第2章 新車投入説
私が個人的に推したいのが、新車投入説である。意見としては間違いなく少数派であろうが、第1章で示したとおりE257系による置き換えには疑問もあるため、ここで新車投入説について検証してみる。ちなみにこの章では、185系撤退後の「踊り子」が、編成数・本数ともに変わらない前提で検証する。
E257系を、「踊り子」の後継として改造するのは、なかなか大がかりとなるはずだ。内外装のリニューアルはもちろん、前述のとおり編成組み替えも必要となるため、大規模なものになると予想される。
そこで、汎用型の車両を新造してしまったほうが簡易に済むという判断がなされれば、新車投入の可能性が出てくる。その場合、やはりイメージとしてはE257系に近いものが製造されるだろう。
近年、JR東日本では自由席の廃止を進めているため、「踊り子」でもこれを機に「スワローあかぎ」「ひたち」のような全車指定席となる可能性がある。そうなれば、E657系で導入されている座席頭上の空席表示ランプも設置されると思われる。
しかしこの説も、致命的な欠陥が発生してしまった。
2018年5月、JR東日本は伊豆方面の新型特急「E261系」の導入を公式に発表した。E261系は「スーパービュー踊り子」E251系の実質的な後継とされている。
誰も予想していなかった“E251系の置き換え”が発表されたことは、逆説的に185系の新車置き換えを否定している。もし仮に185系を新車で置き換えるとしても、それはまだ公式発表されていないのだから、E261系デビューよりも後ということになる。E261系のデビューは2020年春と予定されているが、その頃には一部の185系が車齢40年に達してしまうため、それまでにE257系改造車で置き換えてしまうと考えるほうが自然である。185系が車齢40年経過後も続投し、さらに数年後に新車で置き換えられる可能性も無いわけではないが、そこには別の問題がある。
それは、製造工場のキャパの問題だ。JR東日本が現在発表しているだけでも、E233系0番台のグリーン車や、E235系の増備、先述のE261系などの生産が予定されている。ところが、JR東日本の在来線車両を製造しているのは、主に総合車両製作所の新津・横浜事業所の2箇所であり、それだけではキャパオーバーに陥る可能性があるのだ。JRのみならず、相鉄や東急で導入が進む新車も総合車両製作所が受け持っているため、向こう5年程度は製造を捌ききれないと予想できる。
「踊り子」が今と同じ編成数・本数を維持すると仮定した場合、185系の後継もまとまった本数となり、総合車両の状況から見て安易に製造できない可能性は高い。もし185系をさらに5〜10年ほど続投させたとしても(その時には車齢が40年を超えてしまうため、ありえないが)、今度はE217系の置き換え時期となる。その後もE231系3000番台の置き換え(他線区に転属すると思われる)が予想され、当分は新造ラッシュとなるだろう。そうなると、「踊り子」向け新車を製造する可能性は、かなり低いということになる。
E257系を転属させた場合、その改造規模は大きくなることが予想されるため、新車の製造も可能性はあるのだが、やはり現実的ではなさそうだ。