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届いて欲しくて。  作者: 紫雲心広
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告白

《登場人物》

綿谷夕葉・・・物語の主人公。天真爛漫な性格で、自分の麗華への気持ちにいつも戸惑っている。成績は下から指で数えられるほど悪いが、時々頭が切れる時がある。


唯木麗華・・・夕葉の親友であり幼馴染。落ち着きがあり、物怖じしない性格で、モテモテ。男らしい口調に、男らしい性格だが、たまに女子。夕葉に好きという感情を抱き、告白をする。


茅尾柊真・・・中学生の時、夕葉と麗華と渚の四人でいつも一緒にいた。だが、渚と一緒に何も言わずに転校してしまう。旧姓は東雲。母親が親友の渚の父親と再婚し、渚とは義理の兄弟になった。夕葉と麗華とは高校で再会し、麗華には密かに思いを寄せている。


茅尾渚・・・・中学生の時、夕葉と麗華と柊真の四人でいつも一緒にいた。だが、柊真と一緒に何も言わずに転校してしまう。父親が柊真の母親と再婚し、柊真とは義理の兄弟になった。夕葉と麗華とは高校で再会し、渚は夕葉のことを良き相談相手と思っている。柊真に特別な想いを抱いている。


掘平果穂・・・流行に敏感の夕葉達の幼馴染。明るく、リーダー的存在。麗華と夕葉のことをよく見ていて、麗華の相談などをよく聞いてくれる、麗華にとってはお姉ちゃん的存在。時々本当にチャラい。


深川名月・・・軽音部に所属している、元気な夕葉達の幼馴染。いつもうるさいと言われがちだが、場を盛り上げてくれる。明るい性格。


新村晴美・・・落ち着きがある夕葉達の幼馴染。夕葉の背中を押してくれて、夕葉のことを支えているしっかり者。



綿谷花美・・・夕葉の姉。高校三年生。夕葉とはとても仲が良く、麗華のことをよく知っている。匠と同い年で同じクラスで仲が良く、モテている。


唯木匠・・・・麗華の兄。高校三年生。シスコンで、麗華のことをとても心配している。でも夕葉のこともとても心配している。麗華達とは同じ高校で、モテている。晴美が大好き。


唯木鈴・・・・麗華の妹。中学三年生。麗華には冷たい態度を取るが、実はとても心配している。夕葉が大好きで、将来結婚するとずっと言っている。果穂には色々お世話になっている。


唯木光助・・・麗華の弟。中学三年生。鈴の双子の兄。とにかく可愛いが、冷たい。名月とは音楽の関係で仲がいい。


成木一真・・・夕葉達に近づく謎の人物。

叶いっこないこの思いを、どこにやればいいかわからなかった。戸惑ってしまう。そんなことはわかってた。困らせたくなかった。なのに。言ってしまった。届いて欲しくて。


「好きだ。」

中学卒業と同時に、親友に告られた。

「えっと…それはどういうこと?私を好きってこと?麗華が?」

「…いや、やっぱりいいや。忘れてくれ。それじゃあ。高校受かると良いな。」

麗華は、そう言い去って行った。

そして時は過ぎ、高校生になった。



なぜだ。

「はぁ。」

「どうした。高校受かったのにテンション低いじゃん。」

「あ、果穂と晴美と名月。卒業式ぶりだね。」

「え、なに。あんたらしくない。なんかおかしい。」

まあそりゃあね。気まずいのはわかるよ。

でも志望校一緒とか、聞いてない。

受かったとか聞いてない。

あの日から麗華からは既読すらつかない状態で、同じクラスで前の席なのに、一言も話しかけてこないし、避けてるし。意味がわからない。

「ていうか、夕葉。麗華は?」

「そうだ。いつも一緒だったのに。どうした?」

「えーっとね…。」

「え、なんかあった?まさか喧嘩ー?」

「そんなところ」

「んなわけない…って喧嘩!?あんたらが!?」

「私もよくわからない…」

確かに、同性だし、ずっと親友だったし。急に告白してきた時はびっくりした。でもずっと親友だったから、受け止めようと思った。

なのに既読もつかないとか…。

「無責任だよ…」

「なにが?」

「いや、なんでも。」

「そうだ!!じゃあ麗華も誘って高校合格おめでとう祝いしよう。だってみんなで受かるなんてすごいことじゃん?!」

「え!?」

「びっくりした。どうした。」

麗華も…誘う?

やばいよ。空気凍るどころか低温火傷しちゃうよ!!

「私は行かない!」

「なんでよー。」

「行かないったら行かない」

「じゃあ当日家行く。それか、楽しんでるところあんたに送りつける。」

「…それは嫌だ。」

「じゃあ来て。」

「…わかったよ。」

「よっしゃ!」

まったく…何でこうなる…?


当日。

麗華と私は家が近いせいで、バスが同じだった。

そしてその日は謎にバスが混み合っていて、隣の席に座ることになった。

もういいや、恥なんて捨てて、話しかけよう。

「あー、今日楽しみだなー!み、みんな受かるなんて本当、すごいよなー!スケートとかやったことないけどできるかなー?なんちゃって……。」

「…そうだな。」

塩・対・応☆

わかってた。しっかり覚悟はできてた。

「あ、あ!そうだ!」

こうなったら奥の手を!!

麗華はクイズが好きだから、クイズ作戦!

「はい、これお菓子。高かったんだよねー!」

「…ありがとう。」

「さ、さてここでクイズ!このお菓子どこのでしょう!」

「…ボーノワール。」

「え、なんでわかったの。」

「パッケージ。」

「…あ。本当だ。」

私としたことが…。こんなんじゃ楽しめっこない…。

「ぷっ…笑」

え、笑った…?笑った?なんで?!

「バカ。笑」

やっと、やっと笑ってくれた!!!

「ば、バカって何よ!笑」

「普通、書いてあったらわかるだろ。笑…。」

麗華は私の目を見つめた数秒後に、笑顔を消して顔を背けた。

そして、降車ボタンを押そうとした。

私は「まだだよ!」と降車ボタンの上にある麗華の手を掴んだ。

その瞬間バスがガタンと揺れ、私は麗華に寄りかかる形になった。

「ご、ごめん!」顔を上げると、麗華の顔がとても近くにあった。

「!!」

「っ!!こ、ここが降りる場所だから!」

「あ、そうだったん…だ…ってちょっと!」

麗華はもう一度顔を背けて、ボタンを押し、私の手を掴んで席から立ち上がった。

お金を入れてバスから出る。

まだ三人は来ていなかった。予定の時間より5分早く来たからだ。

「麗華…?」

麗華は手を離さないまま、なんならさっきより力強く私の手を握りしめたまま、「ごめん」と私に謝った。

「告白のことも。志望校が同じって言ってなかったことも。無視してたことも。私、勝手に気まずくなって勝手に辛くなってた。辛いのは、告白されたのに無視されたりしてた夕葉なのに。」

「麗華…。謝らないで。」

「いや、謝る。告白のことも、忘れてくれ。」

忘れてくれ…?忘れてって何…。

「忘れるわけないじゃん!!!」

私は少し怒って、そう叫んだ。

「え…?」

「確かに、好きって言われた時はびっくりした。先に言わせてもらうけど、OKはできない。ごめん。」

「だよな。」

「でも。」

「?」

「麗華はずっと私の大事な親友だから。告白してくれたのは嬉しいし、ずっと忘れないから。だから、初めて告られたからこれ自分で言って良いのかわからないけど…」

言おう。

「私のこと、堂々と好きでいて!!!」

「ぷっ…笑。ははは笑」

「ちょ、何笑ってるのよ!こっちは真剣なの!」

「わかった、ごめんごめん笑」

「もう…笑」

「ありがとう。」

麗華はそう言い私をぎゅっと抱きしめた。

「その言葉だけでも、すごく救われる。」

「麗華…。」

ちょうどその時、歩きで来ていた三人と合流した。

「ちょっとそこの二人ー。何イチャついてるのよ。」

「え、あ、これ!?べ、別にイチャついてないし!!ね!!」

「うん…笑」

「笑」

よかった。これで一件落着。



…だと思っていたのに!!

なんかずっと…ずっとドキドキしてるんですけど!?


今の状況を説明しよう。

今日はカラオケの後にスケート場に行く。

そして今はカラオケボックスにいるのだが…。

今、カラオケで麗華の隣に座っているだけなのに、近くてなんかドキドキしている。

手が触れ合う距離。そんな状況は今まで何万回とあった。なのにどうして。どうしてこんなにもドキドキが止まないんだ!?

放心状態になっていると、麗華は「大丈夫か?ぼーっとしてるし。」と私の顔を覗き込んでそう言った。

「え、あ、うん大丈夫」

「本当か?」

麗華の顔がどんどん近づいてくる。

やばい。近い。でもなんか…声が出ない!

「顔赤…。暑い?」

「あっ、ああああ暑いです!!!!!!!」

特に暑いわけでも寒いわけでもないけど、私はそう叫んだ。

「え、あ、そうか。じゃあ冷房入れるな。」

「あ、うん!ありがとう!」

やっぱりなんかおかしい…。

あれだ。麗華は少し男っぽいところがあるから、それでドキドキしてるんだな。

こんなの、歌ってパーッと忘れちゃおう!!

私は、その後沢山曲を予約して歌いまくった。

「あー、歌った歌った!!!」

「びっくりするくらい歌うから笑っちゃったけどね。」

「本当酷いなー。名月は。まあ、めっちゃ上手かったけど。」

「軽音部ナメんなよ?一応有名なんだからっ!!」

「また今度聞かせてね。」

「えー…んまあ、いいよ!」

「やったー!」

できるだけ麗華には近づかない方が身のためだ!!

でもまあ…ちゃんと『五人で』楽しもう!!!

スケート場に行くと、カップルばかりだった。

「おーリア充が溢れかえってる…笑」

果穂がそういい、失笑した。

「ま、まあ私たちは私たちで楽しもう!」

「そうだね。」

私はウキウキワクワクしながらスケート場に上がった。


でも。

「無理無理滑る!!!」

思った以上に難しくて楽しむことができなかった。

そんな時。

「違う。そんなんじゃ立てもしないよ。」

麗華の声だ。麗華はバックハグする形で教えてくれた。

「ほら、支えてるから、手離して。そう。腕伸ばして、指先までしっかり安定させて。腰落として。ここに力入れて。」

「本当だ、安定してる!!」

「だろ?バランスを整えれば滑れる。」

「すごい!ありがと!」

顔を上げ、後ろを振り向くと、唇がくっついてしまいそうな位置に麗華がいた。

「!!!」

私はすぐに顔を前に向け、「す、滑ってみる!手離して!」と言った。

「OK。」

私は滑るを口実に麗華から離れた。

やばいやばい。何でこんなにドキドキするの?

心臓壊れそう。

なんで…?

「ふぅー!楽しかった!」

「ね!じゃあ私たちは歩きなので。バイバイ!」

「じゃあね!また明日!」

「うん!じゃあね!」

私たちはバス停でバスを待ちながら話していた。

「楽しかったね!」

「うん。」

「ていうか。志望校同じなら言ってよね!」

「陸上で推薦もらってたんだ。サプライズしようと思ってたんだが…」

「そうだったんだ…。もう、麗華ってそういうところあるよね。いつもサプライズって。」

「だって、夕葉が喜ぶから。」

「…ありがと。…ありがとう……。」

私は涙を流し、しゃがみ込み、ありがとうを何度も繰り返していた。

何ドキドキとかしてるんだ私。麗華は大切な親友だ。

麗華の真っ直ぐな「好き」に応えられなかったのだから、その分『親友として』大切にするべきだ。

麗華はいつだって私のために何かしてくれている。

私だって…

「ちょ、夕葉?!どうした?私何かしたか?」

私は首を横に振り、口を開いた。

「私、麗華とずっと一緒にいたい…大切にしたい。なのに、私は今まで、今まで麗華のために何もできなかった。今回、麗華が私の元から離れた時、怖くなった。もう話せなくなるんじゃないか、もう一緒に勉強することも、楽しむことも何もできなくなるんじゃないかって。」

「夕葉…」

私は下を向いていた顔を上げ、あの時麗華が真っ直ぐに言ってくれた時のように私も麗華の目を真っ直ぐと見て言った。

「だから、もう離れないで!ずっと、親友でいて!もっと、一緒にいたいから!」

涙でぐしゃぐしゃになりながら、肩に添えてくれた麗華の手を握りしめた。

これが私の真っ直ぐで、私の精一杯だ。

「夕葉…ありがとう。もう離れたりなんかしない。不安になんかさせないから。」

麗華も涙を流していた。

涙が乾いた頃、バスが到着した。

バスに乗っている間、私と麗華は、ずっと笑って話していた。

泣いていた時の私の顔が変だったとか、麗華は泣くといつも声が震えるとか。

麗華が言ってくれた「もう離れたりなんかしない」は、しっかり本物だ。私は麗華を信じる。

バスを降り、私たちは家まで歩いた。

「それにしても、この季節の窓際の席は寒いね。寒すぎる」

「わかる。暖房もないし、凍え死ぬ。」

「まあ、麗華の後ろで果穂の横で斜めは名月で名月の横が晴美っていう神席だから、席替えはまだ嫌だ。って言っても昨日入学してきたばっかりだからまだか。」

「席替えねぇ…。まだ一ヶ月はあるよな。」

「席替えまでこの席で楽しも!」

「そうだな。でもまぁ、夕葉だったら誰とでも仲良くできそうだけどな。」

「それは…なくもない。でも麗華だってモテるし?」

「私は…あんまり仲良くするの好きじゃないから。」

「人見知りだね。全くもう、麗華には私しかいないんだなー。」

話していると、家に着いた。

バイバイと別れを告げて鞄の中から鍵を出そうとした時。

「え。」

鍵がないことに気がついた。

私は家まで一人で向かっている麗華を全速力で追いかけた。

「麗華ぁー!!!」

「うぉ、夕葉?!どうした!」

「どうしようー!」

私は半泣きで麗華に説明した。

「鍵がない?おばさんは?いないの?」

「お母さん今日仕事で朝帰り。」

「花美ちゃんは?」

「姉ちゃん今日彼氏の家に泊まり…。」

「おじさんは?」

「今月は出張でいない…」

「まじか。」

麗華は、鞄から携帯を取り出した。

「ちょっと兄貴に聞いてみる。」

「匠くんに?何を?」

「もうこうなったら私の家しかないだろ?だから連れてきていいか聞いてみようかと。」

「え!?」

いやいや、「何ドキドキとかしてるんだ私。麗華は大切な親友だ。」とか一丁前に言っておきながらめっちゃ焦ってるじゃん自分!

確かに、大切な親友だよ?でも、ドキドキはそんな一瞬では消えないよ!!!

もしここで麗華の家に泊まったりしたら、ドキドキは止むどころか更に増すばかりだよ…!

「今兄貴家にいないらしい。」

「家に…いない!?なんで!」

「すごい偶然なんだが、私の親も朝帰り&出張なんだよな。兄貴は友達の家に泊まりに行ってて鈴はサッカーの大会で今家にいなくて光助も友達の家に泊まりに行ってるから別に来てもいいぞ。」

家に…誰も…いない…。それは流石にダメだ。家に二人きりということを考えるとドキドキどころか死す可能性が!

「さすがにそれは悪いよ!!」

「なんでだ?別に家には誰もいないし。」

「ほ、ホテルとか取れば!」

「でも今、手持ち少ないだろ。」

私は財布の中身を確認した。

「…1000円しかないです…。」

「ほら。」

「でも悪いよ!ほら、果穂の家ならそんなに離れてないし、果穂の家に…」

「果穂の家だって小さい女の子いるよな。なんで果穂には「申し訳ない」ってならないんだ?」

「あ、それはえっと、ほら。麗華には何回もお世話になってるし…」

「私は全然気にしない。もしかして夕葉、告白のことで気まずいとか思ってる?」

「それは思ってない!」

「じゃあなんで。」

「あ、いや、」

言えない。ドキドキしたくないからとか、言えない!

もう、仕方ない。

「わかった、よろしくお願いします!」

「それでいい。」

私はそのまま流されるように麗華の家に行った。

「お邪魔します…」

「どうぞ。」

本当だ、二人しかいない…。

作戦を立てよう。

まず一つ目。

「ゲームでもするか?」

「うん!」

私は床に座り、麗華はソファに座る。

「え、床?」

「なんか、床がいいなーって。」

「あ、そうか。」

なるべく隣には座らない。

そして二つ目。

「ご飯食べるか?」

「うん、ありがとう。お風呂借りていい?」

「ああ、いいよ。」

できるだけ二人の時間を減らす。


「はぁ。」

「夕葉ー。」湯船に浸かっていると、ドア越しに名前を呼ばれた。

「は、はい!?!?」

「アレルギーって確か無かったよな。」

「な、無いよ!?」

「え、どうした?」

「なにが!?」

「声が、裏返ってる」

「き、気のせいだよー!」

「そう、か?じゃあ、風呂上がったらここにあるバスタオルで拭けよ。服も置いておくな。」

「ありがとう!」

び、び…っくりした…。


三つ目の作戦。

できるだけ私の姿を見せない!

自分では言いたくないけど、相手に好きと思わせる行為はしてはならないと思う!

「彼シャツみたい…」

はっ!何浮かれてんだ!

私は自分の頬をビンタした。

「って言っても、リビング以外に行く場所ないしな…。」

「夕葉、着替えたか?」

ドア越しに麗華がそう尋ねてきた。

ここはあえて!

「ま、まだ!」

「わかった。ご飯できたからな。冷める前に来いよ。」

「はーい。」

そうだ。ご飯…!どうしよう!

15分後。

「流石にもう着替え終わっただろ。」

「ま、まだ…」

「嘘だな。」

「ほ、ほ、本当だよ、やだなー!」

「タオル取りたいんだけど。」

「タオル…あ、ここにある。」

私は左腕の袖をまくり、ドアを少し開けてタオルを渡した。

その時だった。

袖が、スーッと下に降りてしまった。

「あっ。」

「あ。」

私は右手で袖をあげようとした。その時。ドアが開いてしまった。

ぎぃーっと音を立てて静かに開くドアの向こうに、呆れた顔をした麗華が手を腰に当てため息をついていた。

「あ、あはは…ドッキリ…?…サプラーイズ…!…?」

「はぁ。わー、すごいすごいー。とてもすごいよー。」

めっちゃ棒。

「でしょー…!あはは…。」

「はい、茶番はそこら辺で終わりにして、事情を聞かせてもらおうか。」

私は手を掴まれ、リビングのダイニングチェアに座らされた。

テーブルにはとても美味しそうな照り焼きチキンや他にも数々の料理が並んでいる。

「わぁー!美味しそう!」

箸を持った時、「待て。」と手を止められた。

「…はい。」

「事情を聞かせてもらおう。どうして、嘘ついた?」

「うーんと、えっと…。」

ドキドキとかの事情は言えないけどこれなら言えるかな…。

「自分では言いたくないけど、麗華は元々私を好きなわけで…これは世間的には彼シャツみたいな感じじゃないですか…ブカブカだし。彼シャツってほら、す、好きな人がしてたら可愛いじゃないですか。好きと思わせる行為はしてはならないと思いまして…。」

「なるほど。OK。言いたいことはわかった。確かに可愛い。こんなに可愛い生き物は多分存在しないと思う。その姿は好きだ。でもほら、この通り。正気は保てている。」

「わお。そこまで来るとは思ってなかった。」

「いや、そこまで、ではない。もっとだが。でも、まあ。自分のためにも夕葉のためにもこのくらいにしてやる。」

麗華は咳払いをして続けた。

「あのな、私のことは気にしないで欲しいんだ。逆に申し訳なくなる。あとな、夕葉。変に紛らわそうとするな。」

まさか!私がドキドキしてるのが…!?

「私が告白したから動揺してるのかもしれないが、ふったから嘲笑いたいかもしれない。嘲笑ったら可哀想とか思ってるのかもしれない。だけどそれを紛らわそうとしないでほしい。」

「うん…って、へ?」

「…ん?」

「ぶっ…笑。ぷはははは笑」

「何笑ってるんだ。こっちは真剣なんだぞ。」

「そんなこと一ミリも思ってないよ。嘲笑ったりしてない。」

「え?」

「なんなら申し訳ない気持ちでいっぱい。勘違いしてる。」

「勘違い?私の?まじ?」

「まじ。」

「え、なんかこんなにかしこまって…笑。恥ずいな。」

「いや、でもまあ、なんとなく、「紛らわすな!!」って気持ちだけは伝わった。」

「伝わったんだ。笑」

「うん。笑」

よかった。バレてない。バレてるのかと思ってたけど。よかった。

「でもな、本当、普通でいいんだ。普通でいてほしい。」

そうだ。そうだよな。自分のことだけ考えちゃダメ。麗華のことも考えないと。

「…うん、ごめん。これからは普通にするよ。」

「ああ、そうしてくれるとありがたい。」

「うん、じゃあ食べよう!」

「ああ。」


「ごちそうさまでした。」

「ごちそうさまでした。あ、夕葉ドライヤーしてないじゃん。」

「実は…肩が痛くてドライヤーできないんだよね…。」

「え、なんで。」

「久々に動いたから肩凝っちゃって。」

「うーん、じゃあサービス。とりあえず、ソファの前に座って待ってて。」

「?わかった。」

私は言われるがまま、ソファの前に座って待っていた。

「お待たせしました。」

なんだろう。と後ろを振り返ると、麗華はドライヤーと櫛を持って立っていた。

「乾かしてあげるよ。」

「んえ、いいの!?」

「風邪引くよりマシだ。」

麗華は私の後ろのソファに座って、ドライヤーのスイッチを入れた。

温かい風と麗華の大きくて華奢な手が私の髪に、頭に触れる。

気持ち良くて、暖かくて。心地よくて。

こんな時間がずっと続けばいいのに。

「はい、終わったよ。」

麗華は、私の髪を梳かしてくれた。

「夕葉って、ボブ?」

「うーん、ボブより少し長いよね。」

「私、髪のこととかよくわかんないけど、この短さでこんなサラサラなのすごいよな。」

「そう?まあ、ゆるふわボブにするために毎朝頑張ってるからね。」

「まあ、毎日可愛いのは事実だけど、お風呂上がりまで髪型綺麗なの羨ましい。」

「麗華も髪長くてストレートで羨ましい。しかもツヤッツヤでサラッサラで。」

「でも、私もボブにしたいんだよな。」

「え、ボブ!?麗華が?!」

「や、やっぱり変か?」

「いや、似合ってるなって想像してた!」

「そう、か?ありがとう。」

麗華は櫛をソファに置いて、私の肩を揉み始めた。

「あ、ありがとう。」

「ああ。いつも世話になってんだ。これくらいやらせてくれ。」

麗華の力加減はとても丁度良くて、気持ちよかった。

「上手いね。」

「母さんによく肩叩きとかしてたからな。慣れてるんだ。」

「そうなんだ。なんか意外。」

「そうか?…あ、でもまああの人無口だからな。夕葉にとっては珍しいかもな。」

他愛無い会話をして笑っていられるのは、嬉しい。

でももし、麗華に彼氏ができたらこんなこともできなくなってしまう。

「麗華はさ、彼氏とか作る気あるの?」

「フッた相手に聞くことか?笑。」

「あ、ごめん。」

「謝らないで。冗談だ。…まあ、今は無いかな。なんてったって私は夕葉がいるからな。」

それはあれだろうか。好きだからとかだろうか。

「夕葉があれば楽しいし、夕葉と話す時間が減るのは嫌だ。だから今はどんな男が来ようと断る。」

「あー、そういうことね」

「なんか言った?」

「いや!そうなんだ!って!」

「夕葉は?彼氏作る気あるのか?」

「彼氏は欲しい。」

「へー。嫌だな。」

「え?」

「夕葉に彼氏できたら、ほら。あれだよ。…い、一緒にいられなくなる。だから嫌だなって。」

「あ、あー!そういうことね!」

「わ、私も風呂入ってくる。ダラダラしてていいから!」

「わ、わかった…。」

いや、動揺してましたよね!?

ダラダラしてていいって、この状況でできないよ…!

「と、とりあえずテレビを…」

テレビをつけると「好きな人に好きと言われた時の対応!」と流れ始めた。

「!?」

この状況でこのテレビもまずい!

私はソファのクッションに何度も頭を叩きつけた。

「もう、寝ようかな…。」

私はソファに寝っ転がった。


「…夕葉寝ちゃったか。」

麗華の声が聞こえて、目が覚めた。

でもなんか気まずくて目を瞑った。

「こんなところで寝てたら風邪引く。」

麗華は私のことをお姫様抱っこして、ベッドまで連れて行った。

そして、布団を被せて私の頭をポンポンとした。

「おやすみ。」

やっと行ってくれる。と安心したその時。

「好きだ。」麗華はそういい、私の頬にキスをした。

え…!?どういうこと…?!い、今キスを…キスをしましたよね!?

とりあえず寝よう!!寝たら忘れる!


翌朝。

「ん…。」

起床と同時に昨日の記憶が甦る。

「いやな…夢…?」

私はそう言い、寝返りをうった。

すると、横には麗華が寝ていた。それも、私のことをギュッと抱きしめながら。

こ、このベッド、シングルだよね…!?

顔近いし、ギュッとされすぎて身動き取れないし!

「れ、麗華、起きて!」

私は囁くように起こした。

でも起きなかった。私は麗華の頬をペチペチと少し叩いて起こそうとした。

すると「ん…。あ…おはよう夕葉」と言い、唇に五秒ほどのキスをしてきた。

キス…!?

頬の次は…唇…ですか!?なんで、キスしたの!!!???

数秒後、麗華は自分がしたことに自覚を持ったようで、ガバッと起きて顔を両手で覆った。

「ご、ご、ごめん夕葉!!!!寝ぼけてたっていうか、なんというか!!」

「い、いや大丈夫!!!…びっくりしたけど、寝ぼけてたんだよね!!!」

私たちは顔を赤らめてずっと謝っていた。

登校中も、二人は顔が赤かった。

「よ!夕葉!麗華!」

ギターを持った名月が、私達の肩を寄せるように挨拶をしてきた。

「!!」

「!!」

私たちはすぐに離れ、顔を背けた。

「え、喧嘩?の割には顔赤いな!ハハハ!笑。もしかして…」

名月は私達の頬を触り「キスでもしたか!!」と冗談混じりで言ってきた。

「は、はぁ!!!???」

「え、え、あ、え?そんな怒るか?ごめん、冗談だった」

「え、あ、待ってごめん!なんでもない!怒ってない!ごめん!」

「そうか?それならよかった!」

名月は笑顔でそう言い、走って行った。

「…。」

席に座ると、果穂が私と麗華を交互に見て、私に問いかけた。

「なんかあったん?」

「あはは……いや、なにも…?」

「嘘だー。まあいいや。でも、こっちに迷惑かかることはすんなよ。」

「わかってる。」

チャイムが鳴り、ホームルームが始まる。

「ホームルーム始めるぞー。出席取るから座れー。」

みんなが席に座り、出席を取り始めた時、「遅れました!」とピンク髪の男子と黒髪のイケメンが遅れてきた。

「遅刻だぞー。」

「すみません!小さい子が転んでいて、小学校まで送り届けてました。」

「そう言うことなら仕方ない。座れ。」

あ、あの人達。

「お、夕葉気がついたか。」

果穂が私の方をにやけて見た。

そうだ。中学の時に二人仲良く転校したイケメン二人組。そしてピンクの髪の子は私が元々好きだった子、渚だ。

ピンクの髪の子は別にヤンキーとかじゃなくて地毛らしい。不思議だ。落ち着きがあっていい子で、他人からの要求は断れない。私の幼馴染であり好きな人であり大切な友人だった。

二人とも、イケメンで人気があって、麗華と四人で仲良くしていた。なのに、二人は突然転校してしまった。何の挨拶も無しに。

「あの二人、仲良いよな本当。」

「ね。」

「え、びっくりしないの?嬉しくないの?」

「いや…別にびっくりはしてない。」

「えー。運命の出会いなのに。」

果穂がそう呟いた瞬間、麗華がばっと私たちの方を振り向いた。

「運命なわけ!」

「れ、麗華…?」

「あ…ごめん。」

麗華はそっと前を向き直した。


昼休み。私たちはギクシャクしたまま、自席でお弁当を食べていた。

その時、イケメン二人組が女子に囲まれているのを目撃した。

「なに、夕葉やっぱり気になるの?」

麗華の箸が止まったのが横目で確認できた。

「き、気になってなんかないよ!相変わらずモテモテだなって見てただけ。」

「へぇー。」

私は首を横にぶんぶんと振り、箸を持った。

でも、イケメン二人組は女子の集団をかき分けてこっちに来た。

「やっぱり!夕葉と麗華!」

「お、おう、渚と柊真。元気そうでよかった。」

「麗華、久しぶり。」

柊真は、真剣な表情でそう挨拶した。

周りは、イケメンの柊真が美人な麗華に話しかけているのを見てキャーキャー騒いでいた。

「ああ。」

「やっぱり、怒ってるよな。」

「別に。怒ってない。」

「突然いなくなってごめん。約束守れなくて、ごめん。」

「別に、私は気にしてない。まあ、急にいなくなった時はびっくりしたが、事情があったんだろ。でも、挨拶ぐらいしろよとは思った。」

「ごめん。言ってなかったけど、俺の母親が死んだ後、父さんが渚の母さんと再婚して、少しだけ遠くに引っ越しすることになったんだ。だから二人とも転校した。」

「そうだったのか。」

「夕葉、連絡くれたのに返せなくてごめんね。」

渚がそう言い、ハートのペンダントを渡してきた。

「え、これは…?」

「前、僕の家に遊びに来た時に忘れて行ったペンダント。渡せなくてごめん。」

「あー!ありがとう。」

「うん。」

柊真は渚と…兄弟になったってことだよね。

じゃあ渚は…。いや、もうこれは中学の頃の話。その想いは消えている…はず。

「でも、二人も相変わらず仲良いよな。」

「あはは…」

果穂は二人をバシッと叩いた。

「痛っ!」

「いてっ!!」

「しっ!黙ってろイケメン!」

「あ、果穂!!」

「夕葉のお母さんじゃん!!」

「お母さんじゃない黙ってろ!!…久しぶりな」

「久しぶり!」

「久しぶり。相変わらず保護者みたいだな。」

「まあね。」

柊真と渚は名月達にも挨拶をしていた。

…このまま気まずいのは、嫌だな。

「…麗華。今日さ…」

話しかけようとした時、クラスメイト達が「麗華ちゃん!」と麗華のことを囲った。

私は、弁当を持って屋上まで走った。

「…はぁ。」

麗華は、私を避けている。まただ。また、麗華とすれ違っている。

「夕葉!!」

屋上で響いた声は、晴美の声だった。

いつも落ち着いている晴美が声を張った。

「晴美…?」

「探した。」

「どうして…?」

「夕葉、麗華となんかあったんでしょ。」

「…うん。」

「泣きそうな顔してたから。…私には話してほしいなって。」

私たちはベンチに腰を下ろした。

「晴美、ありがとう。」

「うん。」

「何があったかは話せない。」

「うん。」

「でも、仲直りしたいんだ。」

「うん。」

「それで、話しかけてみたんだけど麗華は私のことを避けちゃって…。」

「そっか。避けられちゃってるんだ。でも、夕葉は麗華と仲直りしたいと。」

「うん…。」

晴美は、うーんと数秒間考え込んだ後口を開いた。

「避ける原因は気まずいから?」

「うん。多分。」

「じゃあそういう時は、相手を信じて無理矢理でも、押さえつけてでも良いから伝えてみようよ。」

「でもきっとそれじゃあ怒られて終わる。」

「本当に?」

「え?」

「本当にそうかな?きっと、今麗華も苦しいと思うんだ。麗華は避けたくて避けてるわけじゃないと思うんだ。だから、夕葉から真っ直ぐに伝えることで麗華も救われると思う。夕葉には今二つの選択肢が与えられてるんだよ。麗華を救うために言うか、避けてるからっていう理由で止まるか。別に私はどっちでも反対しない。でも、どっちかの選択肢で今後の選択肢も変わる。今後の選択肢をいい物にするか悪い物にするかは、夕葉の答え次第だよ。」

「…私の答え次第…。」

私は、ベンチに弁当を置いて走った。

その時「夕葉!」と晴美が名前を呼んだ。

「後悔すんなよ!!しっかり伝えろよ!!頑張れ!!」

私は大きく頷いて再び走り出した。

教室まで向かったが、席に麗華は見当たらなかった。

「麗華見なかった?!」

「あ、さっき廊下の左の方に出て行ったよ!」

「ありがとう!!」

私は教室を出て、探し回った。

どこを見てもいない。

私は二階の校舎裏の方の空き教室の窓から麗華の名前を叫んだ。すると、校舎裏に麗華の姿が見えた。「あ!!」麗華は私のことを見て驚いていた。逃げられそうになって、私は窓から飛び降りた。

「麗華!!」

「え!?!?」

さすがに窓から飛び降りたのにびっくりしたのか、麗華は唖然としていた。私はその隙をついて、麗華に飛び乗った。

仰向けの麗華の上に馬乗りになる。

「麗華!!!私はキスくらい気にしない!!」

「あ、あの、ちょっと!降りろ!」

「嫌だね!ちょっと我慢して!」

「は!?」

「あのね、気まずいのかもしれないけど、避けないでよね!好きって気持ちはしっかり受け取ったし自分なりに今も考えてる。」

「え?」

「あの時、ごめんとか言ったけど、それ少し撤回させて。」

「…?」

「私、まだ付き合うとかわからないし、親友に好かれるとか親友を好きになるとかわからないけど、私、まだまだしっかり考えるから。まだ、好きでいてほしい。好きって気持ち、無理矢理捨てないでほしい。」

「…まだ好きでいてもいいってこと?」

「うん。まだ好きでいてほしい。」

「…ありがとう。」

私たちは額と額をくっつけて指切りげんまんをした。


放課後。

「夕葉、一緒に帰ろう。」

「うん!」

私たちは仲直りでき、二人で帰ることができた。

でも、この二人の関係を壊そうとする者がいたなんて、その時の私たちは思いもしなかった。



続。

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