第一話:もう学校に来ないかも
とうとう、このクラスにも…二人目の感染者が出た。
次に発症するのは、きっと、ぼく──かもしれない。
●第一話:もう学校に来ないかも
鹿島のことで覚えていることといえば、濃い顔立ち、ひどい癖っ毛、時々かける眼鏡。それだけだ。
外見しか思い出せないのは、それ以上踏み込むのが億劫になるほど、面倒くさい女だったから。ろくに会話もしていない。何に笑い、何に怒るのか。感情の琴線が、他人とまるでズレているように感じて、正直、合わないなと思っていた。
四月の半ば、クラスの誰かと口論になり「面倒な女」という烙印を押されてからは、誰も鹿島のことなど気にも留めなくなった。
鹿島のことは、すぐにどうでもよくなった。ぼくは、はじめて経験するクラブ活動に必死でついていこうと、それどころではなくなったからだ。
新入生歓迎会で部活紹介があった日、後ろの席の曽根と仲良くなり、誘われるままテニス部に入部。仮入部期間がすぎてゴールデンウィークに突入すると、ゲスト扱いもなくなり、急に練習が厳しくなった。
そんなある日、相変わらず外周ばかり走らされて、食傷気味になっているところへ、曽根が唐突にこんなことを言ってきた。
「鹿島、もう学校に来ないかもな」