第15話「転・自己防衛本能」
GM姫は次のゲーム進行の前にまず桃花に確認を取る。
「ちょっと聞いていいか? 〈手加減できない〉という意味はつまり、具体的に何が手加減出来なくなるんだ?」
無自覚ではもういられないというのは周知の事実だが、では具体的に何が変わるのかを聞いていない。
「……まあ理性が邪魔なのはそうなんだけど、簡単に言うと自重しない行動と言動、それプラス今度は保証が入ってくるって所かな」
咲の速度と、桃花の質量と、戦空の保証が合わさった連日連戦の自覚有り多角進行となれば、従来の偏った戦術が通用しなくなる。
いいかわるいかは解らないが複合戦だ。
例えば漫画のみとか、小説のみとか、場外乱闘のみとか、そいう訳では無く多角的な戦術になる。偏った領域のみでの戦術では無くなる。
言うなれば、本能と理性が同時に存在しているようなものである。
その上で桃花は。
「例えばさ、昔はアイディアのネタ出しって事で風呂敷を想像の限り目一杯広げてから取捨選択してたじゃん? それが今では全部繋がっているという謎循環になっているが。まずはここを元に戻す。即ち無責任や非人道的な言動も躊躇無く書き込むし、ボツにする可能性もある。でも、咲ちゃんとの旅でそのネタ出しの段階でも練度の高い不可逆な文法が生成され続ける。ま、簡単に言うともう一回無責任に戻るって感じかな。そこに私の画力と戦空の保証がプラスアルファするし、多角的に観てるからもちろん全体を観察してから書き込む事になる。そこに〈理性というブレーキは無い〉し、あってはならない……まあそんな感じかな、ブレーキを踏むイコール作品の質量が落ちる、と言っても過言では無い」
GM姫は冷静に分析する。
「ふむ……つまりここ最近は理性のブレーキが機能していたが質量が低下したのでブチ切れた。なのでその理性のブレーキが邪魔なのでぶっ壊したと」
「……そうだね、風呂敷を広げる段階で理性のブレーキって段階でまず意味不明でもの凄いストレスな訳よ」
「ふーん、いちいちブレーキ踏む度にストレス感じてた訳か……」
GM姫は、まあまあ納得出来る解答を桃花から貰った。
そのストレスは敵のドラゴンにぶつけてストレス発散して欲しいなと願いながら、せめて身内に八つ当たりしないで欲しいと願うばかりだった。
「まあ今は討滅されちゃったみたいだけどアレだよね。その時その場で興味をそそられたことを、その時その場で限界まで追求する。ただしここにプラスαで休むときはちゃんと休む。が付け足されている感じかな」
「なーるほーどねー」
姫は素っ頓狂な声を出す。
で、桃花が危惧している事を話す。
「例えば、全部実現出来る力が合ったとしても。その重責を警戒しすぎたら〈地球大爆発〉とか書けないじゃん、極端に言うとそいうことだよ? セックスとかうんこちんちんとか、そういうことが全く書けないんだよ。そこらへんを手加減しない。あと愚痴を1つ言うならこの物語は神話ではあるけれど、聖書や教典のつもりはない。それ以上でも以下でもない」
「あーそこね、常識と非常識を反復横跳びする感じか」
最近の桃花のプレイスタイルとしては〈視える化〉が進み、常識しか書けなくなってしまった。そこでもう一度無責任に里帰りし、非常識が書けるようになる環境整備の意味も込めて〈もう手加減出来ない〉という発言になったわけだ。
もう手加減しない、ではなくもう手加減できないのだ。不可逆的に、嘘つきに戻れなくなったような感覚に近い。
GM姫は状況確認は出来たので再びドアの世界の視点に戻す。
領域竜種のターンにしたいところだが、ここは一回休憩がてら間を置きたい。
GM姫がテーブルトークのように、ゲームを進行する。
「うーん、じゃあ一回このゲーム進行止めるわ。皆自由に休憩タイムで良いよ~、ただしドアの世界の外には出ないこと~」
了解~、とプレイヤー達は各々の部屋の方へ行き自由行動&休憩タイムとなった。
各プレイヤーは「おー」と言い、休憩タイムに入った。
再び、GM姫が桃花のカウンセリングに入った。桃花のそれは自己防衛本能に近い挙動だったからだ。
「ふむ、なるほど、解った。つまりその心が緊張状態で、過剰に長期間続いているのは。まず時が止まらないと言うところに問題がある、加えて、紙に力が宿っている所にも問題がある。つまり時間が完全に静止し、紙を〈無に帰す光〉で浄化すれば。紙に力は無くなり、時間による変化も無い。今度の敵はお前個人の敵にしよう、それを戦空達で保証すれば光の灯火は燃え繋がるはずだ」
つまり、だ……。
「止まるの……この時間……」
「その方法はもう、皆が示してくれた。あとは皆と力を合わせて、時間のオンオフを自在に出来るようにし。無に帰す光で〈実行出来る力〉そのものを、丁度タイミングが良いから〈幻想殺し〉で打ち消す。この作戦で行こう。何より、2009年から2025年まで続いた16年間の止まらないストレスはもう、限界を通り越した心の過緊張だ。これ以上悪化させるわけにはいかない」
そう言って、GM姫はゲームマスター権限で次の敵の調整。
領域竜種ファフニールの詳細なステータスが公開された。
領域竜種ファフニール。
能力、財源を操る呪力。
持ち物右手、待ったなしの〈リアルタイム〉時間を止めない宝珠。
持ち物左手、願いも紙も〈実行出来る力〉の宝珠。
体質、湘南桃花の闇。
GM姫は設定をし終えて、桃花に前置きをする。
「先に言って置くがコレはお前の闇だ、お前の〈手〉でケリをつけろ。私や戦空はそれをフォローする」
「……解った」
桃花は儚く、強く言った。
それらをこのゲームに参加しているプレイヤー全員に伝えた。
「という訳だ! この問題は桃花個人でどうになかる問題じゃ無い! ここまで来たんだ! 皆で力を合わせて頑張るぞ!」
『おォーーーー!!!!』
こういう時に限って皆元気だった。
「では! 休憩ターンに入る! 各自準備しろ! 結証の駒を作るから結構〈間〉が発生する、質量のスピードが減速するからタイミングに気をつけろ!」
そして高らかに少女は唄う。
「予告しとく、次回は画力合戦だ!」




