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03.出会い



……え?!



しかし躊躇(ちゅうちょ)はしない。


実戦において最も大切なのは、身体で考え、頭で動くことである。頭で考えるのは戦いが終わった後で良い。


初弾が失敗したのを見届ける暇もなく、次弾を即、準備。


今度は、3回パチッと連続して指をはじく。


無論、1秒もかからない。(これでも、女性部門のトップの一人なんだからね!)


指の間に三重のパルスが絡み合い――次の瞬間、合体した。


さっきのパルスを「糸」とするなら、今回のは「縄」の太さだ。


このレベルだと、人間は無論、虎などの大型獣ですら一撃で気絶させることができる。


姿勢を整え、無言の気合を発して、パルスの矢を弾き飛ばす。


「きゃっ!」


後ろでミーマが、パルスの衝突による惨劇をイメージしたのか、小さな悲鳴を上げた。両手で顔を覆う気配もする。


しかし、男性は先ほどと同じく、(てのひら)をまっすぐ突き出し、パルスの矢を受けとめたのである――いや、パルスの矢が掌に吸い込まれていったという方が正しいかもしれない。


本当なら、掌にぶつかった瞬間、パルスが拡散、男性を一瞬で取り囲み、パルスが発する雷撃が四方から襲うはずだった。


しかし――パルスの矢は、シュッというかすかな音を残して消え去った。


……そんな……!?


さすがに次の行動にすばやく移ることすら忘れて、私は思わず立ちすくんでしまった。


パルスは、磁場から生み出される。


あらゆる原子と同調しており、その周囲を飛び交う分子の方向をばらばらにすることにより、一瞬の高電圧を生じさせる。


雷と電子レンジを足して二で割ったような影響を想像してもらうと良いだろう。


生体であれば感電し、生体以外であれば高熱を帯びさせる。


ちなみに、パルスは、電磁流のため、雷のように避雷させることはできない。


理論上、パルスを消滅させるためにはその運動が止まるまで待つしかなく、瞬時にパルスを消滅させることなど不可能だ。


実際、パルス・ガンを発動させた後で、発射を中止するためには、パルスが動きを止めるまでの時間を待つしかない。


とはいえ、空気の抵抗を受け続けているため、一分ほどでパルスは消滅するのだが……


もし、一瞬でパルスを消滅させるためには、パルスが持つ運動量を一瞬で吸収させるしかないが、それは時速100キロで飛んでくる卵を、割らずに素手で受け止めるぐらいの技量がいる。


まあ、現在の科学技術では不可能だということだ。


だけど、このいきなり空間から現れた男性は、いきなりパルスを消滅させてしましった。


そして、彼は更に私を驚かせた。


「いきなりはあかん。危ないで」



は……??



予想していなかった展開に身体の力が抜けた。


しかも、この言葉は……


「気いつけてや、怪我するとこやったわ」


こ、これは……


そう、男性が喋っていたのは、昔々にアジア地方の一画にある国、さらにある地域で使われていた特殊な言葉「カンサイベン」であった。


大昔の古文と同じく、今では言語学で習う程度である。


「歌舞伎」「リンボーダンス」などのような伝統芸能である「マンザイ」では、今でも使われているらしいが……


言語学が苦手な私にも一発でわかった。たぶん、ミーマも後ろで硬直しているはずだ。


「ふう……何とか無事、来れたみたいやな」


男性は、身体をはたきながら、小さくつぶやいた。


私は、ようやく驚愕から開放された。


「あなたは誰?何者?」


ん?という顔をして、男性は私の方を見た。


「あ、俺は人間や。心配せんかてええよ。」


うーん、間違いなくハンサムに分類される男性から、古典芸能「マンザイ」の言葉が出てくるのは、結構不気味である。


ミーマは、じっと私の後ろに隠れるようにしながら、男性を見つめていた。


男性が喋る言葉は、いつのまにか私の警戒心を薄れさせていた。


たぶんミーマも同じだろう。


「そんなこと聞いてるんじゃない!……名前は!?」


私は、少し緩んだ心を引き締め、声に精一杯の威厳を持たせて聞いてみた。


「レイト。でも、ほんと怪しくはないねん」


……十分怪しいっつうの……


だが、悪い人には何故か見えなかった。


「ところで、あんたの名前は?」


レイトを観察していた私は、逆に質問されて慌ててしまった。


「ラ、ラン……ランよ」


少し顔が赤くなったのが分かる。


「ラン……ね。で、後ろのお姉ちゃんは?」


「ミーマです」


にこりと微笑みながら答えるミーマ。


そう言えばミーマは、天然入っているのに、何故かハンサムな人の前では別人のようになるんだった……


「ほうか。ところでどやろ、いろいろ説明したいんやけど、雪もひどくなってきたようや。立ち話もなんやから、場所を移さへんか」


レイトの言葉に辺りを見回すと、確かに舞う雪の量が増えている。


「そうね、ラン。結構寒くなってきたし、とりあえず家にいきましょうよ」


私は思わず、ミーマを見つめた。


……おいおい、ミーマ……こんな怪しい奴、家に連れてくって……信用するの?


まあ、確かに私もこのまま何も聞かない訳にいかないとは思ってるけど……さっきの現れ方やパルス・ガンを無効にした方法など、聞きたいことはたくさんある。


……まあ、いいか。それに、少なくとも悪い人じゃないことはなんとなく感じるし……


私も二人の提案に同意することにした。


「わかった。じゃあ、私の家にいこう」




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