星の海へ
案内されたのは、艦橋だった。
どこか部屋を割り当てるらしいが、せっかく初めての宇宙へと上がるのだからとイーリアスに連れられて来ている。
「魔素リアクター良し」
「各兵装、主機、出力も問題ありません」
「管制塔、巡洋艦【イーリアス】が出航します」
「巡洋艦【イーリアス】、航路確認した、問題無い。 勇者の加護が在らんことを」
おぉ、船が多少揺れたかと思うと降下艇よりも少ない振動で船が浮かんだ。
よくもこんなデカい物を浮かすことが出来るものだ。
高度がどんどん上がっていく。 むしろ、地上よりも魔素が豊富ではないだろうか。 不思議なものだ。
「いよいよ、宇宙に出ますよ。 イナト様」
艦橋から見える景色が空の色からどんどんもっと暗くなっていく。
すごいな、昔地上から見た光る星々に近付いてるのか。
いや、待て、だいぶまだ遠いな。 まだ遥か向こうで輝いてるじゃないか。
色んな知識を手に入れても、実際に感じるのとでは違うんだな。
「これは、すごいな」
感動である。
もう船の外に出たら、呼吸もままならない世界である。
宇宙空間へ出たら船の中やステーション、居住型衛星などの呼吸する為の空気がある。
それ以外の外で活動するには、専用の服を着用しなければならないそうだ。
うーん、魔素を弄れば服も必要無さそうに感じているが、あまり目立った行動は控えるべきかな?
「イナト様、折角ですのでスーツも此方で御用意致しましたので」
そう言って、イーリアスに案内されて更衣室へと付いていく。
今はなんでも助かる。 初めて実際に着てみたら中々大変だった。
イーリアスの護衛をするアサと言う名の女性が手取り足取り教えてくれた。
初めは、イーリアスが直々に教えようとしてくれたのだが聖女と言う立場上で止められていた。
そんな残念そうな顔をしても、仕方ないじゃないか。
大きな二つの果物が目に毒だったのは、忘れないでおこう。 よくそれ、スーツに入りましたね? 収まっていても、大きいのがわかる。 うん、危険だ。
気を取り直して。
ノーマルスーツと呼ばれる民間から軍など、幅広く使用されている宇宙服である。
使用者によっては、これを元にカスタマイズするのだそうだ。
身体全体にフィットする様に作られていて、繋ぎ目も最小限に作られていた。
着た時はブカブカだったのに、手首にあるセンサーに触れると締まっていく。
このノーマルスーツに、フルフェイスのヘルメットを着用すると首周りにある繋ぎ目とヘルメットが装着され完全に密閉されるのだ。
着用された事をスーツと身体に浸透したナノマシンが認識して、空気中や宇宙空間にある魔素を取り込み、呼吸が出来るようになる……らしい。
すごいもんだ。
「このスーツは、船外活動をする場合では必ず着用して下さい」
他にも、戦闘中も必ず着用する義務があるらしい。
万が一、船が損傷したりすると呼吸ができなくなる。
体温も奪われてしまい、生命活動が困難になるのだそうだ。
イーリアスは、艦橋で留守番。
アサに連れられて、エアロックと呼ばれる扉から外へ出る。
船に案内された時に、二重の扉だった理由が船内の空気が外へ漏れ出してしまわないように二重にする事で気圧や空気を調整しているんだと。
おぉ、なんだこれは!? 身体が浮くじゃないか!!
歩くというより、浮かぶ、泳ぐ様なイメージだろうか。
腰のベルト部分から命綱があって船へと繋ぐ様にアサに倣っていく。
巡洋艦【イーリアス】は、大きい。
先ほど見せてもらった自分の船の数倍はあるだろう。
濃厚な魔素に包まれて、ボーッとしているだけで楽しい。
宇宙に、住もうかな?
……なんだ? この嫌な感覚は。 魔素レーダー!!
おいおい、あの辺りの波長がおかしいぞ? 空間から何か出てくるのか?
「アサさん! アサさん!」
「なんでしょう、イナト様」
突然焦った自分の声を聞いて少し離れた場所に待機していたアサが側へと寄ってきた。
空間が割れると説明すると、アサの顔色が変わった。
「艦橋! レーダーを感度大で、ヒトヒトへ照射!!」
おぉ!? 自分がさっき使ったような魔素レーダーの様なエネルギーが自分の指し示した方へと放たれた。
波長が荒いのか? 自分が感知したナニかを捉えてないぞ。
「艦橋観測員より、団長へ。 何も居ませんが」
「レーダーが荒いんだ、もう少し感度高められないか?」
今現在のレーダーは、魔素に波を起こして、そこに反射から相手を見つけているらしい。
やっていることは一緒なんだが。 だめだ、間に合わないな。
「アサさん、来るぞ」
宇宙が割れた。 今見えていた星の輝きが消えて、さらに黒く闇が口を開けるようにして広がっていく。
「バカなっ!? 幻獣だと!?」
耳元で警報音がなる。 かなりうるさく、今すぐ避難して下さいとアナウンスが鳴っていた。
イーリアスも無線でしきりに戻る様に促している。
あの大きいのは、この船よりもデカいな。
あれを中心に大小様々な個体が群れをなしているらしい。
「あれが、幻獣??」
調べたら出てくるわ、出てくるわ。
今、人類に対して敵対的な謎の生命体。
いくつかの種類があり、その全ては人類及び人類が作り出した全てに対して攻撃的である。
幻のように現れ、幻のように消える獣の様な存在である事から幻獣と呼ばれていた。
「イナト様、申し訳御座いません。 対幻獣戦闘に入りましたので、現在、船内に戻るエアロックが封鎖されており戻れません」
アサが、気落ちした声で伝えてきた。
なぁに、なんとかなるさ。 この船も強いんだろう?
おっ、船の甲板が開くと中から主砲が出てきた。
こういうのワクワクするよね、特等席でラッキーだった。
魔素が凝縮された光線が主砲から放たれる。
おぉ、幾つかの幻獣を消し飛ばしたわ。 かっこいいな。
これ、数が多すぎるか? 船が速度を上げていくが、幻獣にも足が速いのがいるらしい。
あれが、生体ミサイルって呼ばれてる攻撃か?
船を守る為に、対空砲が迎撃していく。
「マズイ、抜けてくるな!?」
念の為、周囲に溜めていた魔素を準備する。
あの、対空砲みたいに撃てば良いだろうか。
ひとつ、ふたつ、ええい、船に当たりそうなのは見えるの全部いけー!!
使っても使っても減らない魔素を撃ちまくる。
隣で、アサが唖然としている事に気が付かないのであった。
初めまして。
色々挑戦したく投稿しました。
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