トラブルが勝手にやってくる
貨物船の様だ。 所々に大きな穴も空いているし、ボロボロである。
船に近付くと、ハクバから微弱なレーダー干渉が確認出来たとの報告が上がった。
ただし、目の前の貨物船では無く、周囲を索敵している様な動きらしい。
この船を探しているのか、船に釣られてくる別の船を狙う為の餌でトラップだったのか? 今の所、周囲には何も見えないが、どうもきな臭い。
ハクバのセンサーでは、船に動きは無い様子で何処からか流れてきた漂流物ではないかとの事だった。
船籍番号もあるらしいが、消息不明で削除された履歴が残っているらしく、ここアレクセイ所属の物ではない。
船の動力は一部の機能を残してダウンしており、呼びかけに応答しないのも出来ないのが理由みたいだ。
船の艦橋に当たる部分が無い。
管制AIも機能していないのではないかと言う結論に至る。
このまま漂流物として処理する事も出来るのだが、どうにも気に掛かる。
漂流物に関しては、ある一定の大きさを持つ物は発見者が破壊、もしくは回収し所有権を持つ事ができるのだ。 処理する前に、色々見ておくのも悪くはないはず。
ハクバの判断を疑う訳では無いのだが、勘がそう告げるのだ。
魔素レーダーで、反応を調べてみると……いた。
船の奥、唯一生命維持装置が作動している区画がある。
そこに小さな生命体の反応はあるのだ。
通常のレーダーで見つからないようにしたのか?
ただ、そこにいる生命体が動きが鈍いと言うかほぼ動いていない。 死んでいないだけかもしれないが、確かに生体反応があるのだ。 三、いや六人か。
「ハクバ、船を寄せてくれないか?」
「はい、船長。 何か回収しますか?」
「ちょっと気になってな、もしかすると何かあるかもしれない」
貨物船へ接舷するが、向こうからの反応はやはり無いままである。
ハクバと繋げて、貨物船のシステムを掌握するか聞かれたが、今はやめておいた。
エアロックから出て、貨物船へと空いた穴から中に入る。
奥のエリア以外は、酸素もなく息も出来ないだろう。
ところどころ、部品が外されたり壊されているかというような様子が見てとれる通路を進んでいく。
事故で何かあったかのようには見えない。
ゴミ捨て場に放置された物から使えそうな部品を取っていった様に思えた。
貨物室の側面の空いた穴と、艦橋の損傷以外は綺麗に見えていた理由も宙賊にでも襲われたのだろう。
だが記録が古い記録のものが今どうしてここにあるのか。
生体反応があった部屋の前へ着くと、中の様子を伺う。
「おい、中にいるやつ。 返事出来るか?聞こえるか?」
何度か扉もノックし、反応を伺う。 いきなり開けて、誰もスーツを着けていないとかだと目も当てられない。
一気に全員が御陀仏だ。
「誰、ですか?」
男の声、だいぶ若い。
「イナトという。 この貨物船をたまたま見つけてな。 君達がいるのが分かったんで声をかけている」
なかでこそこそ話している様子だが、丸聞こえである。
女の子で精霊の導きだ、とか言っているな。
聖霊教の教えか? データベースにあったな、そう言えば。 勇者教の中でも、勇者を教え導いた女神とその使徒である精霊がどうとか。
「船長、失礼します。 別の船が三隻接近しています。 こちらも識別信号はありません」
「宙賊か?」
「可能性は高いです」
通信を切って考える。 残された時間は少ない。
仕方ないか。 このまま残していくの偲びない。
「確認だが、君達はスーツは着用しているのか? 息は出来るか?」
「何故ですか?」
さっき返事してきたやつだな。
「急ぎだからな、出るか出ないかは自由だ」
「私たちにスーツは、もう酸素も残り少ないんです、何時間も持ちません」
また別の少女の声がする。
もうめんどくさいな。力技かもしれないが、全員にヘルメットを着用して部屋の真ん中に集まれと伝えて、一気に魔素を手に集中させて部屋一区画を纏めて切り取った。
「船長、力技すぎます」
「いいからいいから、ハクバはこのエリアを収容できるな?」
「この程度の大きさでしたら」
「すぐに頼む。 息が出来ませんでしたって死なれたら困る」
了解と返事が来た。 すぐに貨物室から荷運び用の補助腕が伸びてくる。
宙賊が、面倒だ。
敵味方信号も無い、ハクバには改めて所属不明の船舶へ停止する様に通達は送らせている。
返答無し、向こうの兵装がハクバへレーダー照射されたタイミングで用意した魔素ミサイルを叩き込んで戦いは一方的に終わった。
生体反応は無し。 どっから湧いてきたんだろうか。
ハクバに改めて航路の割り出しを頼もう。
宙賊の船の残骸も勿体無いし、何かあれば使い道もあるかもしれない。 武器や弾薬に誘爆しないように手加減したから、船体はある程度残っている。
貨物船と共に宙賊の船も牽引してアレクセイステーションへ向かうことにしようか。
初めまして。
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