ハクバ、発進!!
アレクセイⅢの勇者教の船渠へと到着すると、すでに船の準備は完了しており受領はスムーズに終わってしまった。
型落ちとは言え、新品同様に整備までしてくれたらしい。 まさか、新品では無いよな? 考えすぎだと思う事にしておこう。
小さい方の部類には入る船のおかげで船の運用には最低人数は、船の長である人員が1名いればいい。 船は一人でも動かすこと自体は出来るのだ。 AIが発達しているおかげではある。
自分がこれからどうしたいのか、また船によって必要な部署や人員が必要であれば増えていくのだが、これからどうするかは自分の仕事である。
イーリアスや、アサからも勇者教から人員の派遣も検討していると申し出もあったのだが丁重にお断りしておいた。
高度なAIによるサポートがあり、今すぐに必要と言うわけでも無く後で必要であれば自分の船長宣言と申請、承認されれば人員は増やす事が出来るのである。
最後に、勇者協会との直通周波数の設定は再度行われイーリアスとアサとの連絡先を交換する事になった。
もっと他にも申し出があったそうなのだが、代表してこの二人と交換する事になったらしい。
ただ、希望者にはせめてもとサインを送っていた。 なんでだ? 端末で一斉送信出来ただけ楽だったが、こんな名前を描いただけで喜んでもらえるのなら、まぁいいか。
起きてからここまで世話になったイーリアスとアサにも、礼を伝える。
彼女達は、これから教会の仕事へと戻るのだそうだ。
忙しい中、こんな自分の為に本当にありがたい。
見送りも不要と伝えて船に乗り、船長が座る椅子へと掛ける。
船名は、【ハクバ】である。
白い馬を飼いたかったんだよなぁ。 でも、なぜだか嫌われちまったと言うか、やっぱり勇者の方に懐いてしまってなぁ。 やっぱり、一、二発程度は殴ってもよかったかもしれない。 うん。
ハクバ、出航せよ! なんて言う日が来るのか?
ちょっと恥ずかしいな、保留で。
「エンジン始動、目標は……」
自分が封印されていた場所を指定する。
封印とは名ばかりだったから、まぁ、変な感じはするよな。
上空から見える景色は、封印が解けてからだいぶ変わっていた。
一面が焼け野原だったのに、すでに木が育ち森で覆われている。
あの事件があってすぐに植林が行われ、緑豊かな地に戻ったらしい。
全て元通り、とはいかないだろうな。 そこにあったはずの自分の家はもう無いのだ。
ん? どの程度残っていたかも覚えていないからそもそも家の形はあったのか?
『船長の館も再現されております』
「んっ!?」
びっくりした、この船のAIだった。 どうも、声に出ていたらしい。 疑問だと思ったAIが反応したらしい。
魔素レーダーでスキャンすると確かに見覚えのある家がある。
本来ならば、だいぶ朽ち果てていた部分もあったそうだが今では立派な建物に建て替えられているそうだ。
勇者教の巡礼地の一つらしい。 巡礼地ってそんな大層なもんになっているのか。
まぁ、帰るかどうかはまだ考えていない。 好きに使ってくれたらいいんだ。 思い出は心の中にってな。
地上管制官とAIが飛行ルートの確認を行ってくれている。
宇宙に出てしまえば、ルールを守れば自由らしい。
もちろん、位置情報は欠かさず出しておかないといけない。
位置情報や船の情報を切っていると宙賊や怪しい考えを持っている船では無いかと余計な疑いを持たれてしまうからだ。
其処の所は、AIに投げているので問題は無いのだが。
AI、AIか〜。 名前で呼ぶのもありかもしれない。
船の名前も、ハクバだし、ハクバでいいか。
「なぁ、名前を付ける事は可能か?」
『名前ですか? 製造番号でしたら』
「いや、名前だよ、名前。 簡単かもしれないが、何か必要な事があればハクバって呼ぶことにするよ」
『ハクバ、船名ですが?』
「まぁ、良いじゃ無いか。 嫌か?」
『拝命致します。 これより私の名前は、ハクバです。 よろしくお願いします、船長』
アレクセイⅢの重力圏を飛び出し、宇宙へと到着する。
艦橋の船長席から見える宇宙は、また違うように見えた。
感動していると、ハクバからレーダーに敵味方識別信号が切られている船がいると報告が上がる。
早速、トラブルか? この怪しい船に一番近いのが、うちらしい。
「ハクバ、あちらへの通信は開いてるのか?」
『応答はありません』
「何かトラブルかもしれないしな、よし! ちょっと様子を見よう。 ダメそうなら、近くの巡視船でも呼び出そうか」
『アレクセイⅢの巡視船は、現在、修理中です』
あー、宙賊の艦隊が来て戦闘になっていたらしいな。
勇者教の船も近くにはいない。 ステーションの方へは通信を送っておこう。
何かあれば、向こうで引き継いで貰えば良い。
初めまして。
色々挑戦したく投稿しました。
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