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現代でうおおおおおお!!


俺、歩幸越棚! クラスの皆で転移したら結局死んじゃったの! まさか勇者が生け贄にされる文化があるなんてしらなんだ。


声がかからないので不審がって起きる。幼女はお茶を飲んでリラックスしている。いつもの口調も相乗しておばさん臭い、良く言えば古風で美しい。俺を見ると、また一口飲んだ。


「お主、今さらながら血も涙もないのう」


「見てたんですか」


「そりゃな。お主はもうちっとは慈悲とか人権とかを意識してほしいものじゃな」


「人権ですか」


「知らんとは言わせんぞ。お主現代人のクセにそこに疎い。最初からそうだが人殺しといてなんの罪悪も抱かんとはどういう神経なのじゃ」


「うーん、確かにどういう神経なんでしょうね」


「解っておらんのか。よし、今回も現代に戻してやる」


「えぇ、つまんないですよ」


「人生を面白いかどうかで決めるとは実に勝手というかなんというか。まぁどうでもよいか」


湯呑みを置いて、ホッと一息。湯気がゆっくり昇っていく。


「じゃがただの現代ではつまらんからな」


そう言った途端、俺は浮遊感と無重力に撫でられ落ちる。相変わらず説明しない彼女へのストレスを抱えつつ目を閉じた。




目が覚めると、背中に異様な熱を感じた。鉄板の上で焼かれているのではないかと思えるほどの熱さ。たまらず飛び起きる。


目の前には、摩天楼が広がっている。コンクリートと窓のビル郡。アスファルトの地面。街路樹さえない歩道に車が行き交う車道。俺は首都圏の都会に降り立ったのか。


自分の姿を確認する。半袖のジャージにジャージのズボン。どちらも白い。運動でもするかのような格好。


暑い。しかし夏のようなじっとりとした暑さではなく初夏の、風の吹くカラッとした暑さ。おそらく五月か六月だろう。


ともかく、俺はこの世界で何ができるのか。それを模索しなければならない。現代社会と同じなのは見て解るが俺の素性が不明。また思い出すタイプの転生かと考え街中をただ歩いたが、何も思い出すことはなかった。


ハロワにでも行くかとか考えたが現代に冒険者はいない。身元が判らない人は無力なのがこの社会だ。すると、今回はかなり危険な人生となる。


歩いているうちに喉が渇いた。自販機に向かうも財布を持っていなかったので公園に行く。この際トイレの水でも構わないから渇きを癒したい。公園を求めて彷徨う。


しばらくして、公園が見つかった。子供達も遊ぶ都市部にしては広めの公園。水道はあった。これ幸いと蛇口を捻り飲み始める。


が、すぐ吐き出した。不味いという話ではない。この味は、いやこの水は洗剤だ。転生前の幼少期に誤飲したあの洗剤と同じ味だ。本当に洗剤か確かめるべく水道の水を手に取り泡立ててみると、泡立ってしまった。泡を除くべく洗剤で洗剤を流すことになった。


俺は深く気を落とした。いや、この水道だけが洗剤なだけではないかと己を震いトイレの水も調べたがこれも洗剤だった。俺は勉強代としてゲロを吐いた。絶望も吐きたかった。


トイレから出ると、自販機が目に入る。もうこの際捕まってもいい。とにかく水が欲しい。俺は自販機を無理やり開け中の缶を一本取り出す。親御さんが騒いでスマホを弄っている。


飲んでみると、これも洗剤だった。ちょっと味は違ったが洗剤に変わりはない。全部吐いた。何度も吐いたせいで体力もボロボロ、手や口の中はカピカピになる。もうこのまま渇き死ぬしかないのか。この転生は処刑か。


そう嘆いていると、町内放送が響いた。俺の指名手配かと自意識過剰なことを思ったがどうやら違う。耳を傾けてみる。


「市民の皆様こんにちわ。毎週恒例洗剤提供のお時間です。水で渇いた方、手が乾燥した方は、洗剤で体を清めましょう」以下、同じことをループして放送する。


俺に天明が見えてきた。この世界は水と洗剤の呼称が逆の世界なんだ。それでいて洗剤は洗剤の効果を持ち、水は水のまま。洗剤は水で水は洗剤。俺は自販機のことを忘れ彼らの言う『洗剤』の配給場所へ向かった。


向かうと、そこは先の公園よりも広い空き地だった。タンクローリーが一台停めてある。そこには人溜まりがあった。整然と並んでいない。そこに一角の違和感を覚えたが、まずは水の確保を優先し、人混みを抜けて前へ出る。


「さぁ水ムリーの皆様。洗剤の提供です。いっぱい飲んでくださいね」


そう言った人物はタンクローリーのタンクに穴を開け、水が噴水のように溢れだす。俺は我先にと水に走り寄る。流れる液体を飲んでみると、これだ、これこそ水だ。本能が歓喜に狂っている。


ゴクゴクと飲んでいると肩を掴まれタンクから引き離される。


「私のものだ!」


俺を引き剥がした女はパニック気味に言いながら水を飲む。周りの人達は己が己がと水を求めて争った。俺はこれを目にして安堵した。あの時一番乗りしなければ飲めずに終わったかもしれない。


ひとまず後ろに下がり再び飲めるタイミングを待つ。そうしていると肩を叩かれる。何事かと注意しながら振り替えると、警察官が二人いた。


「自販機の件ですね」俺は諦観の言葉をぶつける。


「えぇそうです。ま、見たらなぜそんなことをしたのかは判りますがね。仕方ないことですよ。貴方達水ムリーの人は洗剤しか飲めないから渇きで暴れてしまう。今回は不問としますが、気をつけてくださいね。我々のように水ムリーに理解のある人は少ないのですから」


「はぁ、ありがとうございます」


ともあれお縄にならなくて済んだ。そう安心していると、突如空き地から爆発が起こった。警察官に緊張が降り注ぐ。爆発地点に銃を抜きながら駆け寄る。


「水ムリーに天罰を!」


その叫びと共に銃声が鳴り響いた。四方八方、どこから撃たれているのか解らない。水を求めた人々が次々撃たれ倒れ悶える。もしくは死ぬ。俺はとっさに地に伏せてたのでしのげたがこのままでは死ぬのも時間の問題。すぐ辺りを見渡し敵を補足せんとする。


見えた。車道を挟んだ奥のビル二階。そこに発砲者はいた。複数人。数えるヒマはない。弾を撃ちきるまで祈りながら待つ。銃声が止む。立ち上がり全速力でビルに突入する。相手はおそらくは素人。俺が地に横になってる時に一発も当てなかったことからの推測。間違っていたら死ぬ。二階への階段を登る。


廊下、窓の場所に一人の敵。俺が入ったことに気づかず乱射している。こそこそと近寄り背後から首を絞める。声をあげようと暴れるが、すぐにぐったりとする。死んだかどうかは重要ではない。落ちた銃、アサルトライフルを拾い近場の部屋へ押し入る。


「誰だ!」


警戒心が高い奴がいたのかすぐにバレる。横へ飛び扉から離れる。俺の立ってた場所が弾丸の雨にさらされる。しかし全弾撃ち尽くし装填することになるその隙を狙い部屋に突入。数人いた敵を撃ち倒す。


廊下、向かい側の部屋から他の敵が殺到する。余った弾を撃ち牽制し、すぐ他の銃を手に取る。だが多勢に無勢。窓から出て、壁伝いに向こうの部屋へ移る。あいつらの後ろに回るために静かに、静かに動く。


部屋に入り奴らの背後を取った。奴らは俺がいないことに訝しみ後ろを気にしてない。そこへ銃弾の嵐を吹き出した。敵は絶叫をあげて倒れていった。弾を撃ちきり呼吸を整える。


死体を軽く検分したが、だいたい死んだようだ。すると階段を駆け上がる音が聞こえた。新手か、もしくは突入した警官か。警官なら敵と間違われるかもしれない。銃を捨て部屋の中に隠れる。


「テロリスト共! そこにいるのか! 降伏して出てこい!」


この声はさっきの警官だ。俺は手を上げて彼らの前に出る。


「お前、テロリストの仲間だったのか?」


「違います。こいつらを倒すために一人突入したんです」


「一般人がそんなことできるか? 怪しいな」


「ではこの死体の山をどう説明するんです?」


「むむむ、ひとまず署に来てくれ。話はそれからだ」


その後、警察官に連れられ署に連行された。俺は実際に起こったことを偽りなく言った。当初は懐疑的だったが、俺が壁を伝っていた目撃証言やテロリストを殺した銃に俺の指紋がついていたことなど、その他俺の知らないこととかで裁判なく無罪放免となった。


さらに、テロリストから市民を守ったことが評価され、表彰状が送られることになった。それよりもこの世界での衣食住を提供して欲しい。そう訴えたが、流石にそこまでは厳しいらしい。俺は紙切れ一つのために命を張ってしまった。しかし名誉には変わらない。


表彰式。あれこれ美辞麗句を連ねた宣言と共に表彰状を受けとる。外、炎天下の中。市民も参加し、拍手で俺を称えてくれた。


「水ムリーに死を!」


そう叫んだ一人の男が俺を撃った。突然のことで何もできず倒れた。病院に運ばれ、意識が不明になり、ついには死んだ。

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