゲームの原作は反映されなかった。
仕舞いには編集者が〈英語を読んでいるようだ〉とさえ言っていた……。
「考えられる点としては。1、本当に解っていないか。2、解ってるけど誤魔化している。というこの2つ。でなけりゃアナログと答えるはずだ」
「うーん……今でも思うけど〈何も知らなかった私〉の方が強かったな~……。まあ咲ちゃんの強さとは別ベクトルだけれども……」
そうでなくとも。デジタルでの悪影響が悪目立ちし過ぎている。
「良かれと思って描いてるのにそれが悪化の原因となってるのは不本意なんだよなあ~……。アカウントカードを描いたら現実の仲間のスマホのアカウントが乗っ取られたとか悪化でしか無いし……良くなるならまだしも……」
「まあEWの法則でも、プラス保証でも無いけどさ……。この〈悪化が終わらない限り生原稿で描くことは無いよ〉……? 無いよね……?」
「まあキーパーだった頃のクセだけど。全部のフィールドを見渡して安全だと確認出来てからじゃ無いと味方にボールを渡さないってのは。今に始まった事じゃ無い。ほとんどサガだ」
対象範囲は、ネット社会、政治社会、仕事社会、散歩するときのコンビニ社会、家族社会、とかそこら辺がオールグリーンじゃないと生原稿は描かず。WEB小説のまま、というのは今までの経験上当たっている。
つまり、ディスコードの安全性が確認でき、SNSも運用でき、WEB小説の不自然な評価も問題なく。政治家はサボらず、不正を働かず、まっとうな仕事をやり、未来志向に舵を切り。ニュースも犯罪を起こさず。仕事もアクシデントが無く、新聞は不都合な真実以外も書き、仲間の社員の汚物処理も無く、コミニケーションも良好で。散歩する時の意味不明な車のクラクションも鳴らなず。家族間の不自然な悪循環の、母親へのいじめも治まって、ご飯が美味しい。ここまでやってようやく安全確保が目視で確認出来たから安心して原稿に入れる……そうでなければ目の前の〈悪化した問題〉を永遠と小説で指摘し続ける。というサイクルからは逃れられない。
「まあこれらは全部、吸血鬼大戦では〈知らなかった〉の一言で片付けられるけど……」
「もう知ってるしな。かと言って無視は出来ないだろ……あの銃撃事件の裁判とかどうするんだよ……あれも無視するのか……?」
大人としては因果関係が無い、とは言えない。となると、今後。デジタル原稿を描いて、B4プロ用原稿用紙をコピー機で印刷して、各火事や銃撃事件が起きないようにするにはどうすればいいか? ……がクリアされない限り、〈WE本編の生原稿が進むことは無い〉これは言える。
そのために小説執筆を続けているのに、WEB小説を書くと悪化する。では、書くも描くも止まる。よって表現の自由どころの話では無くなる。完全に規制のがんじがらめになっている。
何でも出来る、じゃない。
何も出来ない、になっている。
「サイクルの向きがおかしいのなら、サイクルを逆に回すか。サイクルを止めるかのどちらかになるんじゃ無いのか?」
「つまり、生原稿描くまで日本の物流を全部止めるぐらいしないと描かないと? ……全体論としては解るけど極端だなあ~……」
「だって安全を保証出来ないなら物流は止めるべきだろ……」
……という議論は続いた……。
「……話変わるけどさ。スズちゃんに妹と弟が居ないとややこしいことになってない? ヨシュアの件じゃ無くて……」
「うーん、なってるかもしれない……」
桃花と群は夜鈴の方にも気を配っていた。




