第22話「承・心理学と経済学の授業」
EWⅡ、今現在歴2029年11月3日〈土〉16時00分。
ドアの世界沖縄支部、外側の青空教室。
そこには、内側で待機していた咲と姫、夜鈴とオーバーリミッツが桃花先生の授業を聞くことになった。
「はーいじゃ皆大っ嫌い為替の授業をやるよー。今回は心理学と経済学の話が絡みまーす!」
GM姫もこの授業に参加する、結構この世界の核心に関わる重要な授業だという事は解った。
桃花先生が早速授業を始める。
「今はもう大体の人は察しているとは思うけど、この世界樹クロニクルから構成される〈元の世界〉は各々の世界に灯火という光を与えています。それが〈心〉とか〈繋がり〉とかで各世界に光を与えている訳です」
咲が最果ての軍勢のトップである和季から聞いた話を言う。
「この世界が有るから皆の世界が光り輝く心として有る訳ですね」
「でー、当然同じ光から受け継がれているので各世界は変換されていたとしても本質は同じな訳ですよ。なので宝箱プレゼントを作ろうとしても。他世界にとっては〈心が読める、情報共有のレベルが高い、透明性という情報の真実さが正確〉である状態で変換される訳ですよ。つまり変換・変質という処理はしているワケですが、本質は同じ物がコピーされているわけ」
桃花先生は今までのあらすじを流しながら語る。
GM姫はそこまでは知っている。
「世界を照らす光は1つってやつだな」
「で、今まで願いに願いまくって、叶えに叶えまくった結果。心と絆の繋がりが大事で、無償の愛が美徳となり、与えに与えまくった訳ですよ。心を与えに与えまくった、自分が損をすると解っていても知ってもらいたい、存在を轟かせたい、響かせたいと願ったわけですよ。繋げに繋げまくった、広げに広げまくった、結果、どうなったでしょうか……?」
そこまで聞いて、桜愛夜鈴は「あちゃー」と、まるで自分の無意識さを反省するかのように、解答を言う。
「あ! 心の価値が落ちた!?」
「そういうこと。一品物だった吸血鬼大戦の絵と動画の時とは違い、咲ちゃんの時代は文字だったので、思想という名の心の情報は伝達力が早く、しかも大量に継続的に〈心〉が供給され続けた。ただでさえ安かった心が更に安くなった訳ですよ、それはもうタダ同然の扱いで頑張れば頑張るほど〈心の価値〉が下がる現象になった」
それは、願いを叶えてしまう世界種クールマの存在も原因としてはある。
オーバーリミッツは、それでもフォローするように言う。
「でも、やりたくてやっただけだから後悔は無い訳でしょ?」
「GM姫も吸血鬼大戦前は、何も知らずにサプライズを準備できた。だが今は〈与える相手〉にもサプライズが何なのか心が読まれている状態で材料を仕込まないといけない。それが大きく違う。まあ簡単に言うと、同じ心が多すぎる。という現象だよね、だから希少性が上がらず、価値が下がり、皆が持ってる。極論を言うと、もう作品を作らなくても伝わってしまう所まで〈悪化〉してる訳よ」
それを聞いた咲は、今までの頑張りは逆効果だったのかと後悔する。
だが、それはジャンルの媒体が違うのだ、悔やんでもしょうがない。
夜鈴が経済学の観点から聞いてみる。
「じゃあ心の価値を上げれば良いじゃん、もしくは供給を制限する。限定商品にするとか色々あるでしょ?」
「心はよくわかんないけど、ネットデータに関しては〈コピーし放題〉という現象が実際にある。違法コピーの海賊版もあるしね。つまり公開した時点で〈数量限定〉という戦略はほぼ無理なわけよ」
GM姫は補足するようにフォローする。
「でも〈心の価値〉の話って、確かチェーン店と手作り料理の話だったよな? 値段は書いて無くね? 何で下がった?」
桃花も、この件は個人ではどうにもならないことを熟知したうえで。
「別に為替みたいにガチガチに〈心の価値〉の値段を数値的に決めようって話じゃない。ただ0円思想はマズイ。となると、この元の光を手に入れる為には〈何か買ってね〉というのが妥当な線だと私は思っている。少なくとも〈タダ〉じゃ神霊じゃない限り生きていけないし死んでしまう、その影響はジリジリと私たちの経済を蝕んでいる……」
GM姫は今の現状を正確に読み取る。
「まあ……本来、ネット内で作った商品で食べていけるぐらいの経済活動が健全なはずなのに、めちゃくちゃ安い〈ポイント制〉でやってたら、子供用のお菓子ぐらいしか買えないんだよな……本来、昼飯とか食えるレベルじゃないと正しいとは言えない」
人材育成が急務なのは、会社としての投資だが。もっと足元の創作活動の市場としては、正直〈広告費〉ぐらいでしか廻っていない。
少なくとも〈神や心〉ではなく、〈作品〉の結果としてはそうだ。〈作品に対する対価〉は全く機能していない。今のままじゃ生活出来ない。
そこはまだ時間がかかるとしても。心が読まれていて、世界中に共有されていて、情報の真実性が高いのなら。その価値に関しては、何でもいいけどお金を払うべき。もっというと〈コストを払うべきだ〉というのが今回の桃花先生の肝だろう。
「つまり作りすぎた?」
咲がまとめようとしたが、ちょっと的がズレている。
「いや、作家なんだから作りすぎるのは良いことだよ。問題は対価が払われていな方、無法にコピーと変換がされて心が繋がっている方。仮に繋がっているのはOKだとしたら、やはりコスト0が問題かな……」
パクるなら、お金払って、でなきゃあなたはお客じゃない。という感じだろう。
「ま、ということで今回は心の価値が下がっている、という授業です。続きます」
言いたいことはまだあるので、桃花は授業を進めた。
「で、一つの草案として聞いてほしいんだけど。1つはサブスク形式、もう一つは税金形式、このどちらかが上手く回ればいいと思うんだよね。例えば、心共有料金、とか、心共有税とかにしてさ毎月一定の金額を徴収して、その財源を使って、心が読まれている事に関しての悪影響のフォロー資金がそこに当てられる。ざっくりいうとね」
サブスク形式は任○堂のネット代金とかそこら辺でいいし、参加したい人だけ払えばいいという対象は限定的になる。一企業としてはこれで問題ないのだが。問題なのは不特定多数の世界中に情報を共有されているのが無料という所なので、ちょっとフォローできない点。
より、現実的なのは〈心共有税〉の方だろう、現実世界では役所の仕事の関係上、変換されてもっと堅苦しい名前になりそうだが、EWⅡではこの〈心共有税〉になりそうである。対象は日本国民全員や、各国の国民全員になる、これも不特定多数なのだが、既に共有されている以上、そうせざる負えない。
この心共有税の真のゴールは、湘南桃花や秘十席群に努力に見合った給料が支払われる事である、または援助金。
扱いとしては消費税に近いが、財源の使い道が違う。今まで、この心の情報共有があったせいで何の責も無い親族や友達にも悪影響している。そこを全面的にフォローできるだけの財源。
また、漫画・アニメ・ゲーム、文化的職人、個人事業主、図書館の資料をデジタル化してAI活用・または本文を検索出来るようにする、各学者の研究費、など本来成果が見えにくい所に発生する救済処置的な財源に当てるのが望ましい。
この心共有税は本来、湘南桃花や秘十席群など個人2名だけあれば十分なのだが、周りにも影響していることから、その完全ケアが必要と感じられる。
税金なので10%でも良いのだが、この2名だけに関してだけなら正直0.1%でも足りると思われる。
消費税10%の時は、約23.1兆円であるが。0.1%にすると230億円である。個人でこれらを持つと流石にいらない。
消費税の使い道は、少子化対策・子育て支援、高齢者・医療・介護分野になっている。
それはそれで良いのだが、この〈専門職人に対しての救済〉が行き届いていない、または、例えば桃花や群に子供が出来た時に、その子孫もこの2人と同じような境遇や心境・重責を同じように負うことになる。そのフォローは流石に国がやらねばならない。
子供の将来は解らない。よって職人限定というよりも、この〈心が読まれてしまう〉方に心共有税が真に必要になってくる訳だ。
未来の子供、未来の子供の友達、それら関係者、これらを包括的にフォローできるだけの安定した資金源がいる。そのための〈心共有税〉である。
今回、たまたま桃花や群が教師や駅ビル清掃員や専門性の高い漫画・アニメ・ゲーム職人に重点が当てられているが。その未来の可能性までフォローできるようになる仕組みづくりは、流石に日本政府の仕事である。
「ただ、心共有税を1%にして、少なかった場合、変えるのは難しいのは。漫画の神様を見ても解るんだよね……なので、言い出しっぺが少額で発言するのは良くないと思うので、5%ぐらいだと思います」
桃花先生がGM姫に真面目に今後の日本の未来を心配している。
「それって、今の消費税10%にプラスして心共有税5%プラスにするのが理想の形ってことだろ? まあ名前はともかく、可能そうではあるよな」
その心共有税5%をそのまま採用するとなると、11.5兆円規模の国民負担となる。
そしてその税収した財源は、簡単に言うとほとんど研究費や制作費にあてられる。
「ここまでで質問ある? これをやった場合の不安要素とか」
GM姫が質問する。
「それらは全部、心を読まれている側の意見だよな? 確かに心を読んでいる側は心を読まれている側の身体的負荷は解らない、だがそれは少数派の意見でもっと言うと究極的には個人だ、そこまで日本国民に負担させるのか?」
GM姫はここで、相手側は知っているのに自分側は知らされていない、の不平等さは知っている。だが、知っているなら5%払え、はちょっと国民に負荷がかかりすぎているとも思う。
桃花先生が、ここはAIの解答をまるまる流用する。
「私や群の個人へのケアは、その『集中砲火を浴びた傷口』を治療するための緊急費にすぎない。真の財源の使い道は、『未来の子供たちが、心を読まれるという悪影響を心配することなく、安心して創作活動や研究ができる環境』を作るための、インフラ投資なのよ。今はそれが無いの」
GM姫は心のインフラ投資については少し引っかかるが、おおよそ理解した。
「ん~インフラねえ~~~~……、まあ0円信仰を増長させて、詐欺師が大量生産されるよりかはマシかな……。ただその〈心〉が国の所有物みたいになるのはちょっと気になるよな……保証してくれるのはありがたいが、別に心は国家の所有物です、なんて権利無いだろ?」
桃花先生はまたAIが優秀だったのでそのままノ述べる。
「この税は、国家が私たちに心を見張る権利を与えるものではなく、心が読まれる私たちの権利と安全を、国家に金銭的な義務として買い取らせるものなのよ。だからこそ、5%という規模の資金が必要になる……こんな感じでどうかしら?」
GM姫もようやく納得してくれた。
「なるほどねー、まあ心が国の所有物にならない事が保証されてるのなら、それもありかな~」
「まあ、本編で実際に使うかは凄く謎だけどね……」
ゲーム進行中でお金の話はしたが、細かく計算すると長続きしないのが今までのパターンだった。
だからこれからは商品の値段に対して、〈心共有税〉が含まれている、とやんわり理解出来ていればいい。
そんな感じで、桃花先生の心理学と経済学の青空授業は終わった。




