目覚めたら、知らない空でした(裏)
指令室のスクリーンに映し出される宙賊の船を睨みつける。
最終通告から、指定された時間は刻一刻と迫っていた。
状況は最悪。
辺境宙域にあるアレクセイⅢには惑星周辺宙域を警邏する巡視船しか配備されていなかった。
アレクセイⅠであれば、この宙域を防衛する軍の艦隊が駐留していたものの。
しかし、今このタイミングではどうにもならなかっただろう。
幻獣群が出現した報告が上がっていたことから、向こうで手一杯のはずだ。
そのタイミングを測っていたのだろうか。
目に前には、宙賊の船が三隻も現れ、うちの巡視船へ襲いかかってきたのだ。
【ナガレⅠ】、【ナガレⅡ】はこのアレクセイⅢに駐留する唯一の艦船であった。
宙賊側は、型落ちである軍艦だったのも悪かった。
此方の攻撃は、強力なシールドで阻まれてしまい時間稼ぎするまでも無く撃沈されてしまったのだ。
巡洋艦1隻と駆逐艦2隻の編成である。 型落ちだとしても、同盟軍の軍艦である。
どこかの敗走した艦隊から離脱して宙賊に堕ちたんだろう。
救援信号も、あちらの艦からジャミングされておりどうにもならない。
向こうの要求は、金と女、補給物資だ。
差し出せば、ステーションと惑星へのこれ以上の攻撃は止める。
そして、この先も宙賊への貢物を出し続けろと言う。
しばらくはそれで雲隠れでもするんだろう。
「管制官、【ナガレⅠ】、【ナガレⅡ】の生存者は?」
「脱出ポッドの確認は出来ませんでした」
念の為、準備していた救命艇に待機命令を出す。
このまま出したとしても、宙賊の的になるだけだ。
突如、指定室に警報が鳴り響いた。
「隊長! スクリーンを!!」
なんだあれは……。
強力な魔素を含んだ何かが、宙賊の船へと向かっているのだ。
警報が鳴ったという事は、シールドでは防げない可能性があるという事である。
宙賊の船でも同じなのだろう。
軍艦の強力なシールドでさえも防げないのか、スクリーンで見ても分かる慌てっぷりで回避コースを取ろうとするのだが。
二隻に当たった不可視の攻撃で、爆発している。 その爆発は巡洋艦でさえも巻き込んでいた。
「対ショック防御!! シールドの出力を向こうに全部回せ!!」
何秒経っただろうか。 シールドに変調は何もなく爆発したはずの宙賊の船は跡形もなくなっていた。
「援軍が来てくれたのか??」
「いえ!ジャミングも解除されましたが、周辺宙域には味方艦が存在していません」
何が起きたんだ。 ステーションの管制AIに解析させる。
惑星側を映していた望遠カメラから情報が上がってくる。
スクリーンに映し出されたのは、クレーターの中央に印が立つ。
スタッフが見守っていると、一人の男性が映し出された。
全裸である。 まさかと思うが、巡視船の乗務員では無いようだ。
あのポイントは、巡視船の大きな残骸が落ちてしまった場所らしい。
恒星間の航行が可能になった今でも、あの地域は確か勇者信仰が深く、俺の子供の頃にも勇者と魔王の戦いの御伽話を聞かされたもんだ。
深い森の奥に、勇者に倒された魔王が封印されていると。
倒されたのか、倒せずに封印されたのかどっちなんだと突っ込んだものだ。
管制AIに記録を戻させると、残骸が落ちて爆発。
木々が倒されて大きなクレーターが出来た。
土埃が落ち着いてくると、やはり全裸の男が立っている。
何か動いている様子なのだが、よく見えない。
まるで、蜃気楼の様に彼の周りがぶれていく。
魔素測定をすると、かなりの高濃度で空間が歪んでいる。
揺らぎが、二つの球体になると突然消えた。
「間違いない、この男が何かしたんだ」
タイムスケジュールを確認すると、この後宙賊の艦隊が消滅するところだった。
「こ、こいつはどこに行った?」
「わかりません。 近くの街に連絡していますが被害状況が大きい様で回線が」
「基地へ連絡して、大至急捜索を。 あの男が何をしたのかまだはっきりと分かっていない状況は、まずい……」
色々挑戦したく投稿しました。
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