第3章 「踊り子」全廃説
最後に、「踊り子」が全廃される可能性についても指摘したい。
2018年5月、JR東日本は伊豆方面への新たな特急列車として、全車グリーン車以上の豪華な設備を有する「E261系」の導入を公式発表した。E261系は、その特性からE251系「スーパービュー踊り子」の後継となることが予想される。
しかしここで重要なのは、E261系の導入本数である。現行のE251系は4本在籍するが、E261系は現時点で2本の導入を予定しているのみである。E251系は、リゾート列車としては陳腐化が進んでいるため続投は考えにくいが、減便などを行わない限りは後継として運用することは不可能である。
ここから導き出されるのは、伊豆方面への鉄道縮小である。伊豆への旅客はマイカーの利用が多く、それは休日の小田原~熱海エリアや国道135号線、周辺有料道路の混雑から見て歴然である。いっぽう、伊豆方面への特急列車は「スーパービュー踊り子」がそれなりに人気があるものの、「踊り子」に関しては満席になるほどの混雑は少ないように思える。モータリゼーションの理由としては、伊豆半島は温泉地や観光地が点在しているのでマイカーのうほうが都合がよいこと、鉄道の料金の高さが考えられる。
それを知ってか、最近ではリゾート列車のテコ入れが進められている。JR東日本は「大人のリゾート列車」と銘打って、食事や酒の楽しめる「伊豆クレイル」の運行を2016年から開始している。また今年に入ってからは、東急系のリゾート列車として「ザ・ロイヤル・エクスプレス」が運行を開始した。こちらは水戸岡鋭治氏がデザインを手がけており、豪華な内装が特徴だ。また、「リゾート21」でも内装のリニューアルが行われた。そして極めつけが、E261系である。
こうして見ると、伊豆の観光列車は高級嗜好な列車にシフトしてきている。この動きは、ノーマルな「踊り子」の廃止の前触れと捉えることもできるのだ。
「踊り子」で使用される185系は、「特急としても普通電車としても使える」がコンセプトの車両であり、本来は観光客の多く乗る列車に充当されるものではない。今後185系が置き換えられた場合、新車になるにせよE257系を転用するにしろ、汎用型車両であることは変わらないはずだ。しかしそれは、伊豆方面の列車の高級化が加速している現状と逆行するものであり、高級化の流れの中で、中途半端な存在の「踊り子」は廃止の憂き目に遭う可能性は決して否定できない。
「踊り子」の全廃も特に発表はないが、もしするのであれば車両の更新期である今のタイミングかもしれない。「踊り子」の存亡は、今後の伊豆方面や東海道線の都市間連絡の需要にかかってきそうだ。