内政でうおおおおおお!!
俺、歩幸越棚! ごく普通に死んだの! 呆気ないというか、拍子抜けというか。大往生できるとは思わなかった。
起きる前に体を確認する。あの若い頃と変わらない。何度も転生したせいか時間感覚は狂っている。倫理もだ。そろそろ天国か地獄に行きたくもある。
「今回で最長かのう。そのまま不老不死になればわしの仕事も少なくなったのじゃが」
「次回も転生ですか」
「そろそろ疲れてきたか? だけど居候を飼えるほどの資金はなくてな。次も別の世界で生きてもらうぞ」
ようやく起きるて見ると、幼女は書類に判子を押していた。何枚も。想像が膨らむが気にすることはないので座り直す。
「さて、次はどこにするかな」
そう言って型落ちスマホをいじる。俺の転生先ってそんな方法で決められていたのか。デジタル化が進んでいるのを喜ぶか、憂うか。
何度かスクロールとタップを繰り返して合点がいったように力強くポチる。彼女は一仕事終えたように満足げ。そして、
「さ、行ってこい。次も老衰で死んでくれよ」
返事するより速く俺の真下に穴が空いて落ちていく。
「おい、聞いているのか? オチタナ!」
その声で意識が目覚める。ここはフコウ家の屋敷。その一室。俺は当主である父親に呼ばれたのだった。
「はい聞いております。父上」
「そうか。では、今日からお前はロエ領を死んだ兄から受け継ぐ。前任と同じ過ちを犯さないように。よいな?」
はい、と一言で了承してそそくさと退室する。俺はフコウ家の次男オチタナ。兄からロエという辺境を結果的にもらうことになった。
兄は贅沢三昧をしてロエの地を苦しめた。そして部下に殺され、なんやかんや政治闘争があって今になる。なんやかんやは知らない。弟である俺が就任することになるのだから、相当骨が折られたに違いない。
今日から、ということなのですぐ準備をして出発した。馬車に揺られている間、俺の執事になった男からロエについて聞く。
ロエとは政治的には利点のない辺境の領。それでも持っているのは我が家の影響を削がれないためか。そして住んでいるのはゴブリンやオークやエルフなどの異種族。言葉は通じるが、残念なことにゴブリンは片言でしか会話できないそうだ。
厄介なことに彼らは兄のおかげで人間不信になっている。まずは人心掌握から始めなければならない。そのためには多少の身銭は切らないとダメだろう。
そう思案して、野営し、また思案してたらロエへ着いた。尻を痛めながら降りると、手付かずの草原と青空、それらの香りが俺を迎えてくれる。そんな雄大な自然の中に、ポツンと邸宅がある。俺の家となる場所だ。集落さえもない光景が現状を無言で語る。
まずは家に入り就任式を行う。これでめでたくロエ領の主となった。しかしやることは雲を突き抜けるほどある。まずは粛清だ。
「執事」
「は」馬車に同乗してた執事に耳打ちする。
「兄が可愛がっていた腹心を探せ。いるだけ全員だ」
「かしこまりました」
数日はあえて動かなかった。兄に同調してたと思われる奴らが、俺に土地の悲劇を伝えないのも看破していた。だが泳がせた。
数日経ち、執事が俺に粛清対象を報告する。その数は十人に上る。数少ない私兵に命じて邸宅を閉鎖させる。さらにロエの住民達を呼ばせ時を待つ。
「オチタナ様。何やら門前が騒がしいようですが、一体何が起きたのでしょう」
粛清の対象がわざわざオレに報告してくれた。その報告を待っていたのだ。俺は黙ってレイピアを抜き喉元を貫いた。奴は床を血で色塗りながら倒れた。粛清の始まりだ。
赤く滴るレイピアを見て、何も知らない対象共は怯えだした。しかしまさか自分が殺されるとはつゆにも思わず、真っ正面からの不意打ちで次々倒れていく。窓は夕焼けより燃え、悲鳴が邸宅を揺らす。
門まで来た頃には粛清対象を全員抹殺していた。私兵に命じて、奴らの死体を持って来させる。そして家の前に集まった異種族達に対して宣言した。
「俺は今、お前達を苦しめた賊をみな殺して回った。この地に悲劇をもたらした前任者の影はもうない。安心するがよい」
これが証拠だと死体を彼らへ放る。見知った顔なのか、それを見て民は歓喜する。俺達の敵は死んだ! もう税で苦しまなくていい!
その声に応えるため、さらに舌を回転させる。
「お前達に課せられた重税は取り払う! そしてこのロエの発展のために、諸君らの力が必要だ。もちろん先程の通り税は軽くする。俺だけでなく、君達の力によってロエは栄えるのだ!」
単純な奴はこれで喜んだ。しかし疑り深い者は俺へ懐疑の目を向けた。だが懐疑主義者まで殺したら反逆の芽を育てるハメになる。それを防ぐため、思考を巡らせなければならない。
後日、まずは基盤として中心街を作らせることにした。とは言っても豪勢に石畳にはせず、土の道、藁葺きの家、畑、これらを草原に広げた。その合間にエルフにロエの自然のことを聞き、山に鉄の鉱脈があることを知った。以前はゴブリンに掘らせたらしい。
これは財源になると、早速民を集め宣言した。
「ゴブリンの諸君。君達は再び鉱山に向かってもらう」
そう言うと、当然ながらゴブリン達がキーキー騒ぎだした。想定通りだ。内心の笑顔を表に出さないよう苦労しながら語る。
「俺は前任者と違い、君達に苦しんでほしくない。まず仕事の時間を設ける。朝と晩は仕事、昼は休んでいい。夜になったら家で寝ていい」
ゴブリン達の文句が途絶え、俺の話に関心を抱くようになる。
「そして、鉱山労働に就く者の家族は、俺が保護する!」
ゴブリン達の知能でも理解できたのだろう。彼らは両手を挙げて喜んだ。しかしもっと思慮深い者は俺の策略に気づいたに違いない。
俺は彼ら鉱山労働者の家族を人質にしたのだ。もし反乱でも起こそうものなら、まず家族に被害が及ぶ。彼らもいつか知るかもしれないが、それまでに家族を篭絡させればいいだけの話だ。
そして、鉱山は稼働し始めた。毎日鉄が届き、それを他の領へ輸出する。昼の間、鉱山労働者の家族に食事をただで提供する。夜になれば労働者が街に集まるので自然に酒場ができ、賑わう。今や鉱山はゴブリンだけでなくオークも参加するようになった。家族の保護は問題なく行われた。家族達は俺を敬うようになり、策は成功と言える。
だが問題なのはエルフだ。俺の考えをとっくに見抜き、失望して森に去った。彼らは容易くは陥落しないだろう。ここは非道だが、力業でいこう。
まずはエルフの中で、野心のある者を部下に探らせた。そして、長老の補佐の女エルフが浮かびあがった。彼女に密かに賄賂を贈り続け、彼女の野心に枯れ木を投げる。
「オチタナ様、あの女エルフが長老を罪で告発しました。そろそろ頃合いでしょう」
「そうだな」
執事が俺に話した。俺達は悪しき長老を討つためと大義をでっち上げ、兵をまとめ森へ進軍する。森の前で、見張りに止められる。
「待て、長老様の命で部外者は立ち入り禁止だ」
「それがそうもいかん。その長老が罪を犯したと聞いた。お前達エルフは森の者とはいえ、ここもロエ領。管轄は俺にある」
「長老が罪を犯した? ありえない!」
「俺もありえないと思っている。それを確認するためにやって来たのだ。エルフを救うと思うなら、ここを通してくれ」
渋々ながら、俺達は通された。そして、エルフの村の象徴たる大樹まで来た。長老と補佐はここに住んでいる。
俺は立会人として村のエルフを一人連れて大樹の中に進んだ。そこには、論争している長老と女エルフがいた。
割って入り、領主がやって来たと告げた。
「嘘つき領主めが。我が村に了承なく入りおって。この罪は重いぞ」
「何の罪かは知らんが、告発されたのは事実だ。その調査を妨害することは疑いを深められるだけだ。大人しくしていてくれ」
「ふん、勝手にするがいい」
そして、わざとウロウロしながら女エルフの部屋へ着く。ここも調べると口に出して内部へ侵入。とにかく部屋を探し、ついに俺が彼女へ渡した賄賂の金銀財宝の山を見つけた。
俺は怒り散らし、しかし心は笑いながら長老と補佐の二人に詰めよった。
「今補佐の部屋から金銀財宝が見つかった! お前達二人は富を独占し、村の人々へ還元しなかった! それが長として相応しいワケはない!ここで斬るぞ!」
「お、お待ちください、話が」
何か言う前に女エルフを斬り殺す。そして、何も知らない長老もとどめを刺す。立会人は長老達の罪を認め、俺はエルフにも支配が及ぶ、ロエの主となった。
そして数ヶ月後。街は見た目こそ貧相ながら発展し、ロエの地は栄華を極めた。民と親交を深める善良な領主と呼ばれるほどになった俺は、いつもいつもお忍びで酒場に行った。もう領地経営も安定したので、遊び放題だ。
「おい領主様、酒飲み勝負でもしないかい?」
オークの男が酔いながらふっかけてきた。俺はそれを快く承諾し、酒を一気飲みした。だがそれが祟って、急性アルコール中毒で死んだ。
投稿時間も内容もツッコミどころさんがいっぱいや




