流れに身を任せるのも、また一興よね
アレクセイⅢへと到着すれば、ハクバを操縦したり自動運転でのんびりする時間は作れるだろうか。
携行食はしっかり積んできているから、しばらくは帰らなくても済む。
まぁ、イーリアスに仕事としてアレクセイⅢの状態も見ていてほしいと依頼は受けているから、それはちゃんとしておこう。
実際には、自分は降りたりする事は無いらしい。
勇者教でハクバの格納庫へ搬入されたドローンが調査を済ませてくれるそうだ。
しかも、ハクバがすべて管理し制御するので自分に仕事は無かった。
しかし、手に入れた船でどこか遠くまで行ってみたいと考えていたのに、気がつけば大所帯になろうとしていた。
輸送船だけでも三隻。 全てを動かす訳ではないのは幸いだったが、これがフラグとは思いたく無い。
トラブル体質なのは勇者の専売特許だったのになぁ。 よく勇者の事思い出しちゃうな。
やっと平和な時間が取れるようになったのもつい先日である。
宙賊の被害も落ち着いたからか、多少船の往来が増えた気もする。
たまに、すれ違う船も居たりして新鮮だった。
早く転移門の使用も出来て平和になれば自分も色んな星に行ってみたいものだ。
生まれ故郷であるアレクセイも悪くはないのだが、せっかくなのだ。 転移門は、勇者教に任せている。
実際に、どの程度使えるようになっているのかの確認だったり船の往来を安全に行えるようにする為の星図を登録しなければいけないのだそうだ。
それをしっかりしないと、転移門に入って出られないなんて事も起きてしまう可能性があるそうで自分ではそれは出来ないから勇者教とアレクセイの政府から派遣されてきたチームが色々としているらしい。
転移門の護衛や、その周囲の安全は勇者教から新たな艦隊が現在は管理運営しているそうである。
ハクバの自動操縦でアレクセイⅢの惑星圏内に着くと、まずは簡易ステーションの方へ向かう。
本来のステーションは、事故で完全に崩壊しており使う事は出来なくなっている。
修復して使うより、資材として解体した方が早いと判断した様だ。 汚染も酷いらしい。
その代わりの機能を持ち代替する事の出来る船があった。
勇者教の艦船の中では一番大きな船である航宙艦が存在していた。
アレクセイⅠに駐留している勇者教の旗艦である。
側では、何隻かの船が作業しているが大きさが比較にならないだろう。
なんだあのデカさは。 カタパルトに当たる部分にはハクバよりも大きなである護衛船が係留されている。
忙しなく動いている作業船や、商船らしき姿はアレクセイⅢの周囲を飛び回り、デブリ帯の処理や新しいステーションの建設を行なっている様子だ。
アレクセイⅢの惑星内部の方には手が回らないと言っていたが、それも仕方ないのかもしれないなぁ。
惑星上に降下する許可はもらっていると航宙艦内に設立されているアレクセイⅢの管制室へと報告すると、二つ返事で許可が降りた。
勇者教の上からもう話もついているらしい。
管制室から惑星上へと降下する航路の割り当てが送られてきた。
ハクバが安全に、何の問題も無く惑星上へと降下して行く。
まずは、地上に建設されていたはずの宇宙港へと向かってみようか。
入植前に事故が起きてしまって、人的被害は抑えられていたらしいのだが、それでも被害は出ている。
損傷の少ない滑走路へと船を着陸させると、後部格納庫からハクバの管制の元でドローンが展開されて行く。
「ハクバ、自分も降りていいか?」
「魔素の濃度も落ち着いている様です。 どうぞ」
船を降りて、身体をグッと伸ばして軽くストレッチを済ませる。
久しぶりの魔素レーダー!と叫んで周囲の索敵だ。
うーん、なんだろうな。 何かが引っ掛かる様なんだがまだ確実では無い。
生きている何かでは無く、そこに漂っている様な存在とでも言おうか。
ドローンの一部が遺体を見つけたらしく、どうするかハクバから連絡が来たので丁重に弔うからと近くの森から木を切ったりして棺桶を作る事にした。
ドローンでやると言うが、気持ちの問題だったので遺体を回収する様に指示を出す。
そんな上手く作れるわけでは無いだろうが、一つ一つ丁寧に作っていた。
規格だったり、遺体が損傷しない様にする為のアドバイスはハクバからもらって作っていく。
施設内からは、十三体の遺体が見つかった。
服装から、スタッフだと思われる。
どこで見つかったのかと聞くと、管制室とマスドライバー側の制御室らしい。
マスドライバーは、地上から宇宙へと資材など自力で宇宙に上がれないコンテナ等を打ち上げるものらしい。
管制室で見つけた最後の映像が残っていたらしい。
当時、数百人のスタッフが既に常駐しておりその家族もいた様だ。
転移門の暴走が始まり、限られた時間の中で脱出する船には全員が乗れない状況。
魔素の余波で軌道上とも連絡が取れなくなった中で、最後の頼みの綱としてマスドライバーから物資を打ち出すコンテナ内に僅かに助かる可能性を求めて子供や女性を乗せていって打ち上げたらしい。
外の惨状を思い返せば、不可視の腕で回収した遺体の中にはコンテナの中で見つかったものもあり、残念でならない。
最後の最後まで家族の身を案じて、自分は脱出を諦めた中で祈っていたのだろう。
魔素レーダーに引っかかったのは彼らの想いが残った残留思念というかゴーストみたいなものだったのだろうか。
すぐに持って帰れる様な状況では無いから、ハクバから軌道上の航宙艦へ回収出来るか此方で埋めて弔おうか確認の連絡入れておく。
入植者が住む予定だった街へと移動して行く。
道が一本通っているだけなので、すぐに着くことが出来た。
ここからさらに惑星内を開拓して行くはずだったのだろう。
住宅内に入ってみると、急いで逃げ出したのだろう。
散らかっていた。
なんだか、やるせない気持ちもあるし自分がその時にいれば何か出来ないかとも考えたが、無駄な考えだった。
終わった事である。 勇者に感化され過ぎたと笑ってしまった。
どの施設も、汚染濃度も減り問題は無さそうだ。
地上に降ろされていた鉱山や海洋資源の採掘重機類も問題無さそうだ。
しばらく動いてないだけで、しっかり整備すればどれも使えそうだ。
数日かけて、調査は完了した。
これが、アレクセイⅠやⅡであればとんでもない事になっていただろう。
レポートをまとめ航宙艦の管制室へと送って、依頼は完了である。
イーリアスからも航宙艦経由で御礼の連絡が来ていたので、同じ様に経由して返事を送っておいた。
ハクバの整備と、燃料の補給を済ませている間はのんびりと過ごす。
動植物は、魔素濃度の影響が少なかった南半球側に生き残りがいた事に驚いた。
ハクバも妙に興奮していた事を覚えている。
ドローンで捕獲し、検査すると魔素の影響で身体の向上が見られているらしい。
楽しそうにしているのを見て、笑って見守る事にした。
それから数日経った頃、アレクセイⅢを出て航宙艦へと向かうと自分が惑星の調査をしている頃に宙賊の襲撃があったらしいのだが、すぐに撃破され拿捕された事件あったらしい。
前に潰した宙賊の残存勢力がまだいて拠点に帰ってきたところだったのでは無いかと言う。
その程度だったからか、しばらくは平和に過ごせていたのだ。
つい先ほどまでは……。
人類種統合軍、そう名乗る艦隊が目の前に展開していた。
勇者教の航宙艦もさらに巨大な戦艦と、その周囲に浮かぶ巡洋艦が何隻もいる。
あれだけの船団を持っているなんて、考えられないな。
アレクセイⅢの転移門の修復とその開通の目処が経ってから時間は経っていない。
アレクセイの政府から何度も転移門の修復を依頼していたのに、今になって慌ててきたのだろうか。
修理する為の船や資材船らしきものは見当たらないが……。
管制室が騒がしくなっているのが伝わってくる。
人類主統合軍、ね。 ハクバに情報をまとめさせて資料に目を通していく。
「なるほどねぇ」
味方、なんだよな。
初めまして。
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