【製薬】の【スキル】1
転生者の末裔に召喚されたクラスメイトが世界を破滅させるので暗殺します 作者:高山京一
(*^-^*)『いぬ』と『ねこ』どっちが好き?
【製薬】の【スキル】1
カタストロフィまでの道は、現代のように舗装された道を車で走るよりはガタガタ揺れて座り心地は悪いが、確かに安全だった。
今までいた町を抜けると畑が広がり、一気にのどかな雰囲気になった。
【製薬】の【スキル】を持っているのは誰なんだ…?
『映像を再生します』
ええと、キュアラだな。
キュアラは、くせ毛長髪で割とかわいい日本女児だ。
俺はフローラの方が好みだけど。
宿屋で同室だったから、落ち着かなくて寝不足だけど。
この世界では男女同室は普通みたいだけど、襲い掛かる勇気もない…!
…いや、襲い掛かってもゼウスみたいに返り討ちにされるのがオチか。
「俺の妻になる」というフローラの話を、俺は信じていなかった。
初対面の俺と結婚できるなら、親の決めた相手とも結婚できると思うからだ。
だからあれは「城から逃げる」ための口実だったんだろう。
「サトル様、着きましたよ!」
「おお…」
「カタストロフィは洞窟から出てくる魔王軍とみられる魔物たちと戦っています。」
「そうなのか…」
全く実感がわかないが、恐ろしい話だ。
「ありがとうございました。」
乗せてくれた商人にお礼を言うと、キュアラの屋敷を探した。
フローラのスキルが見えているおかげで、町人は協力的だった。
「スキルを持っている人間は特別なんだな。」
「そうですね」
「スキルって誰にでも見えるのか?」
「ええ、もっと詳しく見ることができる【スキル】もあるそうですけど。」
「なるほど…」
その【スキル】を使ったら、俺の【スキル】も見抜けるのかな…?
「ここみたいですね」
夕日に照らされた、大きな屋敷が現れた。
ここでもフローラの【スキル】を見たメイドがすぐに案内してくれた。
「サトル?」
そこにはイケメンとお菓子を食べながら紅茶を飲むキュアラがいた。
「やあ、キュアラ。」
「キュアラ様、こちらの方は?」
「クラスメイトのサトルよ。」
「ご学友、ということですか?」
「うん」
イケメンは立ち上がると、俺の前に立った。
背は高いし、イケメンだし、王子様みたいな男だな…。
「わたしはカタストロフィ国軍、第五騎士団長フレデリックだ。」
「サトルです…イタタタタタ!」
ギリギリと力強い握手をされ、思わず声を上げた。
「私はこれで失礼しますので、どうぞごゆっくり…。」
敵意のある笑顔を残し、フレデリックは退室した。
「怖っ…」
「何しに来たの?トワイライトからここまで二日くらいかかるでしょ?」
「えーっと…俺には【スキル】がないから、クラスメイトに会いに行く旅をしてて…」
「お姫様は、どうして一緒なの?」
「私たちは夫婦…もがもが…」
「俺が頼んだんだ!ひとりじゃこの世界のこと、何も分からないからさ。」
「ふーん、そうなの…」
まさか『お前を【暗殺】しに来た』なんて言えないしな。
「キュアラ様!またポーション作りの依頼が…!」
メイドが慌てた様子で入ってきた。
「わかったわ」
「【製薬】の【スキル】だからポーションを作ってるのか?」
「そうよ、見に来る?」
「私も、見てみたいです。」
庭に出て、温室に入ると下働きの男が大きな箱を持ってきた。
「お願いしますキュアラ様、魔王軍と戦っている兵士たちにポーションを!」
無精ひげにみすぼらしい服だが、筋骨隆々なのは服の上からでもわかる。
よく見ると、まくったシャツの袖に血がついている。
「はいはい」
キュアラは、まったく興味なさそうな返事をすると、箱から取り出されたガラスの小瓶を手に取った。
「ポーション作りなんて、初めて見ます。」
フローラは楽しそうだったが、ポーションを必要としているけが人がいることを考えると、俺は楽しめなかった。
細い注ぎ口のピッチャーから水を入れると、温室にある緑色の植物の葉を摘んだ。
それは俺にも見覚えがあり、摘みたての強い香りにも覚えがあった。
「え、それってミントじゃないか?」
「そうよ」
「ポーションってミントと水なのか?」
「そんなわけないでしょ。」
キュアラが【製薬】の【スキル】を発動させると、頭の上に光の輪が現れる。
ガラス瓶の中身がキラキラと輝き、ミントは消えた。
「混ざったのか?」
「ポーションを作ったの。」
「これがポーションなんですか?」
フローラも不思議そうだ。
それからキュアラはメイドたちと一緒にポーションを何本も作った。
下働きの男は箱いっぱいのポーションを、急いでどこかに運んで行った。
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