18.私が会いたい人は……
その日の夜。
私はぼんやりと街を歩いていた。
……レイト、どこに行ったの?
レイトが出ていく様子が気になったので、すぐに追いかけたのだが、どこにも姿が見当たらない。
しばらく探したが、結局、レイトを見つけられずにラウンジに戻ると、今度はナックもミーマもそこにはいなかった。
……ミーマまでどこいっちゃったの?
レイトとミーマの部屋にも人の気配はなかった。
仕方なく、私は部屋に戻った。
エア・チェアに腰掛けてぼんやりしていたら、いつの間にかうとうとしていたようだ。目が覚めたらすっかり日が暮れていた。
すごく気が重くなっていた。
目が腫れぼったい。
とりあえず、レイトの部屋にテレビ電話をかけてみるが、呼出音が続くだけで何の反応も無い。
ミーマの部屋も同じだった。
一人だけ取り残されたような寂しい気持ちが膨れ上がってくる。
私は、気分転換するため、クリスマスで賑わう街に出てみることにした。
◆◇◆◇
ちらほらと雪が舞うホワイトクリスマス。
空中を飛び交う色とりどりの自走電球。
両親に買ってもらったのだろう、大きなプレゼントを抱えてはしゃぎまわる子供たち。
いたるところで、サンタの立体映像が、軽快なリズムで踊っている。
……なんて平和なんだろう……
立ち止まり、辺りを見まわしてみる。
スター・リピートのことが非現実的に思えてきた。
崖の上で私に迫ってきた龍、私を見つめていた緑の杖、歪んだ空間から現れたレイト、樹海の上を舞っていた鷹……レイトに出会ってからの出来事が浮かんでは消える。
全てが、夢の中の出来事のように感じた。
みんなに会えず、私は、大きなため息をつく。
一片の雪が、頬に当たる。聖夜の曲だろうか……
緩やかなメロディが聞こえてきた。
そして、私は再び歩き始めた。
「どいて、どいて!」
いきなり後ろから大声がした。
振り向こうとした瞬間、私は、誰かに突き飛ばされていた。
雪が溶けかけた道に脚を取られる。派手に転びそうになったが、何とか体制を立て直し、膝をついただけで済んだ。
ビシャッ!
しかし、転ぶのは避けれたとはいえ、雪水が私の顔に跳ねた。
「ごめん、ごめん。大丈夫?」
私にぶつかったサンタが、一声かけてくるが、すぐに慌てて駆け出した。
その後ろを歓声を上げた子供たちが追いかけて行く。
そのまま動けなかった。
地面についた膝から、雪の冷たさが凍みてくる。
無性に、寂しさが込み上げてきた。
……会いたい……
……誰に?
「大丈夫か?ラン?」
……え?
いきなり、がっしりした手が私の腕をつかんで立たせてくれた。
心臓がドキリと跳ね上がる。
私の腕を掴む温かい手の感触。
聞き慣れてしまったへんてこな言葉。
そして優しい笑顔……
「……レイト!」
何故か、涙が溢れてきた。
「どないしたん、ラン?そんなとこで座っとると風邪引くで」
ぶっきらぼうだけど、温かい声。
「ん?……泣いとるんか?何かあったんか?」
心配そうに見つめてくれる黒い瞳。
……そっか。私はレイトに会いたかったんだ
いや、そんなことは本当は気づいていた。彼に惹かれている自分に。
思わず私は、レイトに抱きつきたくなった……が、ぐっとこらえる。
涙をぐいっと拭いた私は、わざと明るい声を出した。
「何でもないよ。平気。それより、さっきはどこ行っちゃってたの?」
「ああ、ちょっとな。いろいろ考えたくて、街を歩いていたねん」
「そう……」
「それよりな、そこを上がった所にな、景色のきれいな場所をみつけたんや。どや、行ってみんか」
「――うん」
左手の公園の中にある、少し小高くなった見晴台を指差すレイトの言葉に、私は小さくうなづいた。
次話は、明日の投稿予定です。
クリスマスの夜、レイトが語るゴーリーの真実とは?
そして、ランの想いは――
次回 「19.クリスマスの夜」 です。




