新生活
「いや、焦った焦った」
「まあね、本当にビビったよ」
我が強そうって話だからね、人によっては迷惑かもしれない。
まぁ、見た感じや所作に一本の軸がある感じがー、とか言って誤魔化したのだが。お嬢様っぽいって言ったら
『………あら…そうかしら』
とか言ってたけど、あれは何が『そうかしら』なのやら。嬉しそうにも見えたし悲しそうにも見えた。とても、複雑そうだった。
「思ったけど芳堂も困ってる人特有のオーラ出てたわ、友達居ないんかね」
「まあ、孤立はしてたからね……」
「美人なのになぁ」
「そうだねぇ、美人だのにねぇ」
美人故の孤立は、このクラスに置いて、起きるのだろうか。
「まあ、ぼっち化しないよね。たぶんすぐ馴染むよ。たぶん、このクラスなら創作上でよく見る外見上の孤立とかしないと思うし」
「あー、まぁ、黄泉とか田中とか藍沢とか、可愛い子は居るが美人とはちょっと違わねぇか? そう言うとこに穴があるんじゃね?」
「穴って何のだ、つまり安心するのはまだ────ってなんで芳堂さんの未来について話してるのさ俺たち」
「美人が話しかけてきたら気にもなるだろ??」
我籐くんは正直でした。いや、まあそうだけどさ。
「そう言えば、この高校の寮ってどんな感じなんだろ」
すでに放課後。新入生への部活紹介のビラ配りに巻き込まれながら下校した。寮は立地上敷地内には作れなかったらしいが、そこまで離れてはいない。
それ故にどこが寮なのか、分かっていない。一応地図はあるのだが、こう言うのを読むのはいつも俺じゃなかったからちょっと読めない。
「おいおい、賀田、そっちじゃねーよ?」
「え、ありがとう」
「まさか方向音痴……あ今困ってる人オーラが賀田から」
「……ほんっと、それ、便利だね」
「今のは確かにそうだが……これ、無視するの結構罪悪感あるんだぜ? なにせ、困ってるのを分かってるからなぁ」
「そういうもんなのか」
「そーいうもんなのさ」
「そろそろ着く?」
「あぁ、ここ──────でか。」
「うわ、でっか」
何階建てだろうか、見上げれば上は見えない。そんなマンションだった。
実は道中見えてた、只、このマンションが本当にそうなのか分からなかっただけだ。
「これ、マジかよ。寮生たくさんいるとはいえこんなでけえのを幾つも……」
「と、取り敢えず部屋に行こうか」
戸惑いながら俺達はそのマンションに入っていった。
荷物はあった。
部屋は………うわあ、高い…窓の外見れ………るけど、怖っ。
「ふう…………生活に必要な物はある程度あるけど飯は自炊だから買わなきゃ……面倒な……」
家事なんて一切して来なかったのに出来るだろうか。
そんな事を考えてながらスマホを開くとメッセージアプリにチャットが書き込まれていた。
『賀田君、高校はどう?』
天羽さんから。
「いや、一応連絡先は交換したけどどうやって打ち込んでいるのさ……」
両手両足ギプスだったよね、そう言えば。関節だけ狙い澄まされたように破壊されていたらしいけど、そう言うのって手先まで固定するんじゃないか?
『寮って言った? 治ったら見に行くね』
「マジかー」
取り敢えず、身の回りのことくらい出来るようにならないといけないな。
荷物を解放しながら、俺はそんな事を考えた。