31.ゴーリー
瞬間、白い炎が私を包み込む。
「ラーーン!!!」
レイトの叫びがぼんやり聞こえる。
……私の存在がなくなれば、少なくともあの未来はなくなる。さっき見た未来とは違う未来がくる。レイト……必ず生きて……
私は、薄れゆく意識の中でレイトの姿をしっかりと目に焼き付けた。
そして……白い炎は、爆発するように拡散し、私は、ゆっくりと崩れ落ちた。
その時……
私の中で何かが目覚めた。
私は倒れ伏していた。
レイトが駆け寄ってくる。
「ラン!!大丈夫か!!」
私は、ゆっくりと起き上がった。
「ラン!何考えとるんや!」
レイトが怒っている。
私は、ゆっくりと目を開けた。
「自分を犠牲にしたら……ラン?」
私の目は、白く光り輝いていた。
『緑の杖』の虹の流動は、より激しくなっている。
私の中で「私」ではない何かが答える。
「サーン。元気そうね」
青ざめ硬直するレイト。
「その呼び方は……」
私は、第三者の目でその様子を眺めていた。
「ま、まさか……」
その表情が、レイトの驚愕の度合いを物語っていた。
「ゴ、ゴーリーか……」
「私」が微笑みかける。
「レイト・サーン……私の大切な人……」
『緑の杖』の足元を暗黒が蝕みつつある。
「これを見て」
私は右手の親指につけた雷石をレイトに見せた。
そう、パルスを出現させるための石である。
なぜか雷石は、本来のくすんだ灰色から、真っ白なパール色に輝く石になっていた。
「さっきの強力なパルスが雷石を『陽石』に変え、そして私の意識を時の記憶の中から引き上げたの……」
「時の記憶?」
「ああ、もう時間がない。黙って私の言うことを聞いて。この陽石を使って緑の杖をパルスで攻撃して」
「でも緑の杖には、パルスは効かへんかったて、さっきランが……」
「ううん、違う。この石は、今、四次元化したパルスのエネルギーを受けて一時的に変化している。
だから、転移装置がなくても四次元化したパルスを作り出すことができるの。
そして、それをその転移装置でさらに変換すれば、もっと高位の次元に変化したパルスが作り出せるわ」
「私」の目の輝きは、その力を弱めつつあった。
「その高次元パルスなら、効くかもしれない」
「私」レイトの手を両手で握り締めた。
「もうすぐ私は、時の記憶の中に消えていく」
「ま、待ってくれ、ゴーリー……、お、俺は……」
「サーン。あなたはあなたの時を生きなさい。今、ランの中で目覚めた私は亡霊のようなもの。単なる時の記憶の一部に過ぎない。
心を奪われちゃダメ。
時は残酷なもの。でも、同時にそこに生があり、そして未来があるわ。
だから、決してあきらめないで……」
「ゴーリー!」
「あなたに……」
「私」はレイトの手を握る手に力を込めた。
「……あなたに幸運を……」
「私」の目の輝きが失せていく――
◆◇◆◇
私は、レイトの手を握り締めたまま呆然と立ち尽くしていた。
「レイト、今のは……」
……なぜ私の中にゴーリーが現れたの?
レイトはすでに現実を受け入れていた。
私に優しく微笑みかける。
……ああ……いつものレイトの微笑だ……
「戻ったかラン……さっき、意識はあったんか?」
「……うん」
身体を操られているような感覚がかすかに残っているが、今の出来事ははっきりと覚えていた。
「じゃあ、何をするのかはわかっとるな」
「うん」
私は握っていたレイトの手を離し、右手の『陽石』を見つめた。
……どうしてあんなことが起きたのだろう?
「なぜ、ランにゴーリーの意識がやどったのか、それを考えるんは後や。今は、『緑の杖』に立ち向かうで!」
私の思いを察したかのようにレイトが言う。
そう。まもなく最後の時がやってくる。
「わかった」
私は『緑の杖』に向かって右手を上げた。
次話は、明日の投稿予定です。
新しい時を刻み始めることを決意したラン。
最後の戦いの行方は――
次回 「32.光の津波」です。




