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一 「死」そして「転生」
或る年の夏、私は、死んだ。そして、私は死後の世界であろう場所にゐるのである。ただそれは、天国と呼ぶにも地獄と呼ぶにも何も無かつたのである。白い地平線が広がるばかりで、これといふ娯楽はないだろうと思われた。しかし私は少しこの場所を少し見て廻ろうと思つた。何かもしかすると何やら面白いものがあるかもしれないそう思つたとき、ふと男性に呼ばれてゐるやうな気がした。私は導かれるやうにその場所へと向かつた。するとそこには立派な白髭の老人がゐた。
私はその老人に、
「私を呼んだのはあなたですか。」
老人はうなずいた。
「あなたを生き返らせようと思つてな。」
私は不思議に思つた。なぜなら、私は才媛でも無く、いたつて平凡な人間なのだ。依つて、私は少しばかり疑いを覚え、老人に尋ねた。
「だうして私を生き返らせるのですか。」
老人は、若者が亡くなるのは口惜しいことだと語つた。
「なるほど、では私は何処にゆくのでしょう。」
老人は異世界だと答えた。
私は異世界と聞いて、異国のことだろうと考えた。
そしてまた、ゆくのなら亜米利加と云ふ国や、欧州が良いなとも考えていた。