歩いて行こう、何処までも
付近にあった魔素を一気に使い切ってしまった事で、大きな魔法は今すぐに使う事が出来ないのが残念だ。
この穴が出来た事で周囲の魔素が吹き飛ばされたせいか。
まぁ、状況あまり考えずに残っていた魔素を集めて使った自分にも原因はあるんだろうけれども。
記憶違いで無ければ、自分が封印されたのは樹海の中でも特に奥地だったから街からは遠く離れていたはず。
しばらくは歩かなきゃいけない。
まぁ、多少は魔素を掻き集めて身体強化はお茶の子サイサイだよ?
ん?使い方あってたかな? 簡単だわ〜って時に勇者が言ってたよな。
自分を中心に、魔素レーダーで周囲を確認するが動物一匹残ってないものなぁ。
しばらく歩いていると、穴から抜け出し森へと辿り着いた。
凄まじい衝撃だったんだろう。 木々も残ってはいるがこの辺りは薙ぎ倒され、折れてしまっている。
この森もだいぶ静かになってしまったんだな。
あの頃なら、エルフの集落が彼方此方にあって、「森を傷付けるのは許さん!」とか言いながら出てきて一悶着あったもんだ。
自分の引き篭もるのに最適だなんて思ってたから、エルフも近寄らない森の深いところを貰い受けて、その代わりと言ってこの辺で取れる珍しい植物を渡したり対処出来ない魔物が出たら撃退してたんだよなぁ。
記憶を頼りに街があった方へ歩いているんだが、辿り着かないんだよなぁ。
おっ? 魔素レーダーに感有り。 記憶は確かだったようだ。
街のある方から、かなりに速さで近付いてくるものがある。
大雑把に見れば、そこそこ大きな物体が二つ。
移動する速度も空飛ぶタイプの魔物でもないだろうし、さっきの船みたいなものだろうか。
せっかく、こっちに向かってきて来れてるんだからこの辺で腰掛けて待っておくとするか。
おぉ、きた。 丸い球体の物が空から降ってきた。
正確には、あの飛んでる何かからだが。 ひぃ、ふぅ、みぃの……、6体か。
お、動き出したな。 足が出て、腕が出て? 頭らしきところには輝く水晶体のような物がある。
自分が使う魔素レーダーまではいかなくても、此方を探っている様な波があるな。 うん、ちょっと不愉快。
黙らせる事も出来るが、ちょっとだから油断せず、気にせず。
周囲を囲む様にして、この人形擬きが動き出す。
しかし、何で動いてるんだろうなぁ。
微かに魔素が循環しているのは分かるんだけれど。
興味深いな。
魔素レーダー上だと生命体では無さそうだな。
もう一輝、一体?一機?一隻? まぁ、単位はどうとでもなる。 知識不足なのは仕方ないにして、空中でこちらの様子を見ている方には生命体が居るのは間違いない。
うーん、こういう時は両手を上げる事で敵意はありませんっあばばばばば!?
待て待て、何もしてないぞ?
あ、わかった。 この人形擬きからなんか発せられてるなと思ったら言語じゃないか。
しかも、これ、勇者の世界の言葉だろ? 確か【ニホン語】だわ。 【動くな】って言ってるんだな。
これは、自分が悪い。 当時の公用語じゃ無くなってるのを考えてなかった。
でも、いきなりこっちを探るレーダーみたいなのをぶつけてきて、動くな?って聞き慣れない言葉使ってきて。
自分が勇者と【マブダチ】じゃ無かったら、大変だったんですよ?
だから、今、なんか電撃放ってきた人形擬きを壊した事はお互い様ということにしてほしいな。
【不審者め!! そこを動くんじゃない!】
あ、意識したらちゃんと空に浮かんでるあそこからも声聞こえてきたな。
不審者? 何を言ってるんだ。 紳士的に座って待ってたじゃないか。
自分の姿をどこからどう見て、も?
オゥ! そうか、着ていた服も全部吹き飛んでるんだな。
ここに来るまで、ずっと裸だったってこと?!
空の上からも、ずっと見られてるような気配を魔素レーダーで感じてはいたけれど。
なんか申し訳ない。 あー、服、服はあったっけ?
無いな。
「すみませーん、お互いに行き違いがあったみたいです」
服はさっきの落下物のせいで、燃えたか何かして無くなった事を伝える。 ついでに、人形擬きを壊した事を伝えておく。
【公用語を話せないのか?】
「あー、少し。 わかる」
わからない訳じゃないんだが、とりあえずは相手が誰か分からないからな。
おっ、ロープのような物が垂れ下がってきた。 誰かしらここに、直接降りてくるようだ。
着ている服と兜で顔や種族は分かりにくいが、身体に流れる魔素は、エルフだと言うことが分かる。
いや、変わりすぎだよなぁ。 少し離れた距離に立ち、自分との間には人形擬きが3体も立ち塞がっていた。
まぁ、その程度壁にもならないと思うけれど。
やっと、この状況がわかるのかな。
相手の出方をもうしばらく伺おう。
色々挑戦したく投稿しました。
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