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17.ココヒーとレイトが告げた真実



「ラ、ラン……」


しばらくしてミーマが、泣き顔のまま私に近づいてきた。


「ね、ねえ、さ、さっき映っていた男の人、あ、あれはやっぱり、トスティなのかしら?」


「落ち着いてミーマ、とりあえず、ラウンジに戻ろ、ね」


私の両腕をぎゅっと握り締めるミーマの手を優しくほどいて、レイトにも声をかけ、私たちはラウンジに戻った。


あまり他の人に話を聞かせたくなかった私たちは、窓際の周りに人がいない場所を選び、とりあえず飲み物を頼んだ。


ミーマは、さっきから泣き通しである。


私も青ざめていた。


「レイト、あれは本当にトスティだったと思う?」


私は、あの映像を思い出して身体を震わせる。


「よう似とったのは確かやと思うで」


レイトが考え込みながら言った。


その時「さっきのテレビ見ましたか?」といいながら、嘆きの谷で私たちを救難に来てくれたナックが現れた。


ナックは、あれから連日、私たちと一緒に捜索にあたってくれた。


今はまだポリス学校に通う学生の身だが、あの日はたまたま単独パトロール訓練を行っているときに、救難信号から最も近い位置にいたので最初に来てくれたのだ。


年齢はレイトと同じだが、童顔のため、年上には見えにくい。ここ一週間の捜索で、ミーマとは打ち解けたようだ。


今もミーマの隣に座り、彼女を慰めている。


ナックには、レイトが未来からやってきたことは伏せていたが、わけあって私たちがゴーリーの予言「スター・リピート」の研究を行っていること、そして、緑の流星、つまり『緑の杖』を調べたくて、タイン・マウンテンに来たことは、すでに伝えてあった。


「あの海に飛び込んだ男性は、行方不明のトスティに見えたのですが……」


「ああ、おそらくあれはトスティやろ。『緑の杖』の捜索をしている最中に行方不明となった人間と似ている人間が、他の『杖』の場所に現れたんやからな……普通に考えてみても、他人の空似、とは思えへん」


ナックの問いに、あっさりと断言するレイト。


ちょうど、その時、ウェイトレスが飲み物を持ってきた。


ウェイトレスは四人の前に「ごゆっくりどうぞ」と、ホットココヒーを置いていった。


「ほら、ミーマも好きなココヒーだよ。落ち着くから飲んだら」


泣きつづけていたミーマだが、こっくり頷くと飲み始めた。


その様子を見ながらレイトが提案した。


「どやろ、とりあえず、明日にでもカーリー・アイランドに行ってみんか?」


私は「賛成」と片手を挙げて答えると、ミーマに尋ねてみた。


「ミーマはどう?」


ココヒーを飲んで少し落ち着いたのか、ミーマはもう泣いていない。


「ええ、私もカーリー・アイランドに一緒に行きたいわ」


しっかりした口調で答える。


「わかった。レイト、これで全員一致だね」


「ああ、ほやな。じゃあ、今日はいろいろ準備して、明日の朝、早速出発しよか」


「そうだね」


「ちょ、ちょっと待ってください」


私とレイトの話に、ナックが横から口を挟んでくる。


「僕も一緒に行きます」


「やめとき」


ナックの言葉を即座に一蹴するレイト。


「ど、どうしてですか?」


「おそらく、半端やない危険がいっぱいあるんやで。俺らが、変な怪獣に襲われた話はしたやろ」


「聞きました。しかし僕も学生の身とは言え警察の一員ですから」


食い下がるナック。


「ポリス学校の方はどうするんや」


「休暇を取ります」


どうやら、ナックはどうしてもついてきたいらしい。


「それに、僕が一緒にいた方が役に立つことは必ずありますよ。

カーリー・アイランドの現場周辺は軍によって封鎖されているはずですから、民間人がおいそれと立ち入ることはできませんしね」


「それは、そうかもしれんが……何度もいうように、かなり危険なんやで」


「そうですね。皆さんが本当は、どのような目的でスター・リピートを調べているのかは分かりませんが、もし、あのスター・リピートの予言が真実なら、大変な災厄が襲うということですからね。これは黙って見過ごせません」


……そっか、ナックにはまだ詳しいことは話していなかったっけ。


でも、本当のことはとても言えない。あと一ヶ月ぐらいで地球がなくなるなんて……とても口には出せない。


しかし、私がいろいろ考えているとき、ミーマがやってくれた。


「そうよね。来月には地球が消滅しちゃうんだから」


ミーマの言葉にナックの目が点になる。


……あーあ、言っちゃった。


「し、消滅って、そ、それは……」


「ああ、本当のことやねん」


レイトがあきらめ顔だ。


「そ、そんな……」


レイトは、言葉を失っているナックに、かいつまんでこれまでのいきさつを正直に話した。


自分が未来からやってきたこと、スター・リピートによって太陽系は壊滅することなどを、あっさりとナックに説明する。


まあ、レイトがためらいなくナックに説明したのも当然かもしれない。


残された時間を考えれば、秘密にしようとしまいと、そんなに大差はないだろう。


レイトは、信じなければ、それまでだと思っているように感じる。


そしてレイトは、ナックに最終通告を突き付けた。


「信じる信じないは勝手やが、まあそういうことや。

それに、話がややこしくなると思うたから、まだ話してへんかったけど、トスティが居なくなったとき、俺らは『緑の杖』と対面したんや。

ま、遭ってすぐに気い失ってしもたけどな」


ナックがポカンと口を開けてレイトを見ている。気持ちはわかる。


「でも一目見て分かった。あれは悪魔や。存在そのものが人間とは相容れない。一緒に来るのはやめとくんやな」


ナックに告げたレイトは、静かに立ちあがり、ラウンジを出ていった。


唖然とその後姿を見送るナック。


「レイト!待って!」


私はレイトを追いかけ、ミーマを残したまま慌ててラウンジを飛び出した。




次話は、明日、投稿予定です。



レイトを追いかけて、街をさまようラン。

寂しさに、心が苦しくなった時、その腕を掴んだのは――


次回 「18.私が会いたい人は……」 です。

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