味方の味方は、本当に味方?
アレクセイⅢ軌道ステーション
仮設ステーションとして、旧型のステーションを運んで来た人類種統合軍はアレクセイⅢの軌道上で周回軌道へと入った。
アレクセイⅡにあったステーションよりも大きく、艦隊への補給・整備する設備も整っており
その中でも、一際豪華な部屋だと思われる一室にイナトは招かれていた。
人類種統合軍のホグ・ゴーンと言う艦隊司令官男の命令で旗艦艦長が直々に部下と護衛を連れて目の前の椅子に座っている。
ここに案内されるまで、丁寧ではあったが相手の思惑がわからない。
艦長はダ・クワンと名乗り、手を差し出してきた。
そのまま握手の意味で捉えて良いのだろうか、と思案しているとスッと手を下げられた。
背も低く中年太りをしているが、芯はがっしりとしている印象を受けた。
ダ・クワンと名乗った彼の、今回派遣されて来た彼の艦隊は元々、ここアレクセイⅢの転移門を修復を行いながらアレクセイの防衛に配備される予定だった艦隊らしい。
旗艦を預かる身として、到着してみれば転移門の修復は進んでおり、アレクセイから連絡が入っている筈が到着とほぼ同じタイミングでダ・クワンの元に知らせが届く。
寝耳の水とはこの事を言うのだろう。
特に、ダ・クワンをはじめとしてドワーフの工廠艦も附随している事から彼らの能力であればこれだけ大きな転移門を修復させ、再稼働させる事が出来るのは納得であろう。
転移門に何が起きたのか幾つか質問されたりしたが、勇者教からは自分がやった事は伏せて然るべき時に説明する予定だとも聞いている。
自分は、勇者教から依頼を受けてアレクセイⅢの調査を行なっている事は事前に説明している。
ダ・クワンは手元に届いた自分の資料を見ている様子だが、勇者教が過去の事等の必要最低限を残して記録閲覧に制限が掛かっているとかも聞いた。
余計に怪しく無いか?
「イナト殿の身元保証人は……、勇者教ねぇ」
「聖女イーリアス様にはよくしていだたいていますよ」
手錠や拘束具等は着けられていないが、いつまでもここで拘束されているのも良い気はしない。 必要以上にする必要は無いと思っているが、協力する気ではいるんだ。
早く解放してもらえないだろうか、と考えているとダ・クワンは一つ溜息を付くと時計を見ていた。
「まぁ、良いでしょう。 まだ何度かお話を聞かせてもらいます。 アレクセイ星系からは離れないでもらいましょう」
「わかりました」
相手がどんな事をしてくるかも分からないし、敵では無いのだから笑顔で対応する。
状況が変われば、また何かの機会が巡ってくるだろう。
船へと戻るまでは護衛と称した監視が付いて来るのも受け入れよう。
艦内あまりジロジロと見るのも良くないかなと思いつつも、観察してみる。
ほぼ、ドワーフで構成されている様子だ。
どんな装置で防御されているかまだ分からない。
今は敵対している訳でもないのだ、レーダーで調べるのは後回しだな。
ただ、ハクバに戻ってすぐに何かされてないか調べてみる。
爆発物など危害が加えられる様な物は取り付けられてはいないし、使用した燃料分は補給までしてくれた様だ。
ハクバのセンサーでも、異常は無いと出ている。
そう、異常は無いと出ているのに、うまく隠された追跡装置の様なものが仕込まれている様だ。 これはどうするか。
すぐに害があるものかもわからないし、そのまま放置するのもなぁ。
「如何しましたか?」
「いや、問題無いんだ。 あと残ってる仕事はあるかな?」
ハクバが送られてきた連絡等、分かりやすくまとめてくれていた。 うん、今急ぎではなさそうである。
ハクバでさえも誤魔化しているこの装置はこっちの情報を観測出来る様子だ。 正直に言って、隠す様な事は何も無いんだ。
今はこのままにしておいて、後で邪魔だと思ったら解除するなり壊すなりしておけば良い。
いっその事、向こうの情報も持って来れる様にすれば良い。
向こうが先に仕掛けて来ているんだ。
保険みたいなもんだよ。
此方の映像を見ているだろう何かに向かってそれとなく視線を送ってみる。
何処かのAIだろうなぁ。
「まぁ、いい。 まだ周れていない地域もあるんだ。 ハクバ、発進準備頼む」
向こうの管制室へ船を出す連絡をちゃんと出す。
止められるか難癖つけられるかとも思ったが、すんなりと発艦する事が出来た。
気が重く感じているのは、アレクセイⅢの重力が身体を捉えたからだろう。
残りの仕事も片付けようか。
初めまして。
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