11話 島の過去
やっと階段が終わった。何時間かかったんだろう。
「この扉も水を使うの?」
「よく分かったな」
また水を使って扉を開けた。
扉を開けた先には巨大な機械。その機械の手前に二人の人物が立っている。
一人は私の師匠。もう一人は今までの流れ的にあの本を書いた人だと思う。
「久しいな、二ギアにノービィン」
「二ギア、アチェの隣にいるあのクマなに?」
「嫉妬か?お前さんも知っとる人物よ」
「アチェと同棲のような事する男なんて知らない」
「嫉妬だな。アチェはお前さんの恋人だって知ってるマクが手を出すわけないのに」
私の恋人?恋人なんて記憶にないんだけど。
「マク、なにも説明してないのか?」
「アチェの事をなにも説明せず渡したのはそっちだろう」
「手紙を送った」
「なんの内容もない手紙は白紙の紙同然だ」
とりあえず説明して欲しいんだけど。師匠とマークルの関係とかこの状況とか。
「……アチェ、ここに来て」
「うん」
「ごめん、あの二人がなにも説明してこなかったから。戸惑ってる?」
「うん」
「覚えてないみたいだから、この島の成り立ちから説明する。この島は知識を後世に残すための場所。同じ志を持った人たち、今は賢人って呼ばれてるだって?その賢人が知識を残せるようにどこの国にも属さず、どこの国も攻められないように造ったのがこの島」
同じ志の賢人は今ここにいる人たちだと思うから、ここにいる人はみんなこの島出身じゃないって事よね。というか、この島ができたのって数万年前って聞いたんだけどどうして島の歴史に載せなかったの?
島を造った時の事は人工島と知られないように隠していたとしても、その後この長い期間でなんらかの形で島の歴史に関わっていても良いはずなのに。
「アチェは雪国で一緒に研究をしていた。仲間であり恋人だった。当然、この島を造る時も一緒だった。でも、突然いなくなってアチェに似た君を見つけたと二ギアに言われた時は驚いた。でも、会いにいく事はできなかった」
「どうして?」
私にその記憶はない。でもこの人が大切だったんだっていうのはなんとなく分かる気がする。それにこの人も私を大切にしてくれた事も。
「この島の未来を視てしまったから」