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大量怪奇少年  作者: リョウゴ
第二怪奇 高校一回目の学祭
7/20

新しい環境


────我が校は一学年に十二クラスある。


 内訳にしてみれば普通科9クラス、特進科2クラス、進学科1クラス。


 そして、入学難易度は進学科<<普通科<<<特進科である。


 分かるかもしれないがこの私立高校、進学校である。


 さらに、普通科平均以上の成績のある者が試験を受けずに入学できる私立大学は様々なことに手を出していて、かなり凄いらしい。


 因みに俺は普通科だった。一応特進科にも出したのだが、無理があったようだ。


 そうして、一年六組の賀田玄は、教室の机に覆い被さるようにうなだれていた。




「にしても、勇者すぎる……」


 彼の名前が我籐大悟というのはすぐに伝わった。教師がクラス全員に自己紹介をさせたからだ。


 そして我籐くんはその真価を発揮した。


『俺の名前は我籐大悟! 趣味は人助けで特技は困っている奴を見分ける事だ! 宜しくな!!』


 大声でそんな事を言った。いやぁ、勇者だろこれは。なんだよ困っている奴を見分ける能力って。


 大体、俺なんか


『賀田玄です、特技は霊を見る───あっ』


 とか、言って誤魔化すの滅茶苦茶恥ずかしいことになってたんだけどな。しかし、我籐くんが自己紹介したお陰で空気が解れた気はする。


 まあ、微妙にしたの、俺だけどね。ほら、『かだ』『がとう』って、直ぐじゃない? 実際我籐くん、席真後ろなんだけど。


「やっぱりうちの中学の規模とは比べ物にならねーよ、ここは」


「我籐くん」


 件の勇者様が前のめりになって話しかけてきた。いや、俺の中でしか呼ばれてねぇよ。


「おう、困った人の味方我籐大悟だぜ、我籐くん ってのも悪かねぇけど大悟でいいぜ?」


「……それ、素でやってるの?」


「……そう思ったか? だとしたら相当頭イカレてる」


「その返しは正直予想できなかった。演技なのかよ」


「そうだなぁ。まあ、俺も案外イカレてる気がするし五割くらい演技だ」


「なる程、分からん」


「まぁ、自分を偽るつもりはねーから。うん、つまりオオマジメ」


「どっちなんだよ……」


 まあいいや、我籐大悟について考えるのは一回止めよう。訳分からなくなる。


「そういや、賀田っつったっけか? お前、なんか困ってねぇ?」


「へ? あぁ、特技の」


「そうだぜ? 俺はそういうなんか困ったことになってる奴が何となく分かるんだ」


「何となくかよ」


「そーだ。根拠は無い!」


「そんなん、誰でも多少の悩みはあるだろ……」


「ま、多少はな?」


「………にしてもすごいな、それ。俺なんてそんな使えそうな特技は持ってないよ」


 ……俺にはあっても得はしないような体質だけしかないよ。


「と言うか、賀田。どっかであったことあるっけか?」


「憶えてないなぁ。あってたら君みたいなのって忘れなさそうだし、多分逢ったことは………?」


 ──────山道。無邪気な少年。笑いかける少年が、真底悪意のない態度で言った。


「待って今思い出した────おにーさんたち、困ったことになるよ───とか言ったか………??」


 変なところ思い出したな……。なんなんだ今のは。


「そうそう、なんかそう言うことを言った気がする。なんだ、憶えてんじゃねぇかよ」


「………マジかよ」


 我籐くんは肯定した。その事実にむしろ俺は驚いた。


「ま、三年も前だけど記憶力には──自信がありますから?」


 あれと同一人物だとすれば若干ぶれてないかね。あの無邪気さはどこ行った。今の君、若干崩し気味の制服と、目つき悪く感じる三白眼が相まってちょっと本当に悪そうな奴なんだけど。


 あ、でも我籐くん遅刻したって言ってたし、制服がちょっと着崩れてるのは仕方ないのか?


 それと記憶力ねぇ……。俺は自信がないわ。ここ三年以前を思い出そうとすれば頭痛に襲われるし……というか今も痛い。


「俺は憶えてなかったわ、と言うか今どこの山だったし………」


「その様子、やっぱりどーやら特大の困ったことに襲われ中なのか? な!?」


「と言うかこのクラスお前に負けず劣らずキャラの強そうな奴がチラホラ居るよな。俺みたいなモブからすりゃ羨ましい限りだよ」


「……話逸らしたな」


「そりゃ、正直そんな今困ってないからなぁ」


「じゃあ、何なんだ? その困ってる人特有のオーラは」


「俺が知るか」




「キャラが強いって言うと、あの女か? 芳堂(ほうどう)朔良(さくら)


「私がどうかしたかしら?」


「いや、賀田がキャラ強い奴いるよなって………コイツがな!?」


「おい!?」


 我籐は自分で誰がキャラ強いかって言うのを明言しておきながら、本人登場で真っ先にあげたという事実を俺に擦り付けやがった。


「あら? キャラが強い、というのはどういうことなのかしら?」


 芳堂朔良は邪魔だったのか長い黒髪を手の甲でかき上げて、近くにあった椅子を丁寧な所作で持ってきて座る。


「……」


 そう言うとこだよ、と言いそうになった。


「どういうことなのかしら?」


 後に彼女がぼっちお嬢様と呼ばれることを、俺達はまだ知らない。

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