最終話でうおおおおおお!!
目が覚めても、そこは青空の下だった。
何をされたかは判らないが、ひとまずは起き上がる。体の節々に違和感がある。
「フフフ、成功じゃな」
幼女がニマニマ笑いながら俺を目で舐めづり回す。そこには形容しがたい気味悪さがあり、言い方は悪いが凶悪犯罪者のようだった。
「何が成功なんですか」
言って、自分の声の高さに驚いた。女性ほどではないが青年としては高すぎて、まるで小学生に戻ったかのようだ。いや、まさか。俺は暗い予感が心中に渦巻くのを知りながら立ち上がる。幼女も便乗して立つ。
まず目の高さが違った。今までなら彼女を見下ろすことがあたりまえだった。しかし今は彼女と同じ目線。
胸を触った。膨らみはない。股間にもあるものはある。
「俺は、どうなって」
困惑と現実への拒否感から高い声はさらに上ずる。幼女は不敵に笑いながら、
「まだ判らぬか。お主はショタになったのじゃ。いやぁ眼福眼福。これからは、わしと一緒に暮らすんじゃぞ。その姿でな」
彼女の笑いが止まらない中、俺は己の運命の果てを知った。
「はい、料理できたよ」
「おおよしよし、偉い子じゃ。お、しょうが焼きか! 今日は豪華じゃのう。よしよし」
「撫でるな。やめろ。子供扱いするな」
あれからかなりの時が経った。俺は完全に幼女の部下になり、仕事を手伝ったり、コスプレさせられたりと、個人的に苦しい生活を送っている。コスプレなんかは地獄だ。いつしかのカートの服を着せられたり、カートの演技をしろとか言われて心が消耗する。
それだけでなく、いついかなるときも子供扱いだ。精神年齢は百を超えているのに、これでは俺のプライドに障る。確かにこの幼女は俺よりは年上だろうが、見た目が幼女なのでそんな気がしないのだ。
仕事と言ったが、やることは書類作りばかりだ。あとは電話でのお上への接待。この青空の下ではどんな物も出現する。電話したいなと思ったら電話が出現し、料理したいと念じたらいつの間にかキッチンがある。しかし幼女の懐が寂しいためか全部安っぽい。
ちなみに幼女に名はない。名無しの底辺神らしい。森の奥にある小さな祠で奉られていると聞くが、それ以上のことは話さない。俺もそんなに興味はないので聞かないことにした。
「のう、今度は浴衣着てくれないか」
「やだ」
「んもう、反抗期じゃのう。ほれせんべい食べるか?」
「うざい。やめろ。関わるな」
こうして俺の日常は過ぎていく。幸福とは言えないのでどうにかしたいが、俺は無力なので何もできなかった。
そんなある日、曜日感覚がないのである日といってもいつかは判らないが、ある日のこと。
俺達はいつものようにちゃぶ台を囲んで古臭いパソコンで書類を作っていた。時折幼女がセクハラかましてくるのに苛立ちながら、無駄としか言い様のない作業をしていた。
そこへ、幼女がおつかいを頼んできた。
「のう、この書類お稲荷様の印鑑が必要なんじゃ。行ってきてくれないか」
「自分が行け」
「そんなこと言ってたら一緒に風呂入るぞ」
「チッ。行ってきます」
「いってら~」
とことこ項垂れながらちゃぶ台を離れる。歩いていると、透明の壁へぶつかり、壁に吸い込まれていく。端からみたら虚空へ消えていく男児が一人といったところ。
壁を抜けると、夕焼け空が緋色の雲を織り成していた。目の先にはお茶を飲んでいる、狐の尻尾と耳を生やした女性がいた。近づくと、ちゃぶ台の上にお茶のパッケージが置いてあるのが見え、玉露と書いてあった。
「すみません、今よろしいでしょうか?」
「ん? どちら様ですか?」
「ええと」俺は返答に困った。
「んぅ、あぁ、あのショタコンの方のですか。ようこそ。何かご用でしょうか」
幼女の性癖は神々に伝わっているようだ。あの無名神も、一応は神の端くれなのを実感する。
「あの、この書類に印鑑を押していただきたいのですが」
「よろしいですわ。さて、どこに仕舞ってたかしら」
そう言って床に手を突っ込み混ぜるように手を動かす。俺は手持ちぶさたに周りの風景を見るが、夕焼けの眩しさ以外印象に残らない。
お稲荷様は床から手を引き揚げ印鑑を取り出した。象牙を使った四角い印鑑だった。それを書類に押し付け、隷書体の朱色文字が浮かぶ。それを貰って帰ろうとしたとき、彼女は俺に話しかけた。
「確か、歩幸越棚と言う名でしたね。数々の転生を繰り返し、そのほとんどで成功を納めた人間。あの幼女の手にあるのは惜しいですわ。私の下で働きませんこと?」
「引き抜きはご遠慮願います」
「それは残念。ですが、貴方は今の立場に不満をもっているのは事実でしょう。どうです? まずは待遇改善を訴えてはいかが?」
その言葉に心は揺れ動いた。待遇改善。セクハラされることがなくなる。これは確かな権利だ。これを行使しなくてどうするのか。
「助言、ありがとうございます。まず自分から彼女に訴えてみようと思います」
「私は裏から応援してますわ」
幼女もところへ帰り、印鑑が押された書類を渡してから、俺は口を切った。
「幼女さん」
「なんじゃ? 夜でも共にするか?」
「そういうセクハラをやめろ。やめないとお稲荷様に訴えるぞ」
「セクハラ? これはスキンシップじゃ!」
「いや、セクハラなんだけど。やめて欲しいんだけど」
「転生させてきた恩人に何を言うか!」
「その恩を自分でチャラにしてるからこうなるんだよ」
「ええい、いい加減にせい!」
その後ずっと言い争った。俺はただセクハラをやめろと言っているだけだが、彼女は屁理屈を並べて自責から逃げようとする。それを理屈で切り返すと今度は感情論に逃げる。何を言っても効果がない。
もうお稲荷様に直訴するかと考え始めたとき、幼女が声を荒げて怒鳴った。
「じゃあ決闘じゃ! 神と死人とのガチンコの勝負じゃ!」
「いやいや、流石に勝負にならんだろう」
「わしが弱いと言うのか!」
「いやそういう意味じゃなくて」
「黙れ! さぁお稲荷を審判に勝負じゃ!」
もう断れるような空気ではなく、仕方なくお稲荷様に頼んで決闘場を用意していただいた。
場所は夜、満月の輝く雲の上。無名とはいえ神に挑む人間がいるということで他の神々も集まってきた。酒や賭けが横行し、もう俺達を肴に呑む宴となった。
俺は武器を選ぶことになった。このフィールドでは幼女の力はある程度抑えられる。それは彼女のホームグラウンドではないためだ。だからといって神であることに違いはなく、苦戦は必至だ。武器は槍と刀を選んだ。槍の長さは三メートル。刀は打刀より少々長い。鎧はない。
土俵が雲からムクムクと生えあがる。広さは学校のグラウンドより小さいか。そこへ登り幼女と対面する。このような向き合いは彼女とは始めてだ。彼女は薙刀を一本のみ。舐められたものだが、勝機は既に計算済みだ。
「今回のルールは単純。致命傷を受けた者が負け。禁じ手はなし。両者、構え!」
お稲荷様が審判として声をあげる。俺は槍を構える。幼女は二メートルの薙刀をやや斜めに構える。リーチではこちらが上。しかし懐に潜られたら彼女のほうが強いだろう。刀を抜くより速く斬られるのは見えている。
「始め!」
その叫びを耳にしても、両者は動かなかった。俺は槍を右手のみで持った。幼女は訝しむ表情を見せたが、警戒してか動きはなかった。
観客達は速くぶつかれと野次を飛ばす。それに応じて幼女が動く。薙刀を天に向け振り下ろそうとする。俺はしなる槍でそれを弾き槍を捨て刀を抜く。幼女はササッと下がりまた振り下ろす。その薙刀の柄を斬りただの棒にする。
彼女は動揺して固まった。そこへ俺の一刀がきらめき下から右腕をはね飛ばした。流れるように首を狙うところで、
「そこまで!」
とお稲荷様が止めた。俺は刀を納め土俵から下がった。観客からは拍手喝采だが、それよりも、幼女が意外と弱かったことに驚いていた。
「す、すまんかった」
あの戦いのあと、幼女は俺に頭を下げた。そこにプライドはなく誠心誠意謝っているのが理解できた。
「いいよ別に。ただセクハラをやめてくれればいいだけだし」
「これからはセクハラとかせんから、留まってくれんか。仕事一人でやるの寂しいんじゃ」
「まぁ、いいけど」
そして、また日常に戻った。違ったのは、セクハラだとかがない快適な職場なこと。幼女の右腕は治っていること。変わらないのは、子供扱いか。これは年齢上仕方ないところもあるのかなと俺は諦めている。
俺はこれからもずっと幼女と共に暮らすだろう。そこにハプニングがあるかどうかは今は知らない。でもこれはこれで、中々充実してはいる。少々、貧乏だが。
俺は、二人分の料理を作りながら、そう考えた。
「ところで、結局俺のチート能力ってなんだったんだ?」
「そりゃあ主人公補正じゃろ」
「そっかぁ」
くぅ疲なんで俺君が以下略
完走した感想ですが(激ウマギャグ)
最初にあった勢いが死んでいる-760×∞点
以上です。長編の試験作として書いたけど、短編集みたいだから練習にはならなかったかも。ただ、執筆の習慣は簡単に出来た。なお投稿は忘れる模様。
次はVRものかディストピアものかで悩む。どちらも重い内容になるからなぁ。ふーむ。如何に書こうか、如何に書くべきか。
そう突き詰めるうち、気づけば不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、車の主、暴力団員谷岡が言い渡した示談の条件とは・・・。




