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21.エア・シップ



「着いた、着いた」


エア・トレインを降りた私は、軽く伸びをした。


周りは、降車客でごったがえしている。


タイン・シティとは、ちょうど地球の反対側になるカーリー・アイランドは、真夏の陽気にあふれていた。


『東B方面へオ乗換エノ方ハ、3番線カラ8番線、西D方面オ乗換エノ方ハ、24番線カラ26番線、――』


乗り換えのアナウンスが止むことなく繰り返されている。


横では、ミーマがなぜか落ち着きなく、きょろきょろ周りを見まわしていた。


「レイト、これからどうやって、あの現場まで行くのに、何かあてはある?」


「そやな、どうしよかな……ま、とりあえず、現場まで行くための船か磁場カーを探すか……」


レイトは、少し考えこんだ。


その時、突然ミーマが大声をあげる。


「こっち、こっち!」


……な、何?


思わず振り向く私の視線に入ってきたのは、人込をかき分けて近づいてくるナックの姿だった!


「ナ、ナック、どうしてここに……」


私の驚きを他所に、ナックがやってきた。


「しかたあらへんか……」


唖然とする私の横で、頭を掻きながら呟くレイト。


「探しましたよ。さあ、早速行きましょう。エア・シップはすでに手配してますよ」


ナックは、何事もなかったように、さっさと私たちを先導する。


「ちょ、ちょっと、ナック、待って。どうしてここがわかったの?」


事情が飲みこめない私。


「……ごめんなさい。昨日、私がナックに教えたの。彼、どうしても来たいっていうから……」

ミーマがそっと、私の腕を掴んでつぶやく。


だから、さっきミーマ、きょろきょろしてたんだ……


「一応、最後に聞いとくけど、ええんやな」


レイトがナックに向かって言う。


あまり動揺していないその姿は、こうなることを予想していたのかもしれない。


「ええ、昨日はいきなりあんな話しを聞かされたので、正直なところ、パニクりましたけどね。でも、あの後ミーマとじっくり話しをして、自分の意思で決めました」


しっかりと頷くくナック。


「それに、僕がいた方が何かと便利だと思いますよ」


しばしの間、レイトがナックを見ていた。


やがて、レイトがゆっくりナックに近づくと、手を差し出した。


「おおきにナック。でも、決して無理はせんといてな」


その手をしっかり握り返すナック。


「わかってます。僕もそれなりの訓練を受けた警察官ですから、もしも何かあったら、自分の身とミーマぐらいは守って見せますよ。ランは、レイトにお願いしますけどね」


ちょ、ちょいまち、ナック、今なんて……?


ミーマを見ると、真っ赤になってうつむいていた。


……ふーん、そうなんだ。


トレインの中でナックの話しが出たときに、聞いていないフリしているようだったけど、完全な「できレース」だったわけね。今回のことは……


……まあ、いいけどね。


しかし、そんな私の思いは次のレイトの言葉でいきなりぶっ飛んでしまった。


「わかった。ランは俺が守るさかい、ミーマは頼むわ」


…………?え?え?……えーっ!今、なんて言ったのレイト?


思わず顔が火照ってくる。


なぜか昨日の夜以来、このパターン多いような気がする……


下を向いている私とミーマを気にせず、レイトとナックは勝手に話を進めていた。


「とにかく、急ぎましょう。

昨日、あの後、最終便で僕はこっちに来て、いろいろ準備しましたが、年末だからエア・シップが借りられたのも今日だけです。

暗くなる前に、例の現場に向かいましょう」


「ほやな。よし、じゃあラン、ミーマ行こか」


さっさと歩き出すレイトとナック。そしてミーマもいつのまにかナックの横に並んでいた。


「う、うん」


私は、どうにかうなづくと、レイトたちの後を追った。



◆◇◆◇



「これです」


ナックが、磁場カーで連れてきてくれた港には、一隻のエア・シップが繋留されていた。


……こ、これって最新型?


そこには、流線型をした美しい姿のエア・シップがあった。


全長は約20メートル。


エア・シップとはエア・トレイン、エア・カーと同じく、反重力を利用して水面を飛行できる乗り物で、普通の船のように水にも浮くことができる。


「ええ、親父の会社で今年購入したのですが、無理を言って、今日一日だけ借りました」


「ナックのお父さんて、何をしているの?」


私が聞くと、ナックに変わってミーマが答えてくれた。


「連邦宇宙旅行センターの最高責任者なんだって」


……えーっ!


あの太陽系ファイブ・カンパニーで称される巨大企業の一つ、連邦宇宙旅行センターの最高責任者?ってことは、ナックはお金持ちなんだ……


「そんなことより、早く乗りこみましょう」


ナックはさっさとタラップを駆けあがる。


「ほやな、急ごか」


レイトの言葉に、私とミーマもタラップを上がった。



次話は、明日の投稿予定です。



カーリー湾で、捜索を行うランたちの前に現われたクラーケン。

戦うランたちにハプニングが――


次回 「22.クラーケン」 です。

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