表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第三幕―教えて帽子屋―


 「さて、まず何から話せばいいのかな?」


 開口一番、帽子屋はそう言って口火を切った。


 カップに注がれ上品な香りを漂わせる紅茶を覗き込むと、困り顔の少女が映っている。


 ・・・私今こんな微妙な顔してるのね。


 「んー。リーエン、キミもう少し質問範囲を狭めてあげないと多分藍琉何を聞けばいいのかごちゃごちゃしちゃって全然わかんないと思うんだけど」


 ナイスミシェル!丁度何言っていいのかわかんなくて困ってたとこなのよね。

 私は心の中でミシェルのフォローにガッツポーズ。ミシェルって意外と気配り上手なのよね。


 「でも俺は原則として聞かれた以上のことは話せない」


 「何言ってんの。そんな面倒なことに縛られてばっかだからダメなんだよ。どうせもうこの世界は」


 「…わかってる」


 リーエンがミシェルの言葉を遮る。

 さっきまでのリーエンからは想像もつかないような、感情を無理に抑えた低い声。


 不自然なところで途切れた会話。

 ミシェルが何を言おうとしたのか私は知らない。けれど、私はまだそれが何なのかは知らなくていいような気がした。

 だって、リーエンがあんなにも辛そうで、苦しそうで、悔しそうな顔してたから。


 「ねえ!私…白兎のことが知りたい。何故白兎は私の世界に居たのか、白兎とは一体どんな存在なのか」


 だから私は敢えて違う事を聞く。

 本来なら今頃既に出会っていたであろう者を考える。


 リーエンはにっこりと紳士的な笑みを浮かべた。


 「“貴女が訊ねるならば、何でもお答え致しましょう”」


 リーエンは白兎について話始める前に、私達に紅茶とお菓子を進めた。

 どうやら堅苦しい会話は嫌みたい。


 「“白兎”は“連れてくる者”の役目を背負う者。歴代“アリス”はその全員が“白兎”によってこの世界に連れてこられてる。そして今回の“白兎”はブラパン・レーヴ<夢幻むげんの白兎>ことレーヴ。君をこの世界に連れてきた張本人だ」


 あの兎耳の生えた明らかおかしな人ね。顔は見てないけど。


 私は紅茶を飲みながら少し前の出来事を思い返した。


 「レーヴが君の世界に居たのは恐らく、彼が君の世界に迷い込んだから」


 「ええっ!そんなことってあるの?」


 「あるでしょ」


 平然と答えたのはリーエンではなくミシェル。


 「入り口があるなら出口だってある。それが君にとっての常識でしょ?」


 にっこり微笑んで片目を瞑るミシェル。ウィンクが様になりすぎてて逆に怖いわ。


 「そうね」


 「この世界は、ところどころに綻びが生じてる。それは君の世界も同じ事だけれど。白兎は綻び―穴に落ちやすいんだ。体質…なのかは俺にもわからないけれど」


 リーエンが分かりやすく説明してくれる。


 「それじゃあ、その綻びっていうのが、他の世界に通じる穴ってことなの?」


 「その通り。藍琉の世界には、神隠しってものが昔から存在してるだろ?それは大半は事件に巻き込まれ何らかの形で抹消された人がほとんどだけど、中にはほんの一握りくらい、他の世界に落ちた人もいる」


 何か前半物騒な事言ってた気もするけど…そこはあえて流そう。話が脱線しそうだし。


 「私もその一人だと」


 「そう。白兎に連れてこられた、哀れな被害者」


 「でも藍琉のことだし、興味本位で自分からついてったんでしょ?」


 うっ!痛いところを…。

 横槍を入れたミシェルは意地悪そうににやにやしてる。こら!人で遊んじゃいけません!…まあ本当のことなんだけどさ。


 「でも、それは“白兎”の魔力に引き寄せられただけ。藍琉の意志とは半分無関係の事のはず」


 「そうなの?」


 「そうなの」


 半ば強引に納得させられた。


 「じゃあ…白兎が私の世界に迷い込んだ時に通ったっていう綻びを探せば、私は元の世界に帰れるの?」


 不安半分、期待半分に私が訊ねると、リーエンは難しい顔をする。


 「藍琉、申し訳ないんだけど、俺は綻びなんて見たことないし、詳しいことは何もわからないんだ。“教える者”なのにふがいなくて…本当にごめん」


 「大丈夫よ!お願いだからしょげないでリーエン」


 頭を垂れてしゅんとしてしまったリーエンに私は慌ててそう言った。


 「まあそんなの白兎に会っちゃえば聞ける話だしね」


 おいコラァァァァァ!そこのチェシャ猫空気読めェェェェ

 ん?これってあえて空気読まなかった感じ?ああもう何だかよくわかんなくなってきた。考えるのやめよ。


 「あっ!そういえばさ」


 唐突にミシェルが口を開く。

 いきなり大きな声を出すものだから、驚いた私の肩が一瞬跳ねた。


 「リーエン、今日一人?」


 「そうだけど?」


 「じゃあ泊めて」


 お願いっと可愛く手を合わせるミシェル。いきなり何を言い出すのかと目を丸くする私。しょうがないなといった顔つきのリーエン。


 「部屋もベッドも余ってるし、構わないよ。藍琉も泊まってくでしょ?」


 「ええっ!?」


 リーエンの紫の瞳に映る戸惑う私。


 いきなり出会って泊めてもらうってすごい不躾よね…。でもどうしよう。私お金も何もないし…このままだと野宿になっちゃう?けどやっぱり泊めてもらっちゃうのは気が引けるというか…


 「藍琉、人からの厚意はありがたく受け取っとくべきだよ」


 一人悶々としている私に、ミシェルが言った。


 「あの…じゃあ…泊めていただけますか?」


 控えめに言う私を見て、リーエンがにっこりと微笑む。


 「勿論」


 それから暫くして、私達は優雅なお茶会を終え、リーエンの家へと向かった。



こんばんは皆様、朱音です♪

今回は説明的なお話なのでつまらなかったかもしれませんが、今後の展開に重要になってくることが多分見え隠れしていますので☆

今回は名前だけの登場、白兎さんですw

さて、白兎さんは一体いつになったらちゃんとした出番が訪れるんでしょうかね?w←

そして次回は、藍琉とリーエンとミシェルが一つ屋根の下に!!果たして藍琉はどうなってしまうのでしょうか!?((どうもならない


それでは、また次幕でお会いしましょう♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ