学園でうおおおおおお!!
俺、歩幸越棚! 世界滅ぼそうとしたら成敗されたの! 当然過ぎてため息すら出ない。
起き上がり、青空を背景とする幼女を目にする。その手に持つのは注射器である。
「お、お主か。はは、また死んだのか」
声は震え、目は焦点が合ってない。どうしたことかと眺めていたら、そのまま腕に注射した。
「んほおおおおおおお!」
なるほど危ないクスリだったか。待つのもバカバカしい。声だけはかけとこう。
「あの、転生させて頂きたいのですが」
「んほおおおおおおお!」
「ありがとうございます。次はどんな世界になりますかね」
「んほおおおおおおお!」
「そうですか。いつもと変わりませんね」
俺の真下に穴が空いて落ちていく。幼女はまだ「んほおおおおおおお!」と叫んでいた。
目が覚めると知らない天井だった。なんと貧しい天井か。木は腐り始め虫に食われた痕がある。庶民の家とはすぐ解った。
「オチタナ、起きたかい」
俺の名前はどの世界でも固定らしい。声の主に目を向けると腰の曲がった婆さんがいた。
途端に、記憶がワッと蘇る。俺はオチタナ。姓はない一平民。幼い頃に両親を亡くし祖母の家に引き取られた。彼女は貧しいながらも俺を手厚く育ててくれた。そして、俺には魔法の才能があることも見出だしてくれてる。少ない貯金を何とか練りだして、魔法学校へ入学することになった。
「起きたよおばさん。おはよう」
「おはよう」しわがれたが優しい声。
「今日は入学の日だろう? さ、支度するんだよ。お前はきっと立派な魔法使いになる」
言われた通り準備を始めた。固いパンと薄いスープを飲み干し学校の制服に着替える。何代も前の前世を思い出す。俺は元々学生だった。こうして制服に身を包むのも、なにか懐かしい想いがある。
「行ってきます」
俺は婆さんに別れを告げる。学校は全寮制。もしかしたら、これが最後の挨拶になるかもしれない。彼女はもう老い先短い。
「あぁ、頑張るんだよ。私が死んでも、惑わず精進するんだよ」
俺は沈黙と頷きで覚悟を表した。そして、学校へ向かった。
学校はまるで城のような、石造りの校舎だった。凡人を拒むかのような冷たい印象を受ける。俺はその声なき嘲笑に怯まず、門をくぐった。
教師と思われる大人達が生徒を案内している。俺もその列に加わり、校舎前の広場にて、入学式が始まった。これは特に奇態なこともなくつつがなく進行した。そして、クラス分け。俺は六組に入った。
クラスルームには机が人数分。俺は部屋の端っこだ。その席に座り、担任が挨拶する。
つまり、俺は一番最後になる。自己紹介を聞いてると、全員が貴族出身だ。名もある貴族となると部屋が騒然となるし、逆の場合はクスクスと嗤う。幸先は悪いようだ。
俺の番が来た。
「俺はオチタナです。姓はありません。皆さんと違って平民出身ですので礼儀知らずのところはあるでしょうが、その時はどうぞ嗤ってやってください」
担任以外の人間はみな驚きでどよめいた。まさか平民がこの場にいるとは思ってもみなかったのだろう。驚きは傲慢に変わり誰もが俺を見下げた表情になる。担任とて例外ではない。
「さて、自己紹介も終わったことですし、魔法の検査に移りましょう」
教壇に水晶が置かれる。
「この水晶は触れた人の魔力の量を調べることができます。紫色に光れば魔力は少なく、赤色に光れば魔力は多い。ようは虹色ですね」
検査はすぐに始まる。またも俺が最後で、みながみな水晶に触れて一喜一憂する。
その中で一人、水晶ギラギラと赤く光る者がいた。それは男で、全く美男子といった言葉が似合う。生徒達は声を輝かせて喜んだ。
「流石はカートだ!」
その声は部屋の隅から隅まであがった。どうやら彼は名のある貴族であり、さらに魔力も多いといった学校のヒーローのようだ。彼がカーストでトップになるのは間違いない。
ようやく俺の番。すると、部屋は静まり聞こえるのは嘲りの小声のみ。それに臆さず堂々と水晶に触れる。
水晶は赤々と燃えたぎり、部屋を赤く染め、ついにパリンと割れてしまった。破片はまだ赤かった。
「おい、お前何か細工しただろう!」
見知らぬ男が難癖をつけてきた。クラス中がそれに同調し俺を非難する。
「どちら様で?」俺はすっとぼける。
「話を聞いてなかったのか? 俺はナカニ=ダースゾだ!」
茶髪のダースゾは髪まで怒らせ詰め寄る。
「お前平民の分際で水晶に細工しやがって。そんなに俺達より弱いのが悔しいか!」
「貴方達より弱いのは当然でしょう。それに、俺は小細工なんてしてませんよ」
「さっきから嘘ばかり言いやがって。試合で勝負だ! 小細工なんてさせずボコボコにしてやる」
「先生、試合やっていいのでしょうか」
俺が担任に聞くと、興味があるのか簡単に了承した。そして俺達はグラウンドにでる。六組の者だけでなく、他のクラスも見物していた。
望んでいるのは平民が貴族にやられることだろう。だがそんな願望に付き合ってやる必要はない。ただ、やれるだけやる。
「今回の試合は教師の出す防壁魔法を、一発の魔法でどちらがより粉々にできるかを競う! 互いの邪魔はルール違反と見なす! いざ、始め」
教師の張った防壁魔法が百メートル先に出される。壁というかブロックである。空色に近い透明のブロックで、これをどれだけ破壊できるかが問題となる。
まずはダースゾが先手を打つ。
「己が火よ! 壁を貫け!」
呪文を叫び、火球がブロックに当たり爆発する。ブロックは半壊した。俺は感嘆の声を溢し対戦相手がそこそこやれることを認識した。
「どうだ平民。これを超えられるか?」
「どうでしょうね。まずはやってみます」
魔法とはイメージだ。呪文はイメージを補強する材料でしかない。俺はブロックが溶けるさまをイメージした。分類としては、念力魔法になるだろう。
すると、ブロックが湯気をあげながら溶け始めた。まるで火に炙られた氷のように消え、跡形もなくなった。
歓声はなかった。何が起きたのかサッパリ解らないといった具合か。俺は審判に目を向け采配を待つ。審判も困惑してて、まるで収拾がつかない。
「俺の負けでもいいですよ。さっさと授業に移りましょう」
その言葉がダースゾの自尊心を撫で斬りしたのか、憤怒を漲らせ俺に食ってかかった。
「また小細工しやがって! もう許さん! ここで身分の差を思い知らせてやる!」
呪文を高速で唱え俺に火球を放った。今度は火球が水になるようイメージする。水になった火球は、俺を濡らすだけにとどまった。
「そこまで! この勝負、ダースゾのルール違反によりオチタナの勝利とする」
審判の教師が叫ぶ。観客は囁きあい、ダースゾは地団駄を踏んで部屋に帰った。件の美男子だけが俺を認めたような目付きをしていた。
それからは孤高の日々が始まった。誰にも邪魔されず一人で授業を受ける日々。しかしその授業もつまらぬもので、俺は今さら歩き方を教わっているように思えた。だからほとんどの授業を寝て過ごした。
だが、これではなんの生産性もない。それに婆さんにも申し訳がたたない。そこで、イメージせずとも使える魔法を研究することにした。教師陣は俺に一目置いているので研究室は自由に使えた。
まず、呪文に着目した。これを唱えるだけで誰でも魔法が使えるようにすれば目的は簡単に達せられる。
しかし、魔力の問題もある。魔力の量によって、魔法の威力も上下する。誰でも均一の魔法を使えれば革命が起こる。俺は俄然やる気になった。
数ヶ月後、ついに完成した。ただ呪文を唱えるだけで使える魔法。それを呪文書としてしたためた。使い方は簡単。深く息を吐きながらこの本に書かれた呪文を唱えるだけ。
結果論として見れば、俺は単に魔法を少ない魔力で使えるようにしただけだ。しかしコロンブスの卵の逸話もある。俺の本は売れに売れ、一財産を築いた。
だが、問題が一つある。それは、呪文書で書かれた魔法以外はまだ使えないということだ。この世の全ての魔法を簡略化するという、一大事事業が俺を待っていた。
学校は卒業し、ひたすら呪文書の作成に取り組む。弟子とかの手伝いはいない。ただ孤独に執筆を重ねる。
ある日、ふと気晴らしに別の事をしようと思った。魔法のイメージに限界はあるのだろうか。そう考え、試しにビックバンを起こそうと、宇宙創造をイメージした。
すると、突然空中に球体ができ、それが爆発。ビックバンが起こり、俺と世界は死んだ。
寝落ちして投稿忘れてしもた。すみませんでし




