28.哀しい微笑みの意味
いや、正確に言えば、髪の毛は私より長いし、年齢も、15歳の私ではない。
しかし、その顔は私だった。
……なぜ?……どうして?……
ふと、一本の糸がつながる。
最初に歪んだ空間から現れたとき、レイトが私の顔を見て驚いたこと……
クリスマスの夜の哀しい微笑み……
カーリー・アイランドのホスピタルでの、同じような哀しい微笑み……
そう、おそらくレイトは、私と初めて会ったときにゴーリーの面影、いやゴーリーそのものを見たのだ。
そして――瞬時に運命を感じとったのではないだろうか。
もし私がゴーリーそのものならば、スター・リピートはやはり防げなかったことになる。
なぜなら、未来にいるゴーリーは、今の私がタイムトラベルした結果だからだ。
レイトは、タイムトラベルするには太陽の巨大なエネルギーか、それに匹敵するエネルギーが必要だと言っていた。
私がもし未来にタイムトラベルしたとするなら、太陽に匹敵する巨大なエネルギーをどこから得たのか?
それはおそらく、スター・リピートによる惑星の破壊で生じたエネルギーだろう……
気がつくと、私は元のパークに戻っていた。
『緑の杖』が目の前に浮いている。
私は、うつろな目で『緑の杖』に問いかける。
「どうして……」
私の呟きに、レイトが振り向いた。
「なんや、何かあったのか?」
どうやら今度は、私だけが見せられた映像のようだ。頭の中で、いろいろな思いが渦巻く。
そして、レイトの思いも……
レイトは、ゴーリーの指示する場所にタイムトラベルして、私に会ったとき悟ったに違いない。
そう言えばレイトは言ってたではないか。最初に会った私とミーマのどちらに予言を伝えるのかは、ゴーリーから「会えば必ず分かる」と言われたと……
きっと「ゴーリー」=「私」を知ったレイトは、私がスター・リピートにより未来に時間移動したと理解したのだろう。
そして、私と一緒に行動するということは、スター・リピートに巻き込まれるということであり、レイトは死ぬということだ。
しかし、それでもレイトは私と一緒にいてくれた。
たぶんレイトは、時を変えれない運命を私の中に見ていたのかもしれない……
どんなに希望を持っていても、逃れようのない運命を……
……やっと、レイトの気持ちが分かった。
……やっと、哀しい微笑みの意味が理解できた。
きっとレイトは、逃れようのない運命を受け入れ、それでも希望を持ちつづけているのだ。
その相容れない想いが、あの哀しみなのだ。
いつしか私は大いなる絶望に囚われていた。
そして私は泣いていた。
緑のフラッシュも、大地の小刻みな震えも続いている。
スター・リピートは確実に進行している。
だが、スター・リピートの真実を知り、レイトの哀しみを知り、全てを知った私は、もう希望を持ちつづけることができなかった。
どうしようもなく悲しかった。
おそらく、これから始まるスター・リピートにより私は未来に行くことになるのだろう。そしてその後、再度、タイムトラベルを行って過去に戻るはずだ。
歴史はそう語っている。
……この定めからは逃れることはできない。
……しかし、レイトは……
私が未来のゴーリーならば、レイトの思いと深い哀しみを知るからこそ、過去に行くレイトは止められない。
そして、今の私はレイトを助けられない。
まるでメビウスの輪のように、永遠に繰り返される「時」という絶対的存在が持つ残酷さが、私の心を絶望で埋めていく。
パルス・ガンを受けたように、肌にピリピリと直接感じる空気中の静電気。
私はひざまずき、絶望の海に深く沈んでいった。
「スター・リピートは止められない……」
私は呟いた。
同時に、緑の杖は少しずつ輝き始める。
その姿は心なしか、満足そうに見えた。
七色の光をゆっくりと発しさせ、その足元に暗黒の虚無が生まれる。
……もう残された時間はわずかしかない
……スター・リピートを止めることはできない
……レイトを助けられない
……ミーマもナックも
……私には、何もできなかった……
私の心が、絶望で埋め尽くされようとしていたそのとき――
次話は、明日の投稿予定です。
ランを立ち上がらせるレイトの温かい手。
もう一度、立ち向かおうとするランだったがーー
次回 「29.温かい手」 です。




