25.妖虫
私は、異形に正対していた。
妖虫が二本の触覚をこちらに向け、その間に炎が生まれる。
辺りには焦げた臭いで満ちていた。至るところに炎が上がっている。
「ラン、あの触覚を狙え!」
「分かった」
私は、素早く連続して電磁紐を弾く。円盤状になったパルスがパープル色の輝きを放っていた……
◆◇◆◇
退院したその足で、私たちは地球上で最大の都市、アース・シティへと向った。
そこで待ち受けていたのは、再び怪獣の襲撃だった。
私たちが到着するのと同時に、アース・シティの中心部に位置する広大なセントラル・パークに、巨大な虫が現れた。
体長50メートル。
無数の足を持つ芋虫のようなその姿は、粘液で覆われ異臭を放っており、二本の触覚から炎球を撒き散らしながらパークを炎の海へと変えた。
シティ・ポリスは、このような怪物に対応する武器は所持していない。
最も近い連邦軍に出動を要請したが、30分はかかる。私たちはパーク入り口で、危険だと言って制止するシティ・ポリスを振りきり、ナックがエア・カーを奪って、パークに侵入したのだった。
妖虫の攻撃はやっかいだった。
動きは鈍いのだが、触覚から放つ炎球と口から吐き出す衝撃波の攻撃でうかつに近づけない。
最初、炎球の攻撃しか出来ないと見誤ったせいで、衝撃波を受けたミーマとナックが、向こうに倒れている。
しかし、レイトの放ったイオン・チェリーが妖虫の足を薙ぎ払い、その動きを止め、私たちは「クラーケン」を倒したのと同じ攻撃を今、行おうとしていた。
「今や!」
レイトの叫びに合わせてパルスを弾く。
同時にレイトが放ったイオン・チェリーがパルスの円盤を貫き、光のスピアに変貌する。
スピアは、空間を歪めながら突き進んだ。
妖虫の触覚に生まれた炎球が放たれようとした瞬間、スピアが狙い通り触覚の間に突き刺さる。
今まさに放たれようとしていた炎球を巻込んだスピアは、妖虫を縦に引き裂いた。
そして妖虫は、断末魔の声を上げることなく、炎の渦に巻込まれ、四散した。
「やった!」
私は小さくガッツポーズをとった。
だが、戦いはまだ終わっていなかった。
「ミーマ、ナック、大丈夫?」
私は倒れている二人に駆寄った。ちょうど、二人は起きあがろうとしていたところだった。
「だ、大丈夫です」
先に立ち上がったナックが、ミーマを抱き起こしながら答えた。
炎に照らされた二人の姿は泥だらけだ。
夜空には、シティ・ポリスのエア・カーが飛び交っている。
「よかった……」
どうやら、大きな怪我は負っていないようだ。私はホッとした。
その時、後ろから緊迫したレイトの叫びが聞こえた。
「ラン!右や!」
……何!?
私が右をみると、一人の男性が炎の中に立っていた。
「トスティ……」
私は呟いた。
いずれ彼と直面しなければいけないと覚悟していたとはいえ、言葉が続かない。
ナックに支えられたミーマが口に手をあてている。レイトも青ざめて彼を見ていた。
その姿はトスティのままだったが、かもし出す雰囲気は天然夏男のものではなかった。
それどころか、ヒトではない完全に異質な気配を漂わせている。
ヒトとは相容れぬその雰囲気は、信じたくはなかったが、すでにトスティがこの世界で生を受けていないことを理解させた。
身動きが出来ない。言葉も発せれない。
やがて、瘴気が膨れ上がり始める。トスティの姿が変わりつつあった。
身体全体が溶け始めている。
表面が洗い流されるかのように、トスティだったものが虚空へと消えていく。
「キャー―ッ!」
ミーマの絶叫が響く。
やがてトスティがいた場所には……
三本の『緑の杖』が浮いていた。
次話は、明日、投稿します。
三本の杖が融合、ランとレイトは対峙していた。
そして……大気が緑色にフラッシュをし始める――
次回 「26.緑のフラッシュ」 です。




