お片付け、お片付け
救出出来た生存者の中でも動ける者やそれを管理させられていた事で分かる必要な物を宙賊の拠点から回収して行く。
ハクバにスペースがあってよかった。
まぁ、行動を始めてからしばらくしないうちにハクバを通してアレクセイのステーションへ連絡が行っていた事もあり勇者教の船が三隻も此方へ派遣されてくるそうなので、後の事も任せられそうである。
漂流して離れてしまっている今まで犠牲になったであろう遺体も見かけている。
勇者教が到着するまでには回収しておくに越したことは無いだろう。 そのまま外へ捨てられた被害者の亡骸を捜索してみると、かなりの数が放棄されていた。
状況が許されておらず、放置していたのか、そうせざるを得なかったのかは分からないのでなんとも複雑な気持ちである。
ハクバが到着し、それぞれの家族と抱き合ったりしている。 離れ離れにされていた家族や仲間との再会の邪魔にならない様に外へ出る。
おかしいね、雨でも降ってきたかな。
御涙頂戴、苦手なんだよなぁ。
船が到着するまでは、しばらくはハクバで身体を休める様に説明させておけば安心だ。
まさか、ハクバを奪って行くなんてことは無いだろうな、無いよな。
魔素レーダーと、魔素を使った不可視の腕を使って、優しくゆっくりと回収する。
不可能は無いのだよ? むしろ転移門を設置する為の場所だからのか、設置したからなのか魔素が豊富な為に出来る事だ。
しかし、この拠点に付近は宙賊の犠牲者が多いが、転移門を設置しようとした時の遺体も見つけてしまった。
その遺体を辿って転移門付近へと腕とレーダーを伸ばすと高濃度の魔素を一瞬で浴びてしまった遺体が多い。 数が多すぎる、大規模な作業だったんだろうな。
転移門どころか、ステーションの廃墟までそこにはあった。棺桶なんて無いしなぁ、仕方ない。
とりあえずは、簡易的にだが転移門の近くを漂っていた船を借りて、っと。
どんな力が加わったのか、酷く捻れて千切れてしまった船だったが格納スペースは被害は無さそうである。
勇者教のマークも入ってるな。 これは、イーリアス案件だな。 ぶん投げよう。
すいすいすいーっと、集めていきましょうか。
この魔素がこれだけ濃いのならば、普通の生物が生きていくには難しいだろう。
転移門付近の遺体を運ぶのも難しそうだな。
たとえ、この場所から移動出せたとしても、その魔素濃度が簡単には落ちない。
まぁ、自分には全然問題無いんですがね。
むしろ、元気になるんでもっとほしいかな?
備蓄しておけば、何かあった時にそこから使えるんだよなぁ。 個人での魔素保有量なんて法律あったっけか。
調べても出てこないな。 まぁ、もらっておいてダメだったら諦めようかな。
しかし、惑星の転移門ねぇ。
開拓惑星だから、アレクセイみたいな居住者も少なかったのかね。
地上の様子は、ちょっと遠過ぎて見えないか。
『勇者教の船が到着しました』
「あ? もう?? 早いねぇ」
見つけられた範囲の犠牲者はこれで全部だな。
宙賊? 知らんな。 全部暴走中の転移門へポイだ、ポイ。
見事な分子レベルまで分解されて消えたよ。
『イナト様、どうされましたか?』
「あぁ、アサさんも来てくれたんですね」
『はい、イーリアス様が出られると仰いまして。』
部下は大変ですねぇ、なんて笑い話をしてお茶を濁す。
知ってた。 魔素レーダーでばっちり感知していたからね。
犠牲者の遺体をどうするかと聞くと、家族が引き取る等ある場合もあるらしく、それ以外は灰にしてしまうそうだ。
そういった事は任せたいと説明すると彼女は快く引き受けてくれた。
何よりである。
ついでだ。 転移門付近の当時の事故で犠牲になったであろう遺体はどうするか相談してみるか。
「はっ? イナト様が何を仰っているのですか?」
聖女でもあるイーリアスは救出された人達の相手をしているから、護衛は他のものに任せて先にアサが隣に立っていた。
そのままの事を伝えたのに、何を言うのだろうか。
「転移門の犠牲者とイナト様は仰いましたよね?」
「うん? 言ったね」
「あの、転移門が見えるんですか?」
「うん、そこに。 あいや、座標は離れてるだろうけれど」
あれだけ大きな転移門だろう?
確かに、形は崩壊して歪になっているところもあるが見えるはず……。
あ、だめだ。 アサの表情を見るに、本当に見えていないらしい。
イーリアスもやってきたので、アサにもした様に転移門の方に向かって指し示す。
あ、だめだ。 見えてない反応だ。
二人に、自分が見えている状況を説明してみるがうまく噛み合わない。
魔素の濃度で見えなくなっている様だ。
「イナト様であれば、もしかすると転移門の動力を止めたり出来るのですか?」
実際に、自分の目で見て触れている。
魔素で作った腕であるから、動作の邪魔にならないのであればいけそうだが……。
あ、これはだめだな。
入り組んでいて、管制室での細かい作業に向いてないみたいだ。
魔素アーム、もう少し改良が必要だな。
「直接行ってみたら、どうだろうか?」
「ありえません!」「死ぬ気!?」
おぉ、大反対の様子。
これ、魔素の濃度を自分だけなら余裕なんだよな。
誰かと一緒に、とか別の方へ意識を向けておく必要があったりしなければ。
ハクバ、も流石に無理よな。
とりあえず、自分が様子を見て帰ってくる。
対策を練って、どうするか判断しようとなった。
勇者教の船でさえ、規定値を超えた魔素から身を守る術がないと言う。
幻獣なら、あの濃度の中でも平気で活動できるらしいが。
まるで、自分もあれと同等の存在とでも言うのだろうか。
知性なんて感じなかったけれどなぁ。 破壊の権化だと思う。
それを考えれば、もう自分は理性的な紳士よ。
うんうん。
初めまして。
色々挑戦したく投稿しました。
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